今回レビューする製品は、CPUにCore Ultra 7 155H、GPUにNVIDIA RTX 1000 Ada 世代 Laptopを搭載する 16インチノート「ThinkPad P1 Gen 7」です。
15~16インチクラスのWindows PCの場合、テンキー付きのキーボードであることが多いのですが、本製品はテンキーレスであることも大きな特徴です。
ハイエンドなThinkPadの機敏な動作に加え、16インチの大きな液晶、テンキーレスキーボードの快適タイピングと相まって、今後数年間はメインPCとして使用できます。
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今回のレビューはLenovoさんからお借りした製品に基づいています。記載の仕様と価格は、2024年10月26日現在のものです。
ThinkPad P1 Gen 7のスペック
スペックについては、以下の記事においても掲載しています。
ThinkPad P1 Gen 7 スペックのまとめ。テンキーレスの16インチ、最小構成はCore Ultra 7 155H / RTX 1000 Adaを搭載
CPU | Core Ultra 7 155H |
GPU | NVIDIA RTX 1000 Ada 世代 Laptop |
メモリ | 16 GB LPDDR5x-7500MT/s、オンボード、最大 64GB |
ストレージ | 512 GB SSD M.2 2280 PCIe-NVMe Gen4 |
ディスプレイ | 16インチ、解像度 1920 x 1200、IPS、非光沢、100%sRGB、輝度 400 nit |
WiFi | WiFi 7対応 |
ポート類 | Thunderbolt 4 x 2、USB Type-C 3.2 Gen 2、USB-A 3.2 Gen 1、HDMI、SD カードリーダー |
バッテリー、電源 | 170W AC アダプター |
サイズ | 約 354.4 x 241.2 x 17.05mm、約1.82kg |
OS | Windows 11 Home |
その他 | 指紋センサー、バックライト付きキーボード |
レビュー機の型番は「21KVCTO1WW」。「ThinkPad P1 Gen 7」としてはエントリー構成です。以下はカスタマイズ可能な事例ですが、オンボードメモリは16GB。できれば、32GBとしたいところですが、プラス 55,000円とカスタマイズしづらい価格です(10月31日までは、プラス 48,400円)。
一方、2.5K 解像度の液晶への変更、グラボのGeForce RTX 4060 Laptopへの変更は、合計で2万円未満と高くはないため、こちらはおすすめのカスタマイズです。
▲▼ポート類の構成は以下です。USB-Aは1ポートのみですが、USB Type-Cは Thunderbolt 4 x 2を含めると、3ポート搭載しています。
- ① SDカードリーダー
- ② USB-A 3.2 Gen1 (Powered USB)
- ③ USB Type-C 3.2 Gen2
- ④ セキュリティスロット
- ⑤ 電源コネクタ
- ⑥ Thunderbolt 4 x 2
- ⑦ HDMI
- ⑧ マイクロホン/ヘッドホン・コンボ・ジャック
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を掲載します。
▼Windows 11「設定」の「デバイスの仕様」と「Windowsの仕様」。CPUは Core Ultra 7 155H、メモリ 16GB、OSは Windows 11 Home
▼電源ボタンを兼ねた指紋認証、顔認証に対応しています。眼鏡をかけた状態であったためか 顔認証の登録には多少の時間を要しましたが、指紋認証・顔認証ともに精度は高いです。
▼16インチ FHD 液晶の拡大率は125%。程よいサイズ感です。
HWiNFOの使い方、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフト。投稿数 約4万件のフォーラムも充実
▲▼上の記事にて紹介のフリーソフト「HWiNFO」から抽出のシステムの概要です。クリックで拡大できます。
▼上の概要のうち、左のCPUの情報を拡大。CPUのCore Ultra 7 155Hは、Pコア 6 / Eコア 8 / 省電力 Eコア 2の、合計 16コア 22スレッド、TDPは26W
▼メモリは LPDDR5X 16GBのオンボード。LenovoのPCはオンボードメモリが多いのですが、できれば空きスロットが欲しかったところです。
▼上から順にNPU、統合型GPU、NVIDIA RTX 1000 Ada 世代 Laptopの情報です。
