今回レビューする製品は、CPUにAMD Zen 4 アーキテクチャのRyzen 9 8945HSを搭載するミニPC「MINISFORUM UM890 Pro」です。
このクラスでは メモリ 32GBとする製品が多いなか、64GBのメモリを搭載し、さらには USB4とOCulink ポートを装備し、双方ともに外付けグラボが安定動作することを確認済です。また、マグネットで取付の天板により、内部へもアクセスしやすく便利です。
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MINISFORUM UM890 Proのスペック
スペックについては以下の記事にも掲載していますが、あらためての再掲載です。
MINISFORUM UM890 Pro、Ryzen 9 8945HSを搭載のミニPCがリリース。ハイエンドな構成に、USB4 とOCulinkを装備し拡張性も豊富
CPU | AMD Ryzen 9 8945HS、Zen4 アーキテクチャ、8コア 16スレッド、最大 5.2GHz、Ryzen AIを搭載 |
GPU | AMD Radeon 780Mグラフィックス |
メモリ | DDR5 5600 32GB / 64GB、最大 96GB |
ストレージ | M.2 2280 PCIe 4.0 SSD 1TB、PCIe 4.0の空きポートあり |
WiFi | WiFi6E 対応 |
Bluetooth | 5.3 |
ポート類 | HDMI、USB4 x 2、DisplayPort、USB-A 3.2 x 4、有線LAN x 2、OCuCulink |
サイズ | 127 x 130 x 66.6mm |
OS | Windows 11 Pro |
その他 | マグネット式の天板 |
実機にて確認したことも含めて、スペックと機能の補足は以下です。
- レビューする製品は、メモリ 64GBを搭載しています。
- OCulink ポートは、付属のアダプターを M.2 空きスロットに取り付けることにより 機能します。
- M.2 空きスロットは、M.2 SSDの増設 / OCulink アダプターとの排他になります。OCulink アダプターを取り付けた場合、M.2 SSDを増設できません。
- メモリスロット、SSD スロットには、マグネット式の天板を外し、システムファンのブラケットを外すことにより アクセスできます。
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を掲載します。
▼Windows 11 「設定」の「デバイスの仕様」と「Windowsの仕様」。CPUは Zen 4 アーキテクチャのAMD Ryzen 9 8945HS、メモリはDDR5 64GB(32GB x 2)、OSはWindows 11 Pro。一時期、MINISOFORUMのミニPCは、Windows 11 Proの搭載からHomeがメインに変更となったのですが、「UM890 Pro」はハイエンドの製品のためか、Windows 11 Proを搭載しています。
HWiNFOの使い方、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフト。投稿数 約4万件のフォーラムも充実
▲▼上の記事にて紹介のフリーソフト「HWiNFO」から抽出のシステム情報。クリックで拡大できます。
▼上の画像から CPUの情報を拡大。AMD Ryzen 9 8945HSは、8コア16スレッド、TDP 45W、L3 キャッシュ 16MB
▼メモリは DDR5 64GB(32GB x 2)。後述していますが、大手ブランド Crucialのメモリです。
▼統合型のGPUは AMD Radeon 780M
▼メモリは Crucialの型番「CT32G56C46S5.M16D1」。32GB x 2ですが、Amazonでの64GB キットの価格は約26千円(2025年3月1日現在)。
▼1TBのPCIe 4.0 SSDは、KINGSTONの型番「OM3PGP41024P-A0」。Amazonで確認してみると、また、後の「内部の構成」に記載のとおり 実際に確認してみると、2230サイズのM.2 SSDです。MINISOFORUMのミニPCでは、2230サイズのM.2 SSDを、2280サイズのアダプターにて使用していることがあります。
なお、KINGSOTONの公表値は「R/W速度最大4,540/4,230MB/s」ですが、後述のベンチマークスコアのとおり、概ね公表値どおりの速度です。
▼Google Chromeのタブを20個ほど開いた状態でのメモリ使用量。Chromeで約8GBほど消費していますが、メモリ 64GBともなると余裕です。
Windows 11、ライセンスの種類
他社ブランドの事例ですが、課題となることもある Windows 11 ライセンスの種類を確認してみました。結果、課題となるボリュームライセンスではなく、OEM(DSP)ライセンスであり安心。
▼ライセンスの種類の確認は、コマンドプロンプトを開き、「slmgr/dli」を入力(コピペ)、エンターキーを押下します。
