今回レビューする製品は、CPUにAMD Ryzen 7 8840HSを搭載する、14インチ Yoga スタイルの「Lenovo Yoga 7 2-in-1 Gen 9」です。
Zen 4 アーキテクチャのRyzen 7 8840HSとLPDDR5X メモリ、PCIe 4.0 SSDによるサクサク動作はもちろんのこと、有機ELパネルによる鮮やかな液晶、ThinkPadと同水準(あるいはそれ以上)の快適タイピングのキーボードと、かなりバランスのよい製品です。
レビューする製品はこちら
今回のレビューは、レノボさんからお借りした製品に基づいています。記事に表示のスペック等は、2024年7月26日現在のものです。
Lenovo Yoga 7 2-in-1 Gen 9のスペック
レノボさんからお借りした「Lenovo Yoga 7 2-in-1 Gen 9」の型番は「83DK0009JP」。エントリー構成の基本スペックは以下となり、2024年7月26日現在の価格は107,690円。「83DK0009JP」は下表のシリーズ中 ハイエンド寄りの製品です(7月26日現在の販売価格は 144,870円)。
▼エントリー構成の基本スペック。メモリが8GB オンボード、液晶の色域が狭いため、レビュー機がよいとの認識です。
- CPUは AMD Ryzen 5 8640HS
- メモリ 8GB オンボード、512GB SSD
- 14インチの液晶は、解像度 1920 x 1200、IPS、光沢あり、マルチタッチパネル
▼レビュー機の型番「83DK0009JP」のスペックはこちら。
CPU | AMD Ryzen 7 8840HS、8コア 16スレッド、最大 5.10GHz |
GPU | AMD Radeon 780M グラフィックス |
メモリ | 16 GB LPDDR5X-6400MHz (オンボード) |
ストレージ | M.2 2242サイズ、1TB PCIe Gen 4 SSD |
ディスプレイ | 14インチ IPS、解像度 1920 x 1200、アスペクト比 16 : 10、有機ELパネル、光沢あり、タッチパネル、HDR500、100% DCI-P3、輝度 400 nit |
WiFi | WiFi 6E対応 (11ax/ac/a/b/g/n準拠) |
Bluetooth | 5.2 |
ポート類 | USB4、USB-C 3.2 Gen 2(DP、PD対応)、USB-A 3.2 Gen 1、HDMI、microSD メディアカードリーダー |
バッテリー、電源 | 65W 電源アダプター |
サイズ | 約 317.72 x 222.13 x16.64mm(最薄部)、約1.49kg |
OS | Windows 11 Home |
その他 | バックライト付きキーボード、ステレオスピーカー 2W x 2、Lenovo デジタルペン付属 |
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を掲載します。
▼Windows 11「設定」から抽出の「デバイスの仕様」と「Windowsの仕様」。もちろん、製品情報の仕様通りの AMD Ryzen 7 8840HS / Radeon 780M Graphics、OSは Windows 11 Home
▼14インチディスプレイの拡大率は150%。やや大きいような感覚もありますが、125%では小さくなり、150%が妥当です。
以降のシステム情報は、以下のフリーソフト「HWiNFO」から抽出のものです。CPU温度の確認や、SSDの型番などを抽出することもできます。
HWiNFOの使い方、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフト。投稿数 約4万件のフォーラムも充実
フリーソフト「HWiNFO」利用による Windows PC バッテリー劣化度の表示事例
▼システム概要画面。クリックで拡大できます。
▼上の画像からCPU情報の拡大です。Zen 4 アーキテクチャのRyzen 7 8840HSは、8コア16スレッド、4nm プロセス、TDP 28W
▼メモリは LPDDR5 16GB オンボード
▼GPUはRadeon 780M
▼2242サイズのM.2 PCIe 4.0 1TB SSDは SKHynixの型番「HFS001TEJ4X112N」。当該製品の国内サイトの情報は抽出できませんでしたが、後述のベンチマークでは Read 5000MB/s超と、2242サイズとしては速いSSDです。