▲液晶の型番は「MNG007JA1-7」。こちらのTaiwan Screen サイトの情報では、以下の仕様です(Lenovo 公式サイトと同じ)。FHDですので、2.5K 解像度以上の液晶と比較すると、文字の輪郭の粗さを多少感じますが、明るく 広い色域の液晶です。
- 製造元は、中国の「華星光電(CSOT)」
- 輝度 400 nits
- コントラスト 1000 : 1
- 100% sRGB
- IPS、非光沢
▼SSDの型番は SAMSUNGの「MZVL8256HDJD-00BLL」。SSD単体での国内販売は見当たらないのですが、2280サイズのPCIe 4.0 SSDです。ベンチマークスコアの段落に記載していますが、Readのスコアは高い一方、Writeはやや控えめです。
外観
後の段落で掲載の、液晶とキーボード以外の外観について記載します。2024年10月26日時点での、エントリークラスの価格は約37万円と高価な製品ですが、ThinkPadの外観は どの製品においても従来モデルから完成していることもあり、外観の質感は 一般的なThinkPadと大きく変わりません。
▼左サイドは左から、電源コネクタ、Thunderbolt 4 x 2ポート、HDMI、マイクロホン/ヘッドホン・コンボ・ジャック。グラボを内蔵していることもあり、電源はUSB-Cではなく、旧製品も含めて Lenovoでは同形状の電源コネクタです。先(右側)に向かって絞り込まれた形状は、他のThinkPadと同様です。
▼右サイドは左から、SDカードリーダー、USB Type-C 3.2 Gen 2、USB-A 3.2 Gen 1、セキュリティスロット。USB-A ポートは1個のみですが、1週間の使用中に不便さは感じませんでした。ただし、できれば、もう一つあると嬉しいのですが。
▲指紋認証兼用の電源ボタンは、キーボード右上に配置されています。以下の「ThinkPad E14 Gen 5」などと比較すると、電源ボタンにやや深さがあり、他のThinkPadに慣れていると多少の押しづらさがあります。
▼天板の全体像です。ピーチスキンではなく、通常の艶消しブラックです。油脂の付着が目につきやすいことは、他のThinkPadと同じです。
▼背面の全体像。グラボを内蔵していることもあり、左右にファンを装備しています。お借りした製品のため、底板を開いていませんが、ネジを緩めたうえで ツメを外して底板を開く仕様は、他のThinkPad / LenovoのPCと同じです。
▲スピーカーの詳細仕様を未確認、公式サイトにはステレオスピーカーとありますが、左右に2個づつ、4個搭載しているように見受けられます。
▼電源は170Wの大きなもの。また、分割式のコードは デスクトップPC並みの太さです。
液晶
搭載する液晶は、下の画像左のエントリー構成ですが、輝度 400 nit、100%sRGBの高品質なもの。16インチのFHDのため、文字の輪郭は多少の粗さも感じますが、明るく鮮やか、広い色域であり、写真などの色の再現性の高いもの。
デフォルトの色合いは暖色系であり、万人受けしそうな液晶です。なお、私としては、中央の2.5K 解像度の液晶をおすすめします。文字の輪郭もクリアな表示で、ワンランク明るい液晶、さらには 165Hzのリフレッシュレートに対応しています。
▼非光沢パネルですが、濃いブルーとレッドがよく映える鮮やかな表示の液晶です。
▼アスペクト比 16 : 10であり、15.6インチ 16 : 9の液晶と比較すると 横の表示領域は狭いですが、縦に長いことにより、Web サイトやExcel などの表示で重宝します。
▼ディスプレイ面のベゼル幅(端から液晶の表示領域まで)の実測は、左右が 5mm、上の狭い部分が 8mm、下も含めて狭いベゼル幅です。
▼ディスプレイを最大限近くに開いた様子。この角度においても、色相は極端に変化することなく、視野角は広いもの。
▼当サイトのトップページを表示。100%sRGBの広い色域の表示です。写真などの色の再現も適切で、一度 100%sRGBの液晶を経験すると、一般的な色域の液晶では物足りなくなります。
キーボード
キーボードのキーピッチ・キーストロークを実測していませんが、おそらくは14インチと同サイズのキーボードです。
ThinkPad X1 Carbon Gen 12 レビュー、実機の使用感。Core Ultra、明るい液晶を搭載、随所に感じる質感の高さ
ThinkPad E14 Gen 5 実機レビュー、Core i7-1360P / 2.2K 解像度モデルは快速・快適、タイピング感も上質
ThinkPad T14s Gen 4 AMD レビュー、実機の使用感。Ryzen 7 PRO 7840Uを搭載しキビキビと動作。E14 Gen 5とのベンチスコア・外観比較も