▼以下の画像のとおり、OEM(DSP)ライセンスです。
外観
外観と付属品について記載します。天板がマグネット式となり、簡単に内部にアクセスできることが特徴です。筐体の質感としては、当然ながらも Alder Lake N100を搭載するエントリー機のような樹脂製の質感ではなく、重厚感も高品質なもの。
なお、前述のとおり、メモリとSSDの換装、付属のOCulink ポートの取付(M.2 SSD 空きスロットを使用しますが、SSD増設の排他使用)の場合、ファンブラケットを取り外す必要があります。
▼同社のハイエンドの製品でもあるためか、外箱はブラックにゴールドの文字です。
▼製品を保護する緩衝材の厚みは十分です。
▼他のミニPCも同様ですが、傷つき防止のためにビニールで梱包されています。
▼底板に中央に技適マークがあります。
▼全体像ですが、つや消しのブラックに白のロゴと、落ち着きのある配色です。なお、油脂の付着はやや目立ちやすいもの。
▲▼これまでに実機レビューした同社のミニPCと異なり、前面にRyzenとRadeonのシールが貼りつけられています。
▼前面のポート類は左から、リセットホール、ヘッドホン・マイク コンボジャック、USB4、USB-A 3.2 x 2、電源ボタン。電源ボタンは、電源オン時にブルーのLEDが点灯します。
▼右サイドは大きな通風孔のみ。通風孔越しに見える中央のものは、SSD周りです。
▼左サイドも大きな通風孔のみ。通風孔越しに見える中央のものは、メモリ周りです。
▼背面のポート類は左から、USB-A 3.2 x 2、DisplayPort、USB4、OCulink(M.2 アダプターの取り付けにより機能します)、HDMI、2.5G 有線LAN x 2、電源ポート。なお、後述していますが、前面・背面ともに USB4の映像出力などの機能を確認済です。
▼底面は通風孔などがなく、フラットです。
▼付属品のうち、AC アダプターとHDMI ケーブルです。マウスはサイズ比較用ですが、120WのAC アダプターはコンパクトなもの。
▲▼他の製品と同様に VESA ブラケットが付属しています。中央のしおりは、同社のミニPCではお馴染みの、セットアップを記載したもの。海外製 PCのWindows 11は英語ベースであり、設定時に日本語を選択しても、キーボードは英語レイアウトのままです。このため、しおりの記載に従い(詳細手順は以下の記事に記載しています)、キーボードのレイアウトを英語から日本語に変更する必要があります。
Windows 11、英語キーボードから日本語キーボードに設定を変更する方法
内部の構成
続いて、内部の構成について記載します。天板は4箇所の強めのマグネットで固定されており、隙間にカードなどを引っかけて上に持ち上げると、簡単に天板を外すことができます。これは便利な機能です。
▼天板を外しました。左右2個づつのマグネットで固定されています。
MINISFORUM UM780 XTX 実機レビュー、Ryzen 7 7840HS / DDR5 RAMの快適レスポンス、静音性にも優れた 作業効率アップ確実のミニPC
▲▼上の写真は「MINIFORUM UM780 XTX」の実機ですが、天板はUM780 XTXと共通のようであり(筐体全体が共通とも思えます)。中央の四角のものは エッチングシートの透過用と思われます。なお、「UM890 Pro」はエッチング・RGB点灯に対応していません。
▲▼樹脂のブラケットを外すと内部にアクセスできます。ブラケットにファンのケーブルがあるため、勢いよく外さないよう、注意が必要です。
▼ブラケットを外しました。写真のようにオープンにする際には、ファンケーブルの端子をマザーボードから取り外す必要があります。
▼内部の構成は上から順に、2280サイズのアダプターを介した 2230サイズのM.2 PCIe 4.0 SSD、M.2 空きスロット(SSD、あるいは 付属のOCulink アダプター用)、Crucial メモリ 32GB x 2。
▼こちらは2280 サイズのアダプターを介した 2230 サイズ SSDですが、しっかりした作りです。私は先日、他のPC用に格安の樹脂製アダプターを購入したのですが、全くの別物です。
OCulink アダプターの取付
付属のOCulink アダプターの取付について記載します。2280 サイズのM.2 空きスロットを利用しますが、M.2 SSDの増設と排他使用になります。
▼こにらが付属のアダプター。同種のアダプターは国内外通販で安く販売されていますが、「UM890 Pro」の前面ポートの位置にマッチするうえでは付属品の使用になります。
▼M.2 空きスロットに差し込むのみであり、難なく取付終了。
ベンチマークスコア
AMD Ryzen 9 8945HSを搭載する本製品 実機で計測のベンチマークスコアを掲載します。事前に海外サイトなどで、AMD Ryzen 9 8945HSのベンチマークスコアを参照していましたが、想定よりもやや高いスコアとなっています。
参考までに、以下の記事にて実機レビューのCore Ultra 7 258Vと比較しています。
