今回レビューする製品は、CPUにAlder Lake-N N100を搭載し、サイズ 87.8 x 87.8 x 47mmの超小型化、Mac miniに似たデザインのミニPC「T-Bao T8 Plus」です。サイドの3面にポート類が配置され、小さなボディサイズにもかかわらず、HDMIを3個、USBを3個、有線LANを2個と拡張性も確保していることも特徴です。
Alder Lake-N N100を搭載する他製品と同様に、インテル 第8世代 モバイル向けのCore i5、あるいは第10世代 モバイル向けのCore i3と同様にサクサクと動作し、かつ静音性に優れています。
レビュー製品はこちら
T-Bao T8 Plus、8GB / 256GBモデル、Banggood
T-Bao T8 Plusのスペック
今回レビューした製品は、メモリ 8GB / SSD 256GBモデルですが、メモリ 16GB / SSD 512GB モデルも販売されています。オンボードメモリとなり交換・換装できないため、購入を検討する場合には、メモリ 16GB / SSD 512GBがよりよい選択肢です。
CPU | Alder Lake N100、4コア4スレッド |
GPU | Intel UHD Graphics |
メモリ | 8GB LPDDR5 4800MHz、オンボード |
ストレージ | 256GB M.2 SATA SSD、PCIe SSDへの換装可能(ただし、分解にやや難あり) |
WiFi | 11 a/b/g/n/ac |
Bluetooth | 4.2 |
ポート類 | HDMI x 3、USB-A 3.0 x 3、有線LAN x 2 |
サイズ | 87 x 87 x 40mm、203.7g |
OS | Windows 11 Pro |
▼Banggoodの製品紹介の仕様には、高さ47mm / 40mmの2つの記載がありますが、サイドのシルバーの部分が40mm、底板の盛り上がった部分を含めると47mmとなります。
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を掲載します。
▼Windows 11の「デバイスの仕様」と「Windowsの仕様」。製品紹介の仕様どおりに、Alder Lake-N N100、メモリ 8GB、OSはWindows 11 Proです。当初、「ライセンス認証クリアしています」と記載していましたが、万一に備えて 一旦削除させていただきました。
▲▼上の記事で実機レビューのT-Baoの他のミニPCも同じですが、SSDのパーティションが区切られています。本製品では、256GBの領域をWindows 11 Proをインストールの119GBとそれ以外の構成です。
HWiNFO、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフトの概要
▲▼上の記事で紹介のフリーソフト「HWiNFO」から抽出のシステム情報です。クリックで拡大できます。
▼上の画像左のCPUの情報を拡大。Alder Lake-N N100は、4コア4スレッド、TDP 6Wでの動作です。
▼オンボード LPDDR5のメモリはデュアルチャネルとありますが、N100の仕様上 シングルチャネルでの動作です。インテル ホームページにN100の「最大メモリーチャネル数=1」と記載されています。
▼2242サイズのM.2 SSDのブランドはShiJiとあります。日本では馴染みのないブランドですが、中国のPCでは幾つか搭載事例があります。
外観
付属品、外観について記載します。N100 / LPDDR 5 メモリを搭載し、本製品と同様にコンパクトなミニPCとしては、以下の記事で掲載の製品をレビューしています。デザインは異なりますが、サイズ・ポート類の配置から、マザーボードなどが同じデザイン違いの製品と思われます。
グレイの以下の製品に対して、本製品はアルミ調のシルバーとボディ色が異なります。本製品は遠目にはアルミ製ボディにも見えます。なお、以下の製品と同様に、ポート類はサイドの3面に配置されていることも特徴となります。
▲▼T-BaoのミニPCは、上の製品に続き 2製品目のレビューとなりますが、ブランド名のないシンプルな外箱は共通です。別の意味では、OEM製品 そのままの外箱です。なお、国内外通販で他ブランドから同一の製品が販売されています。
▼厚めのクッション材で保護されています。
▼付属品は左から、HDMIケーブル、VESA ブラケット、BanggoodさんのサービスのEU プラグ to 日本プラグへの変換アダプター、VESA ブラケット取付用のネジ、EUプラグのACアダプター。
▼コンパクトなACアダプターです。簡易的なマニュアルは、日本語表記もあります。
▲▼前面は電源ボタンのみ。以下の写真のように、電源オン時には電源ボタン中央のLEDが白く点灯します。HDMIケーブルは付属していた物ではありませんが、本体が極小で軽いため、ケーブルの太さや取り回しによっては、本体が多少浮いてしまいます。
▼背面は左から、12VのDC In、有線LAN x 2個、イヤホンジャック、ケンジントンロック。有線LANポートのサイズからも、製品のコンパクトさがわかります。