この1年では、上記の14インチ ThinkPadを実機レビューしていますが、これらとの比較も含めたキーボードのタイピング感は以下です。
- 具体的には 程よい文言が思いつきませんが、キーキャップは上記 3製品よりも上質に感じます。
- また、キーサイズ・キーピッチともにほぼ同じはずですが、本製品はパームレストが広いために、より安定して高速タイピングできるような感覚です。
- 2017年あたりまでのThinkPadよりも浅いキーストロークであり、従来のThinkPadらしい 心地よいタイピングは薄れていますが、それでも快適さは標準的なノートPC以上です。
- 15~16インチではテンキー付きのキーボードが多いなか、私にとって テンキーレスは大きなメリット。テンキー付きの場合、液晶とキーボードの中心線がズレるために、長時間のタイピングでは疲れてしまいます。
▼テンキーレスのためにキーボード左右のベゼルは太いですが、ディスプレイのベゼル幅が狭いために、古めかしさは感じません。
▼他のThinkPadと同様に、キーは中央に向けて窪みがあります。キーの油脂の付着が目につきやすいことは、他のThinkPadと同様です。
ベンチマークスコア
実機で計測のベンチマークスコアを掲載します。比較対象は、以下の記事にて実機レビューの、Core Ultra 5 125Uを搭載の「Lenovo ThinkPad X1 Carbon Gen 12」、AMD Ryzen 7 PRO 7840Uを搭載の「Lenovo ThinkPad T14s」です。
ThinkPad X1 Carbon Gen 12 レビュー、実機の使用感。Core Ultra、明るい液晶を搭載、随所に感じる質感の高さ
ThinkPad T14s Gen 4 AMD レビュー、実機の使用感。Ryzen 7 PRO 7840Uを搭載しキビキビと動作。E14 Gen 5とのベンチスコア・外観比較も
Geekbench 5
Geekbench 5のスコアは「シングルコア 1716、マルチコア 12101」。2つめは、前述のCore Ultra 5 125U、3つめは Ryzen 7 PRO 7840Uですが、普段使いでの体感レスポンスに直結するシングルコアのスコアは、Ryzen 7 PRO 7840Uにやや劣る水準です。
▼以下の記事に、これまで実機で計測のGeekbench 5のスコアを一覧化しています。このなか、シングルコアのスコアは、(上記以外の製品では)M1 MacBook Airと同水準です。なお、マルチコアは M1 MacBook Airに大きな差をつけ、高いスコアです。
インテル CPUとの比較では、Core i5-13500HとCore i7-1360Pとの中間あたりの、シングルコアのスコアです。全般的に、Core Ulra シリーズは、Core Ultra 7 155Hも含めて、第13世代のCore i シリーズと比較すると、シングルコアのスコアは低くなります。
PC 実機で計測、Geekbench CPU ベンチマークスコアの一覧、サクサクと動作するスコアの指標
Geekbench 6
Geekbench 6のスコアは「シングルコア 2248、マルチコア 11757」。シングルコアのスコアは、3つめの Ryzen 7 PRO 7840Uと概ね同水準です。
Geekbench AI
Geekbench AIのスコアです(2つめは、Core Ultra 5 125U)。実測データが集まっていないため、参考情報としての掲載です。
CINEBENCH R23
CINIBENCH R23のスコアは「シングルコア 1645、マルチコア 14980」。こちらも シングルコアのスコアは、3つめの Ryzen 7 PRO 7840Uと同水準、中央のCore Ultra 5 125Uとは、マルチコアで大きな開きがあります。
▼以下の記事に、これまで実機で計測のCINEBENCH R23のスコアを一覧化しています。このなか、Core Ultra 7 155Hのシングルコアは Apple M2 Proや Core i5-1340Pと同水準、マルチコアは Core i5-13500Hと同水準です。
CINEBENCH R23、ミニPC・ノートPC 30製品で計測のスコア一覧。キビキビ動作のスコアの指標
3DMARK
3DMARK Time Spyのスコアは8,098。2つめのスコアは Core i7-14700HX、GeForce RTX 4060 Laptopを搭載する16インチノート「Lenovo Legion 7i Gen 9」。このスコア差を見ると、プラス 5,500円の出費にて GeForce RTX 4060 Laptopにカスタマイズするのも よさそうです。