ThinkPad X1 Carbon Gen 13 実機レビュー、約986gの軽さを即実感。PCIe 5.0 SSDのReadは13,000MB/s超えと強烈
Geekbench 5
Geekbench 5のスコアは「シングルコア 2018、マルチコア 12682」。2つめの画像のCore Ultra 7 258Vよりも高いスコアです。
PC 実機で計測、Geekbench CPU ベンチマークスコアの一覧、サクサクと動作するスコアの指標
▲上の記事にて、これまでに実機レビューしたPCのGeekbench 5のスコアを一覧化しています。このなか、シングルコアのスコアにおいては、ダントツでトップのApple M4に続くスコアです。
▼上の記事より、シングルコアが上位のCPUのスクショです。シングルコアにおいては、デスクトップ向けのCore i7-14700F / Core i7-14700よりも 高いスコアです。
Geekbench 6
Geekbench 6のスコアは「シングルコア 2699、マルチコア 13769」。Geekbench 5と6では、スコア判定のベースとなるPCのスペックと評価項目が異なり、Geekbench 6のスコアは5よりも高くなります。
Geekbench AI
Geekbench AIの比較用データが集まっていないこともあり、結果のみの掲載です。
CINEBENCH R23
CINEBENCH R23のスコアは「シングルコア 1813、マルチコア 17304」。2つめの画像のCore Ultra 7 258Vとの比較では、マルチコアに大きな差があります。
CINEBENCH R23、ミニPCやノートPC 35製品で計測のスコア一覧。キビキビ動作のスコアの指標
▲上の記事にて、これまでに実機レビューしたPCのCINEBENCH R23のスコアを一覧化しています。このなか、マルチコアのスコアにおいては、Core i7-14700HX / GeForce RTX 4060を搭載するデスクトップに次いで高いスコアです。ちなみに、現在レビュー中のMINISFORUMのマザーボードに搭載のAMD Ryzen 9 7945HXのマルチコアは 3万超えと強烈です。
MINISFORUM BD795i SE、Ryzen 9 7945HXをビルトインのMini-ITX マザボで使用予定のパーツ類
3DMARK
3DMARK Time Spyのスコアは 3199。2つめのCore Ultra 7 258Vと比較すると 控えめなスコアです。ただし、これまで インテルの統合型GPUは AMD Ryzen(Radeon)に甘んじていたのですが、Core Ultra 7 258Vが健闘しているように思います。
PCMARK 10
PCMark 10のスコアは 6954。「一般的なオフィス作業や簡単なメディアコンテンツ制作向け」の Productivityの指標はスコア 4500ですが、本製品では 9273となり 十分なスコアです。Core Ultra 7 258Vのスコア画像の掲載は割愛しましたが、 トータルスコアは6531です。
ファイナルファンタジーXIV
ファイナルファンタジーXIVのFHDでのスコアは「普通 5152」。画像は割愛しましたが、Core Ultra 7 258Vより やや高いスコアです。
▼「レポート出力」より、一部を抜粋。平均フレームレートは35となり、スムーズにゲームをプレイするには 厳しいところ。
CrystalDiskMark、SSD 温度
CrystalDiskMarkによる SSDの読み書き速度は「Read 4575MB/s、Write 4674MB/s」と、このクラスのミニPCに搭載のPCIe 4.0 SSDとしては標準的、あるいは標準よりもやや速い部類です。
なお、上の画像で掲載の、外付けグラボ接続時の「ファイナルファンタジーXIVのローディングタイム」は 16.634sec、後述の外付けグラボ接続時には10.269secと、こちらもやや速い部類です。
▼メモリとSSDの冷却用ファンの恩恵もあり、CrystalDiskMark 計測時のSSD温度は55℃と低く、全く気にする必要はありません。
OCulink、USB4経由でのグラボの接続
OCulinnkとUSB4の双方にてグラボを接続してみましたので、ベンチマークスコアを記載します。なお、グラボは機器接続の検証用として使用している「NVIDIA GeForce GTX 1080」ですのでスコアは低いものの、USB4 / OCulinkともに、PCの電源オフからの電源オン・再起動においても安定動作しています。
▼USB4接続は、以下の記事にて掲載の、AliExpressで購入のボードとケースを使用しています。
TH3P4G3、安価なGPU ボックスの実機レビュー、外付けグラボの接続以外にノートPCの電源としても活用中
ミニPC 2製品にUSB4 外付けGPU ボックスを接続し安定動作。外付けグラボのシステム情報とベンチマークスコア
▼OCulinkのボードは以下の記事にて掲載の、Amazonのリンク先の安価な製品を使用しています。意外と一発で認識・使用しましたが、4~5千円ほど高い価格で立派な「MINISFORUM DEG1」が販売されていますので、ボードを購入する方には後者をおすすめします。
