今回レビューする製品は、14インチにして 約986gの軽量ノートPC「ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition」です。X1 Carbonもついに1kg未満となったことも大きな特徴ですが、Core Ultra 7 285Vにメモリは32GB、ストレージは Read 13,000MB/s超えのPCIe Gen 5 SSDと、充実したスペックです。
また、2.8K 解像度の有機ELパネルを搭載し、文字などの表示もドットが目につかずに明瞭。ThinkPadとしては浅いストロークのキーボードもタイピングしやすいもの。
レビューする製品はこちら
当記事は、Lenovoさんからお借りした製品に基づいています。記事に記載のスペックと価格は、2025年3月1日現在のものです。
ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition、公式ストア
スペック
開封して最初に感じたことは、やはり軽量であること。現在、私がWindows ノートとしてメイン利用の14インチの「ThinkPad E14 Gen 5」との比較ではもちろんのこと、時おり サブとして使用の12.5インチ「ThinkPad X280」よりも軽量です。
また、軽さの影響もあり、13.3インチなみのサイズと感じたのですが、縦横のサイズは 以下の記事にて実機レビューの「ThinkPad X1 Carbon Gen 12」と同じです。
ThinkPad X1 Carbon Gen 12 レビュー、実機の使用感。Core Ultra、明るい液晶を搭載、随所に感じる質感の高さ
ThinkPad E14 Gen 5 実機レビュー、Core i7-1360P / 2.2K 解像度モデルは快速・快適、タイピング感も上質
▼レビュー機の製品番号は「21NS0000JP」、そのスペックは以下です。
CPU | Core Ultra 7 258V |
GPU | インテル Arc グラフィックス 140V |
メモリ | 32 GB LPDDR5X-8533MT/s、オンボード |
ストレージ | 1TB SSD M.2 2280 PCIe-NVMe Gen5 |
ディスプレイ | 14インチ、解像度 2880 x 1800、有機EL、IPS、HDR500 100%DCI-P3、400 nit |
WiFi | Wi-Fi 6E 対応 |
Bluetooth | 5.3 |
ポート類 | USB4 (Thunderbolt 4 対応) x 2、USB-A 3.2 Gen 1 x 2、HDMI、マイクロホン/ヘッドホン・コンボ・ジャック |
バッテリー、電源 | 3 セル リチウムイオン、65W スリム GaN AC アダプター |
サイズ | 約 312.8 x 214.75 x 14.37mm、約986g |
OS | Windows 11 Home |
その他 | 2スピーカー、バックライト付きキーボード、指紋認証・顔認証に対応 |
なお、「Aura Edition」の位置づけですが、Core Ultra シリーズ2を搭載のLenovoの製品について、「Lenovo Aura Edition」と呼称しているとのこと。PC起動時に、以下の写真のとおり、「Lenovo Aura Edition」と大きく表示されます。
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を掲載します。
▼Windows 11 「設定」の「デバイスの仕様」と「Windowsの仕様」。CPUはCore Ultra 7 258V、メモリは32GB、OSはWindows 11 Home。
▼解像度 2880 x 1800の拡大/縮小は200%。老眼の私にも(遠近両用コンタクト越しに)程よい大きさです。
▼ディスプレイは、120Hzのリフレッシュレートに対応しています。
HWiNFOの使い方、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフト。投稿数 約4万件のフォーラムも充実
▲▼上の記事にて紹介のフリーソフト「HWiNFO」から抽出のシステム情報です。クリックにて拡大できます。
▼上の画像から、CPUの情報を拡大。Core Ultra 7 258Vは P-Core 4 / E-Core 4の合計 8コア 8スレッド、L3 キャッシュは12MB、TDP 17W。
▼メモリはLPDDR5X-8533MT/s、オンボードの32GB。
▼統合型のGPUは、Intel Arc 140V。
▼NPUの情報です。
▼SSDはSKHynixの型番「HFS001TFM9X179N」。検索してみると海外情報のみヒットしましたが、2280サイズのM.2 PCIe 5.0 SSDです。後述のベンチマークに記載していますが、CrystalDiskMarkの「Read 13,622MB/s、Write 10,340MB/s」と凄まじい速度です。