▲▼実機レビュー記事はこちら。
Lenovo Legion 7i Gen 9 実機レビュー、Core i7-14700HX、GeForce RTX 4060 、16型 3.2K 液晶のハイエンドノート。筐体デザインも秀逸
PCMARK 10
PCMARK 10のスコアは 6724、「一般的なオフィス作業や簡単なメディアコンテンツ制作向け」の Productivityの指標はスコア 4500ですが、本製品では 8721と十分なスコアです
ファイナルファンタジー XIV
解像度 FHDでのファイナルファンタジー XIVのスコアは「12625、とても快適」。2つめの Core i7-14700HX、GeForce RTX 4060 Laptopを搭載する16インチノート「Lenovo Legion 7i Gen 9」と比較すると、大きな開きがあります。
CrystalDiskMark
SAMSUNGのPCIe 4.0 M.2 SSD「MZVL8256HDJD-00BLL」の読み書きです。Readのスコアは高い一方、Writeは控えめなスコアです。ただし、WrtiteのスコアもPCIe SSDとしては一般的なスコア(PCIe 3.0相当のスコア)であり、体感には影響ありません。
体感レスポンス
私のパソコンの使用範囲は、記事・画像の編集、Web サイトのブラウジング、動画視聴、データ量・関数の多いExcelとAccessをメインとした在宅勤務です。この範囲での体感レスポンスは以下となります。
- 上記の範囲内では、ベンチマークスコアが上位のPCと遜色なく キビキビと動作し、遅さを感じることは全くありません。
- 強いて言えば、Core i7-14700Fを搭載するデスクトップPCと比較すると、僅かにキビキビ感に欠けるかもと、感じることが僅かにある程度です。
- エントリークラスのAlder Lake N100、ミドルレンジ寄りのAMD Ryzen 7 5800Hとの比較では、よりサクサクと動作するイメージです。
サウンド
サウンドは Dolby Accessに対応しており、以下の画像のように「Lenovo Vantage」にて、「音楽」「ゲーム」「ムービー」など、プリセットされたモードで音域を変更できます。実際に変更してみると、明確に音域が変化することを確認できます。
Amazon MusicとYouTubeを聴いた範囲ですが、ノートパソコンとしての音質は平均以上、10点満点で7ほどの評価です。音量を大きくすると音割れが生じますが、PCを使用しながら正面から、あるいはBGMとして聴くレベルでは、クリアな中高音、迫力のある低音と、程よい音質です。
CPU 温度、ファン音量
ベンチマークで負荷をかけた際のCPU 温度とファン音量を記載します。負荷をかけた際のCPU 温度はやや高く、ファン音量も多少大きいもの。ただし、普段使い時には、静音と言える部類であり、ファン音量が気になることはありません。また、CPU 温度が高い場合にも、キーボード面などが使用に影響のある程に熱を持つ現象はありません。
▼CINEBENCH R23のベンチ計測中のCPU 温度は 100℃超え。頻繁ではありませんが、サーマルスロットリングが発動しています。このために、Core Ultra 7 155Hとしては、やや低いスコアになっているように思います。
▼iPhone アプリ「デジベル X」にて計測の、CINEBENCH R23で負荷をかけた際のファン音量は 45.9dB。やや耳障りな音量ですが、計測完了後は即静かになります。記事編集や、Web サイトのブラウジングなどの普段使いにおいては、時おり ファン音量が大きくなるものの、静音の時間が長いです。
まとめ
CPUにCore Ultra 7 155H、GPUにNVIDIA RTX 1000 Ada 世代 Laptopを搭載する 16インチノート「ThinkPad P1 Gen 7」のレビュー記事でした。
グラボとAIを活かした評価は行っていないものの、エントリークラスにおいても高品質な液晶、キビキビ動作の基本スペック、テンキーレスの快適タイピングのキーボードと、ハイエンドなThinkPad らしい構成です。
レビュー機のエントリー構成のにおいても、公式ストアの価格は約37万円。この価格をどうみるかが、評価のポイントとなりますが、個人購入となると やや厳しい価格帯です。
レビューした製品はこちら
今回のレビューはLenovoさんからお借りした製品に基づいています。記載の仕様と価格は、2024年10月26日現在のものです。
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