▼14インチ 有機EL タッチパネルの型番は「LEN140WUXGA」
外観
本製品においては、以下の記事にて実機レビューの製品と同様に、筐体の質感の高いこと、デザインのよさ、高音質なスピーカーも大きなメリットです。
Lenovo Yoga 770i 実機レビュー、上質なアルミ製ユニボディ、有機ELの鮮やか液晶、快適レスポンスの14型YogaスタイルPC
ThinkBook 13x Gen 4 実機レビュー、Core Ultra 5 125H、2.8K 液晶、アルミ製筐体に高音質サウンド、快適キーボードと、おすすめの13.5型ノート
▼右サイドは左から、電源ボタン、microSDメディアカードリーダー、USB-A 3.2 Gen 1
▲サイドの丸みを帯びたエッジも美しいです。
▼左サイドは左から、HDMI、USB4、USB-C 3.2 Gen 2、マイクロホン/ヘッドホン・コンボ・ジャック。電源はUSB4、USB-C 3.2 Gen 2の双方に対応していることを実機で確認済です。
▲サイドの厚みはありませんが、フルサイズのHDMIポートを備えていることが頼もしいです。
▼この角度から、デザインのよさ・質感の高さを感じ取れるかと思います。
▼ヒンジ側には広い面積の通風口があります。こちらから熱を排出するため、作業中に熱風が手などに直撃することはありません。
▼前面より。最近の他のLenovoの製品と同様に、中央のWeb カメラの部分のみ高さがあります。
▼ストームグレーの筐体ですが、天板のYOGAのロゴは主張せずに好印象。照明の当たり具合で明るく映っていますが、実機はもう少し落ち着きのあるグレーです。
▼背面は上側に広い面積の通風口があります。通風口の左側・シールにボカシを入れている箇所の上に、CPUファンが備わっています。
▼ヒンジ側のゴム足は縦長ですが、全般的に MacBookに似た佇まいのある底面のデザインです。
▲▼電源アダプターは65W。Lenovoの他製品と共通のアダプターですが、コードが嵩張るため、私は他のPCも含めて以下のGaN 電源アダプターを使用することが多いです。
液晶
解像度 1920 x 1200、アスペクト比 16 : 10の有機EL パネルを搭載しています。有機EL パネルのため、原色系の表示に多少のギラつきがあり、派手目な描写となりますが、明るく鮮やかな液晶です。また、色域も広いため、写真などを表示しても自然な色合い(ただし、派手目)です。
- 14インチ FHDですが、手元にある 14インチ 2.2K あるいは 3Kの液晶と比較すると、文字に多少の粗さを感じます。ただし、一般的には気になるほどではありません。
- 白を背景とした場合の色合いは、暖色系です。寒色系が好みの方は、多少 気になる色合いとも思います。
- また、寒色系の液晶での表示と並べた場合、写真の原色系の表示は 派手目な描写となります。
- タッチスクリーンは良好です。タッチの精度、スクロールなどの追従ともに、課題なく操作できます。
▼デフォルトの壁紙での撮影ですが、このように鮮やかな背景の場合、より鮮やかさが強調されるイメージです。
▲この角度で見ても色合いが変化することもなく、視野角は良好です。
▼明るく鮮やかな液晶、かつスピーカーの音質もよいため、このスタイルでの動画視聴にも適しています。
▼ログイン前の背景にて撮影。
▲ベゼル幅(ディスプレイの端から表示の画面まで)の実測は、左右が5mm、上の狭い部分は7mmと細いです。
▼最近のレノボの他のPCと同様に、Web カメラがある中央のみベゼルが太くなっています。
▼当サイトのトップページを表示。ピンクがかった映像になっていますが、有機ELパネルを撮影すると写真では このようになってしまいます。実機は普通の描写です。
▼他の液晶と同様に、この角度では色合いが変化しますが、回転時のサイドの作りの確認用としての撮影です。
キーボード
上の写真のとおり、Enter キーが一般的な日本語キーボードよりも小さいのですが、違和感なくタイピング可能です。全般的には、キー押し込み後の戻りがよく、所有するThinkPad E14 Gen 5よりも快適なようにも感じます。
- 感覚的なものですが、ThinkPad E14 Gen 5のキーボードの戻りはやや弱い一方、本製品の戻りはより確実。これが快適なタイピングに貢献しているように思います。