▼液晶の型番は「ATNA40YK20-0」。Samsungの製品であり、Webで検索すると交換用の液晶がヒットします。
外観
液晶とキーボードは後述していますので、サイド、天板、底板の外観について記載します。外観としては、以下の記事にて実機レビューの前モデルの「ThinkPad X1 Carbon Gen 12」とほぼ変わらず。縦横のサイズも同じです。
ThinkPad X1 Carbon Gen 12 レビュー、実機の使用感。Core Ultra、明るい液晶を搭載、随所に感じる質感の高さ
▼左サイドのポート類は左から、USB-A 3.2 Gen 1、Thunderbolt 4 x 2ポート。なお、レビュー機は未搭載ですが、Nano SIM スロットのオプションもあります。また、後述していますが、Thuderbolt 4の基本的な機能を確認済です。
▼右サイドのポート類は左から、電源ボタン、マイクロホン/ヘッドホン・コンボ・ジャック、HDMI、セキュリティキーホール。
▼サイドにある電源ボタンはフラット(出っ張りがない)ために、多少の押下しにくさがあります。私としては、電源ボタンがキーボード面にあるノートPCが好みです。
▼私の好みの角度より。電源オン時に電源ボタンは白のLEDが点灯します。
▼やや明るめの映像となりましたが、ヒンジ面はThinkPadの一般的な形状です。
▼ThinkPadのブラック筐体のマイナスポイントは、キーボード面も含めて 油脂の付着が目立ちやすいこと。撮影前に簡単に拭き取りましたが、それでも写真下の中央あたりに油脂が付着している状態です。
▼他の上位のThinkPadも同様ですが、Web カメラのある個所はアルミ調になっています。
▼少し埃が付いていましたが、相変わらず「ThinkPad X1」のロゴのデザインはよいものです。
▼底面もThinkPadの一般的な形状です。上の左右の通風孔下にファンがあります。後述していますが、記事編集やWeb サイトのブラウジングなどの普段使いでは、ほぼ無音です。
▼軽量な本体にあわせて、コンパクトな65W スリム GaN AC アダプターが付属しています。
▼右はLenovoの一般的なAC アダプター。プラグ側のコードが太いようですが、特に横幅がコンパクトになっています。
液晶
2025年3月1日現在のLenovo 公式ストアで販売のモデルは、全て以下の同じ液晶を搭載しています。全般的なところでは、輝度 400nitであるために明るく、表示品質も良好。ただし、私個人として感じることですが、他の有機ELパネル、あるいは一般的な液晶と比較すると、原色系の色合いがやや暗いようにも感じます。
- 有機EL、解像度 2880 x 1800、マルチタッチ非対応、 HDR500, 100%DCI-P3、輝度 400 nit
約1週間の使用期間でのコメントは以下です。
- これまでレビューした 有機ELディスプレイでは、原色系の色合いにギラツキを感じる製品があるなか、本製品は落ち着いた色合いです。ただし、わるく言えば、オレンジなどの原色系が、やや暗いように感じます。
- 高い色域(写真などの色の再現性の高い)の100%DCI-P3ですが、こちらも僅かに暗いようにも感じますが、一般的には良好です。私が現在、より明るい 4K モニターをサブとして同時使用しているために感じる事項かも。
- 私がWindows ノートPCでメイン利用の「ThinkPad E14 Gen 5(レビュー記事はこちら)」は 解像度は 2240 x 1400 / 輝度 300nit。これとの比較では、劇的な相違ではありませんが、文字が一段とクリア(拡大しても、ドットが目立たず)のように感じます。
- 色合いとしては 、寒色系ではなく 暖色系。この意味では日本人好みの色合いとも言えます。
- なお、光沢パネルですが、電源オフにした際の画面はハーフグレアのような、多少の艶を感じるものです。
▼写真を圧縮しているために、ややボヤっと見えていますが、ThinkPadの壁紙のレッドと濃いブルーがよく映えます。
▼ロックスクリーンでの表示事例。ディスプレイのベゼルの実測は、左右が5mm、上の細い部分は6~7mm。上下左右ともにベゼル幅は狭いです。
▼当サイトのトップ画面の表示です。撮影の関係で(有機ELディスプレイで白を背景とした場合)ピンクがかったように見えていますが、実際の発色は綺麗です。なお、前述のとおり、実際の色合いとしては 暖色寄りです。
キーボード
Windows ノートとしてはメイン利用の「ThinkPad E14 Gen 5」や、その他の軽量をアピールしないThinkPadよりも、 キーストロークはやや浅いように感じます。その恩恵もあり、私にとっては よりリズミカルに高速タイピングできています。
- キーストロークが浅いながらも、しっかりとした打鍵感あり。
- 私はThinkPad / Lenovoのキーボードに慣れていることもありますが、使い始め当初から 快適に高速タイピングできています。