MINISFORUM UM780 XTX、OCulink経由で外付けGPUを接続してみた。接続した機器と接続手順、動作状況
今回のレビューには間に合いませんでしたが、私は「MINISFORUM DEG1」を購入済であり、後日あらためて 「Radeon RX 6600 XT」あるいは「GeForce RTX 3060 12GB」を接続したうえで、別の記事にて投稿します。

▲▼今回使用のボードとケーブルです。安価なボードですが、2230 サイズのM.2 アダプターも付属しており、他のPCに接続することもできます。なお、電源は「玄人志向 80PLUS Bronze 650W」を使用しています。
▼こちらは「MINISFORUM UM780 XTX」にて、「Radeon RX 6600 XT」を接続している様子です。
▼それぞれのスコア画像の掲載は割愛しましたが、内蔵のRadeon 780M、GeForce GTX 1080のUSB4 / OCulink 接続時の、ファイナルファンタジーXIVのスコア比較です。GTX 1080と言えども、当然ながらも Radeon 780よりも大幅スコアアップ、USB4とOCulinkとのスコア差も大きいです。
▼こちらはOCulink 経由でのレポート出力から一部を抜粋。
USB4の機能を確認
USB4 ポートでの外部モニターへの接続、外付けSSDケースにて接続時の読み書き速度を確認してみました。なお、省電力のPCにおいては、モニターがPDに対応している場合、ケーブル1本での映像出力とPCへの給電も可能ですが、本製品はTDP 45Wですので、試しておりません。なお、外付けGPU ボックスへの接続は、前述のとおり安定動作しています。
外部モニターへの接続
リフレッシュレートは60Hzですが、4K モニターへの映像出力を確認済です。
40Gbps対応のSSD ケースへの接続
USB4 ポート経由にて、Thunderbolt 3/4(40Gbps)に対応するSSD 外付けケースを接続し、読み書き速度を確認してみました。
▼上の画像は、PCに内蔵時の読み書き速度、2つめの画像はUSB4 経由で接続時です。Writeがやや低いものの、実用性は十分です。
▲▼最後の画像は、以下の「ThinkPad X1 Carbon Gen 13」のThunderbolt 4経由での接続時。「UM890 Pro」接続時もほぼ同様の速度が出ています。
▼以下は私が使用中の製品ではありませんが、USB4対応 / ファン付き おすすめのSSD ケースです。
M4 Mac miniに外付けSSD、現在使用中、買替候補のThunderbolt 4対応 SSD ケース
CPU 温度、ファン音量
CPU 温度とファン音量を確認しましたが、双方ともに良好です。普段使い時のファン音量は ほぼ無音。作業に集中することができます。
▼CINEBENCH R23にてベンチ計測中のCPU 温度は最大 75℃となり、よく冷えています。
▼同じくCINEBENCH R23にて、ベンチ計測中のファン音量です。iPhone アプリ「デジベル X」にて計測の簡易的なものですが、平均 約36dBと ほとんど気にならない音量です。ちなみに、45dBを超えるとやかましく感じます。
まとめ
AMD Zen 5 アーキテクチャのRyzen AI 9 HX370を搭載するミニPCも展開されていますが(MINSFORUM AI X1 Proの紹介記事はこちら)、Zen 4ではハイエンドのミニPCとなる Ryzen 9 8945HSを搭載する「MINISFORUM UM790 Pro」のレビュー記事でした。
あらためて、特徴と使用感のポイントを記載すると以下となり、キビキビ動作の高いスペック、静音性とUSB4 / OCulinkによる拡張性の高さを兼ね備えており、このクラスではおすすめのミニPCです。
- クラス最大となる 64GB(DDR5、Crucial製)のメモリを搭載
- Ryzen 9 8945HSのシングルコア ベンチマークスコアは、デスクトップ向けのCore i7-14700F / Core i7-14700より高いことも。
- 普段使いでは ほぼ無音の静音性。負荷をかけた際にもファン音量は許容範囲。
- CPU / SSDともに、負荷をかけた際の温度は低く留まっています。
- USB4、OCulinkともに外付けグラボが安定動作することを確認済。
- マグネット式の天板により内部にアクセスしやすい。ただし、メモリ / SSDの換装は、ファンブラケットを外す必要があります。
▼こちらはあわせて使用したい、OCulinkのドッキングステーション「MINISFORUM DEG1」。アルミ製の筐体で質感が高いことも 大きな特徴です。
MINISFORUM DEG1 実機レビュー、アルミ製の高品質なOCulink 拡張ドック。ミニPCにおいて、外付けグラボが安定動作
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