- キーストロークは、MacBookやLet’s noteのように浅くはなく、やや深めで適度な力を要します。これにより、確実な打鍵感もあり、個人的には好みのタイピング感です。
- リズミカルなタイピングでは、M1 MacBook AirなどのMacBookが優位ですが、本製品もリズミカルにタイピング可能です。ただし、押し込みに適度な力を要するため、長時間のタイピングでは多少の疲れを感じるようにも思います(私が使用中のメカニカルキーボードと比較すると、軽度のもの)。
▼本体・キーともにストームグレーであり、ブラックのThinkPadのように、パームレストやキーに付着した油脂が目立つこともありません。
▲▼Enter キーがやや小さいのですが、使い始め当初から違和感なく使用できています。
ベンチマークスコア
実機で計測の、Rzyen 7 8840HSを搭載する本製品のベンチマークスコアを掲載します。比較対象は、以下の記事にて実機レビューの、CPUにRyzen 9 7940HSを搭載するミニPC「GEEKOM AE7」です。
GEEKOM AE7 実機レビュー、Ryzen 9 7940HS / DDR5 RAM 32GBでキビキビ動作、想像以上に静音で作業も捗るミニPC
Geekbench 5
本製品をハイパフォーマンスに設定しての Geekbench 5のスコアは「シングルコア 1799、マルチコア 10001」。ノートPC vs ミニPCの冷却対応、各種監視ソフト導入の本製品 vs ピュアなWindows 11のミニPCの影響もあるかと思いますが、Ryzen 9 7940HSの「シングルコア 1986、マルチコア 12119」とはそれなりの差があります。
▼以下の記事にて、これまで実機レビューしたPCのGeekbench 5のスコアを一覧化しています。このなか、Rzyen 7 8840HSのシングルコアのスコアは、インテル CPUでは Core i7-1360Pを搭載する「ThinkPad E14 Gen 5(レビュー記事はこちら)」と同水準です。
PC 実機で計測、Geekbench CPU ベンチマークスコアの一覧、サクサクと動作するスコアの指標
Geekbench 6
Geekbench 6のスコアは「シングルコア 2405、マルチコア 10030」。Ryzen 9 7940HSの「シングルコア 2645、マルチコア 13296」ですが、特にマルチコアに大きな差があります。
なお、Geekbench 5と6では、評価項目とスコア判定のベースとなるPCのスペックが異なり、Geekbench 6は5よりも高いスコアとなります。
CINEBENCH R23
CINEBENCH R23のスコアは「シングルコア 1635、マルチコア 13012」。Geekbenchと同様に、2つめの画像の Ryzen 9 7940HSがやや高いスコアです。
▼以下の記事にて、これまで実機レビューしたPCのCINEBENCH R23のスコアを一覧化しています。このなか、Rzyen 7 8840HSのシングルコアのスコアは、インテル CPUでは Core i5-13500Hと同水準です。
CINEBENCH R23、ミニPC・ノートPC 30製品で計測のスコア一覧。キビキビ動作のスコアの指標
3DMARK
3DMARK Time Spyのスコアは 2906。Ryzen 9 7940HSの3340には一歩及ばず。
PCMARK 10
PCMARK 10の総合スコアは6863。一般的なオフィス作業や簡単なメディアコンテンツ制作向け」の Productivityの指標はスコア 4500ですが、本製品では 9633となり 十分なスコアです。
ドラクエベンチマーク
ドラクエベンチマークのスコアは「とても快適、7,365」。
CrystalDiskMark
CrystalDiskMarkで計測の、SKHynixの型番「HFS001TEJ4X112N」のPCIe 4.0 1TB SSDの読み書き速度は「Read 5021MB/s、Write 4669MB/s」。2242サイズのM.2 SSDは、それ程 速度が出ない製品が多いなか、このクラス(価格帯)のPCとしては、2280サイズのSSDを上回る速度です。
体感レスポンス
AMD Ryzen 7 8840HSを搭載する本製品の体感レスポンスは、ベンチマークスコアが同水準となるPCと同様に、キビキビと動作します。負荷の大きいゲームなどはさておき、在宅勤務などの普段使いにおいて、遅さを感じることは全くありません。