- 最下段の右側に(キーボードのなかに)指紋認証があるために、右Alt キーあたりが他のキーよりも小さいのですが、タイピング時の違和感はありません。
- 私がこの1~2年ほどで実機レビューした Lenovoの製品では、以下のThinkBookやIdeaPadなどのタイピング感が、ThinkPadよりもよいと思っていたのですが、本製品のタイピングは甲乙つけがたいほどに快適です。
- 私のThinkPadのキーボードの好みとしては、2018年あたりまでの深いストロークのものでしたが、本製品のように浅めのものも よいですね。
Lenovo ThinkBook 14 Gen 6 実機レビュー、8万円台にしてアルミ製筐体で質感高め、メモリ 16GB、指紋認証搭載の14インチノート
Lenovo IdeaPad Pro 5 レビュー、実機の使用感。2.8K 有機ELは派手さを抑え好印象、Core Ultra 7 155Hにより サクサクと動作
▼右側のAlt キー周辺のキーが、他のキーの横幅より狭いものの、使用頻度の低いキーですので影響はありません。
ベンチマークスコア
実機にて計測のベンチマークスコアを掲載します。CPUにCore Ultra 7 258Vを搭載するPCは、以下の記事においても実機レビューしています。本製品も同様に、シングルコアのスコアは高いもの。また、私としては、PCIe 5.0を搭載するPCは初めてのレビューですが、読み書き速度はさすがに強烈です。
Lenovo Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9 実機レビュー。Core Ulra 7 258V、2.8K 解像度、金属製筐体の高品質な15.3インチノートPC
なお、体感レスポンスを具体的に記載していませんが、記載するまでもなく、オフィスソフトや動画視聴・Web サイトのブラウジングなどの普段使いでは キビキビと動作します。
Geekbench 5
Geekbench 5のスコアは「シングルコア 1974、マルチコア 9583」。
PC 実機で計測、Geekbench CPU ベンチマークスコアの一覧、サクサクと動作するスコアの指標
▲上の記事にて、これまでに実機レビューしたPCのGeekbench 5のスコアを一覧化しています。このなか、シングルコアのスコアにおいては、Core i7-1400に近い水準です。また、AMD Ryzen 7 7840HSや Apple M2 Proよりもわずかに高いスコアです。
Geekbench 6
Geekbench 6のスコアは「シングルコア 2664、マルチコア 10731」。Geekbench 5と6では、スコア判定のベースとなるPCのスペックと評価項目が異なり、Geekbench 6のスコアは5よりも高くなります。
Geekbench AI
実績が集まっていないために ノーコメントですが、「Geekbench AI」のスコアです。
▲▼下のスコアは、以下の記事にて実機レビューの Core Ultra 7 155H、RTX 1000 Adaを搭載する「ThinkPad P1 Gen 7」。
ThinkPad P1 Gen 7 実機レビュー、Core Ultra 7 155H、RTX 1000 Adaを搭載、テンキーレスの実用的な16インチノート
CINEBENCH R23
CINEBENCH R23のスコアは「シングルコア 1765、マルチコア 9427」。
CINEBENCH R23、ミニPCやノートPC 35製品で計測のスコア一覧。キビキビ動作のスコアの指標
▲上の記事にて、これまでに実機レビューしたPCのCINEBENCH R23のスコアを一覧化しています。このなか、マルチコアのスコアにおいては、Core i9-13900HやCore Ultra 5 125Hに近い水準です。シングルコアでは上位となるのですが、マルチコアは控えめです。
3DMARK
3DMARK Time Spyのスコアは 3908。2つめの画像のスコアは、以下の記事にて実機レビューのAMD Ryzen 7 7840HSのスコアですが、ThinkPad X1 Carbon Gen 13のCore Ultra 7 258Vは、統合型のGPUとしては高いスコアです。
MINISFORUM UM780 XTX 実機レビュー、Ryzen 7 7840HS / DDR5 RAMの快適レスポンス、静音性にも優れた 作業効率アップ確実のミニPC
PCMARK 10
PCMark 10のスコアは 6531。「一般的なオフィス作業や簡単なメディアコンテンツ制作向け」の Productivityの指標はスコア 4500ですが、本製品では 8522となり 十分なスコアです。ただし、前述のAMD Ryzen 7 7840HSの合計スコア 7299、Productivityのスコア 10202と比較すると、やや控えめです。
ファイナルファンタジー XIV