▲下の通風孔から(奥にヒートシンクが見えます)、内部の熱が排出されます。省電力のPCのため、ファン自体もそれほど回転せず、排出される熱風も少なめです。
▼前面から見た左サイドは、HDMI x 3個。HDMI ポートが3個あるミニPCは珍しいです。なお、繰り返しの記載ですが、本体がコンパクトで軽いため、太くて取り回しの行いにくい HDMI ポートを使用した場合、本体が若干浮いてしまいます。これは本製品のみならず、同サイズのミニPCに概ね共通する事項です。
▼右サイドは USB 3.0 x 3個。配置は、一般的なミニPCよりも余裕があります。
▼艶消しブラックの背面は、サイド・天板と同様に樹脂製です。多くの通風孔から背面の通風孔へと熱を逃がすしくみです。
▼あらためての全体像です。明るいシルバー塗装であり、油脂や指紋の付着が目立ちません。
▼表面はザラツキのある塗装ですが、サイドより天板が一層 ザラツキ感の強いもの。
▼ラウンドした端も含めて、Alder Lake-Nを搭載するミニPCとしては よいデザインです。ただし、樹脂製 かつ軽いこともあり重厚感はありません。
▼iPhone 12 Pro Maxの上に置いてみました。iPhone 12 Pro Maxの横幅 78.1mmに対して、本製品は87.8mmですので、一回り大きいです。
一般的なミニPCとのサイズ比較
前述・以下の一般的なサイズのミニPC「T-Bao MN100」とのサイズの比較です。MN100のサイズ 124.5 x 112 x 43.8mmに対して、T8 Plusは 87.8 x 87.8 x 47mm。横幅は36.7mmも小さなサイズです。
T-BAO MN100 実機レビュー、Alder Lake-N N100、LPDDR5 RAM搭載のミニPC
コンパクトなサイズにして、N100 / LPDDR5 メモリの基本スペックは同じ。機能的な相違としては、MN100は、M.2 SSDの換装を行いやすいこと、2.5インチ SSD / HDDを増設可能なことの相違があります。
▼遠目の質感では、シルバー vs グレイの色の相違により、本製品がより高い質感に見えます。
▼ボディ色・ラウンドした形状がMac miniに(Mac Studio)近いデザインのため、Mac miniの上に置いてみました。色合いがやや異なり、また、樹脂製 vs アルミ製のため、手にした質感は異なりますが、Mac miniを意識したデザインです。
内部の構成、SSDの換装
メモリはオンボードのために換装できませんが、より大容量のSATA SSD / PCIe SSDへの換装は可能です。このため、PCIe SSDに換装し、動作することを確認しました。なお、PCIe SSDは仮に接続したのみであり、Windowsの導入は行なっていませんが、また、写真は掲載していませんが、BIOSにて認識していることを確認済です。
▼内部へのアクセスは、まず 底板の4本のプラスネジを外します。
▼ネジの取り外し後、隙間にカードなどを差し込み、ブラックの部分を外しますが、ツメがそれなりに硬いです。まず、底板の隙間から開き、下の写真の有線LANポートの上側にカードなどを入れると外しやすいです。
▼続いて、四隅の穴の奥にプラスネジがありますので、これらを外します。
▼天板裏に、COMS電池とWiFi アンテナがテープで取り付けられており、マザーボードを完全に外すことはできません(テープを剥がすと外れます)。マザーボードの下側に 2242サイズのM.2 SATA SSD、その下にWiFi カードが重ねて取り付けられています。
▼低価格な製品ですが、後述のヒートシンク・ファンも含めて、想像以上にしっかりとした作りです。
▲▼PCIe(NVMe)SSDへの換装完了。Windows 未導入のSSDのため、Windowsでの認識は未確認ですが、BIOSでの認識を確認済です。OS クローンを行う場合、以下の記事で掲載のフリーのクローンソフトが便利です。
Macrium Reflect Free Trials、無料トライアル版でのWindows OSクローンの手順
▼表面のシールは異なりますが、私が取り付けた PCIe SSDは以下の製品です。
▼ヒートシンクとCPUファンは汎用的なパーツですが、しっかりとした物が備わっています。
ベンチマークスコア
実機で計測の Geekbench 5 / 6、CINEBENCH R23、SSDの読み書き、メモリ帯域幅のベンチマークスコアを掲載します。
他の記事でも掲載していますが、Alder Lake N95 / N100のスコアは、2018年に発売のハイエンド寄りのノートPCに搭載の、インテル 第8世代 モバイル向けのCore i5 / i7相当のスコア・体感レスポンスとなります。エントリークラス向けCPUの前世代とも言える「Jasper Lake (Celeron) N5100クラス」が 第5世代 モバイル向けのCore i5相当ですので、3世代分 ジャンプアップしたことになります。
Geekbench 5