- このクラスの他のPCと同様に、Windows 11の起動と終了は快速。待たされ感は全くありません。
- データ量や関数の多い ExcelやAccessも含めた在宅勤務、Web サイトのブラウジング、動画視聴などの普段使いでは、上位機と比較しても遜色なく、キビキビと動作します。
- Lenovoのシステム監視系ソフトは複数インストールされていますが、快適性を損ねるほどのものではありません。
- 普段使いでの静音性も確保しており、快適レスポンスとあわせて、集中して作業を行うことができます。
サウンド
キーボード面の左右に、2W x 2のスピーカーが配置されています。Amazon music、YouTubeの動画・音楽を視聴する範囲でのコメントですが、音質はかなりよく、明るく鮮やかな液晶とあわせて、動画視聴にも適しています。
- 視聴して即 一般的なノートPCよりも高音質であることを確認できます。
- 中低音・高音ともによいのですが、特に低音の迫力が秀でています。
- 低音のこもりや、全般的に音割れが生じることもありません。
- 他のメジャーなPCに例えると、所有する M1 MacBook Airと同程度の音質と言えそうです。
USB4 / USB-Cからの映像出力とPD
以下の記事にてレビューの65W PDに対応した 27インチ 4K モニターを接続し、USB4 / USB-C 3.2 Gen 2ともに、モニターとのケーブル1本の接続で、PCへの給電とモニターへの映像出力に対応していることを確認済です。
▼USB4 / USB-C 3.2 Gen 2ともに、4K@60Hzの映像出力が可能です。
顔認証
指紋認証は未搭載ですが、顔認証に対応しています。顔の登録はそれほど速くはないのですが、顔認証の精度は高く、所有するThinkPad E14 Gen 5と同様に、即認識します。このため、指紋認証を未搭載でも、困ることはありません。
また、私は眼鏡をかけたうえで顔の登録を行っていますが、眼鏡を替えての認証も問題ありません。
CPU 温度、ファン音量
ベンチマーク CINEBENCH R23などにて負荷をかけた際、CPU 温度は瞬間的に90℃台となることがあり、キーボード上にそれなりの熱(温もりとは言えない熱)を帯びます。
ただし、サーマルスロットリングが生じている様子はなく、また、普段使いでは50℃台で推移していることから、私としては許容範囲です。
HWiNFOの使い方、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフト。投稿数 約4万件のフォーラムも充実
▲▼上の記事にて紹介のフリーソフト「HWiNFO」にて確認の、CINEBENCH R23にてベンチ計測後のCPU温度です。画像の赤文字のとおり、最大温度は95℃となることがありました。
ただし、一般的には、これほど負荷をかけることもなく、普段使いでは 50℃台で推移していることから、大きな課題とはなりません。
▼iPhone アプリ「デジベル X」にて計測のファン音量。CINEBENCH R23にて負荷をかけた際にも 約40dBと、他の一般的なPCと比較しても静音です。また、暑い夏のレビューですが、記事編集程度の作業では、ほとんど聞こえないほどのファン音量です。
まとめ
CPUにAMD Ryzen 7 8840HSを搭載する 14インチ Yoga スタイルの2-in-1「Lenovo Yoga 7 2-in-1 Gen 9」のレビューでした。
当サイトではこれまで、LenovoのPCとしては「ThinkPad」をメインにレビューしていましたが、先日レビューした「ThinkBook 13x Gen 4(レビュー記事はこちら)」、本製品と かなりの高品質であり、キーボードのタイピング感は、ThinkPadよりも良好との感覚もあります。
「Lenovo Yoga 7 2-in-1 Gen 9」は、液晶の解像度がFHDのみ、有機EL パネルの色合いが多少 派手めではあるものの、体感レスポンス・液晶品質・快適タイピングのキーボード・良質なサウンドと、バランスのよい おすすめできる製品です。
レビューした製品はこちら
今回のレビューは、レノボさんからお借りした製品に基づいています。記事に表示のスペック等は、2024年7月26日現在のものです。
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