ファイナルファンタジー XIVのスコアは「普通 4867」
▼「レポート出力」の一部抜粋ですが、フレームレートを見ると厳しいですね。なお、SSDのローディングタイムは約19秒と高くないのですが、他のPCの事例では 統合型GPUでこのあたりの場合、外付けグラボでは10秒ほどになります。
CrystalDiskMark
CrystalDiskMarkでの瞬間の最大のスコアですが、「Read 13,622MB/s、Write 10,340MB/s」と強烈です。ただし、Read / Write 4500MB/sあたりのSSDと比較しても、既に十分に高速であり、普段使いでは体感しにくいもの。なお、2つめの画像のSSD温度も最大で53℃と低く収まっています。
サウンド
私の感覚によるものですが、サウンドは10点満点中 6~7あたり。ビジネス向けのノートPCと比較するとよいものの、マルチメディアをアピールするPCではなく、オフィス作業やそれほど音質にこだわる必要のない動画の視聴ではでは十分だと思います。
- 音量がやや大きい。PCの正面でYouTubeを視聴していて、PC側の音量調節を最大、YouTube側を1割ほどにして ちょうどよい音量のイメージです。
- 上記の音量では、高音・低音ともにわるくはありません。
- 音を大きくすると、音割れが生じます。
指紋認証、顔認証
指紋認証と顔認証の双方に対応していますが、いづれの認証精度も高いです。この数年の他のThinkPadも同様ですが、ほぼ PIN コードなしでサインインできています。なお、登録においては、特に顔の登録が速いです。
Thunderbolt 4の機能確認
2つのThunderbolt 4 ポートにおいて、以下の機能を確認しました。ただし、こちらの記事で掲載の外付けGPU ボックスを接続したところ、接続できずにPCがフリーズ(マウスが使えず、WiFiも認識しなくなる)し、強制終了となる現象が生じました。設定を調整すると認識すると思いますが、お借りした端末であり、深追いはやめておきます。
- 付属のAC アダプターを使用しての充電。
- PD対応のモニターへの接続での、映像出力と充電・給電
- 40Gbps対応の外付けSSDケースに接続しての、SSD速度の確認
▼PD対応のモニターに接続し、4Kでの映像出力とPDでの充電・給電を確認しました(ケーブル1本での映像出力と充電・給電の確認)。
Beelink SER6 レビュー、実機の使用感。Ryzen 9 6900HXにより快適動作のミニPC、PCIe 4.0 SSDを2基搭載可能
▲▼上の記事にて実機レビューのミニPCから Crucial PCIe 4.0 SSD(型番 CT500P3PSSD8)を一時拝借。上は内蔵時の速度、下はThinkPad X1 Carbon Gen 13のThunderbolt 4経由(SSDケースは40Gbpsに対応)での外付け時です。Writeの速度が気になりますが、十分に実用的な範囲です。
CPU温度、ファン音量
ファン音量においては、記事の編集やYouTube 視聴、Web サイトのブラウジングなどの普段使いでは ほぼ無音となり、作業に集中することができます。また、負荷をかけた際にも、許容範囲のファン音量。
一方、ベンチマークで負荷をかけた際のCPU温度は90℃台に達し、サーマルスロットリングが発動していることが 気になるところ。
▼iPhone アプリ「デジベル X」にて簡易的に計測の、CINEBENCH R23にて負荷をかけた際のファン音量。平均 約41dBと静音ではありませんが、許容範囲のファン音量です。私の感覚的には、45dBを超えてくると やかましく感じます。
まとめ
あらためて特徴と使用感などを記載すると以下となります。やはり、特筆すべきは 1kgの軽量であること。軽量ノートPCの先駆けとも言うべき、ThinkPad X1 Carbonも ようやく1kg未満となりました。最初に手にした際には、その軽さから 13インチの「ThinkPad X1 Nano(実機レビュー記事はこちら」かと思ったほど。
- Gen 12と縦横は同サイズですが、約986gの軽さを実現。手にして即実感できる軽さです。
- Core Ultra 7 258VにPCIe 5.0 SSDとハイスペック。SSDのReadは13,000MB/s超えと強烈。
- 2.8K 解像度の有機ELパネルを搭載。同社の他の有機ELパネルのPCと比較すると、派手さを抑えた落ち着きのある色合いです。高解像度のため、文字を拡大してもドットは目立たず。
- 一般的なThinkPadと比較すると、キーボードのキーストロークは浅いように感じます。この浅さにより、リズミカルな高速タイピングが可能。
- 他のThinkPadと同様に、筐体・キーボード面の油脂の付着が目につきやすい。
- 普段使いにおけるCPUファンは ほぼ無音。一方、ベンチマークで負荷をかけると 冷却がやや追いついていないのか、サーマルスロットリングが発動します。
レビューした製品はこちら
コメント