Geekbench 5のスコアは「シングルコア 971、マルチコア 2753」。2つめのスコアは以下の記事で実機レビューの Core i7-8565UのミニPCのもの。シングルコアはやや及ばず(体感レスポンスは同水準)ですが、マルチコアは同水準です。
実機レビュー、Core i7-8565U搭載のミニPCベアボーン「NVISEN (EGLOBAL) Y-MU01」。PCIe SSD取付によりさらに快速に
▼なお、以下の記事に、これまで実機レビューしたPCのGeekbench 5のスコアを一覧化しています。N100は、インテル 第11世代 Core i3-10110Uよりも高いスコアです。
PC 実機で計測、Geekbench CPU ベンチマークスコアの一覧、サクサクと動作するスコアの指標
CINEBENCH R23
CINEBENCH R23のスコアは「シングルコア 911、マルチコア 2786」。下の画像のランキングは、モバイル向け上位、デスクトップ向けのCPUも掲載されており、ランキングが低いことはやむを得ず。
CrystalDiskMark
2242サイズのM.2 SATA SSDを搭載しています。Readは535MB/s、Writeは507MB/sと、SATAとしては標準的なスコアです。
なお、海外通販サイトで販売の、他社ブランドの同型製品のユーザーコメントを参照したところ、Writeが半分ほどのスコアとなっている製品もありました。以下のスコアが標準であり、他社ブランドの同型製品は個体差もあるようです。
メモリ帯域幅
▲▼下の記事で掲載の「Sandra」で計測のメモリ帯域幅は26.6GB/秒。BIOSでの確認では、仕様どおりの4800MHzでの動作ですが、やや低めのスコアです(N100の仕様上、シングルチャネルでの動作)。
Windowsのメモリベンチマークなら「Sandra Lite」、無料版でも帯域幅をズバリ表示。インストールと計測方法
体感レスポンス
「低価格なPCだからレスポンスもそれなり」との先入観で操作しがちですが、いつもながらに(今回で、N100 / N95は6製品目のレビュー)、Alder Lake-N N100 / N95の実力には驚きます。
ベンチマークスコアと同様に、体感レスポンスは Core i5-8565U / Core i3-10110Uと同水準ですが、N100 / N95ほ静音性にも優れれいるため、より作業に集中できます。
- 当記事は本製品を使用して編集していますが、WordPressでの編集、画像編集、Web サイトのブラウジング、一般的な画質のYouTubeの視聴などでは、上位のCore i5 / i7と比較しても遜色なく動作します。
- ただし、ゲーム・動画編集向きのCPUではなく、在宅勤務でのオフィスソフト、一般的な動画視聴、Web サイトのブラウジングなどの普段使い向きです。これらの用途ではストレスなく快適です。
- ストレージはPCIe SSDではなく SATAですが、N100 / N95では PCIe SSDの速度はそれほど出ず、SATA SSDでも十分です。
CPUファン、ファン音量
省電力のCPUであり、負荷をかけた際のCPU温度もそれほど上昇せず、ファン音量も大きくありません。N100 / N95を搭載する多くの他のPCと同様に、負荷をかけた際にも ほぼ無音と言えそうです。
HWiNFO、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフトの概要
▲▼上の記事で紹介のフリーソフト「HWiNFO」で計測のCPU温度。上は通常時、下はベンチマークソフトで負荷をかけた際の温度ですが、最大でも71℃と低い温度です。また、ボディの温もりも感じず、通風孔から熱風が激しく排出される現象もありません。
▼ベンチマークソフトで負荷をかけた際のファン音量は 32dB台と小さなもの。iPhone アプリ「デジベル X」での計測ですが、iPhoneをお持ちの方は周囲の騒音と比較してみてください。
まとめ
Alder Lake-N N100 / N95を搭載するミニPCは、同じようなデザインとなる製品が多いなか、87.8 x 87.8 x 47mmの超小型サイズに、デザインもよく、内部のパーツの構成も想像以上にしっかりとしています。
小型であるために、2nd SSDの増設やメモリの換装はできませんが、N100搭載機では おすすめできる製品の一つです。本体のサイズにあわせて、電源がUSB Type-Cなら更によいのですが、ACアダプターも割とコンパクトです。
▼Banggoodの販売情報
T-Bao T8 Plus、16GB / 512GB、Banggood
▼以下の記事に記載のとおり、N200を搭載するモデルが販売されています。
T8 Plus、Alder Lake N200搭載 極小サイズのミニPC。N100モデルからスペックアップ
コメント
N100PCのメモリをデュアルチャンネル動作と紹介してますが、HWiNFOのバグでN100の仕様上シングルチャンネル動作です。Intelのホームページにも書かれています。
コメントありがとうございます。
確かに、インテル ホームページの「最大メモリーチャネル数=1」とありました。
どおりで、メモリ帯域幅が狭いわけですね。