今回レビューする製品は、CPUにAlder Lake-N N100を搭載する、73mm幅の超小型のミニPC「SkyBarium T-BOX Pro」です。
上の写真は6.67インチ 横幅 約75mmのスマホ「POCO F6 Pro」に載せていますが、ほぼ同じ横幅にして、LPDDR5 メモリ 12GB(オンボード)、2242サイズのM.2 SSDを搭載し、フル機能・Alt モード対応のUSB-Cを装備しています。
超小型ですが、N100のベンチスコアと体感レスポンスは、当然ながらも他の同スペックのミニPCと同水準です。また、PD対応のモニターにケーブル1本で接続し、PCへの給電・モニターへの映像出力ともに安定動作することを確認済です。
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スペック
製品のスペックは以下の記事においても掲載していますが、あらためての掲載です。他社からも超小型のAlder Lakeを搭載するミニPCが販売されていますが、一段とコンパクトな筐体に、冒頭に記載のとおり、Alt モードのUSB-Cを装備していることが大きな特徴です。また、USB-C ハブが付属しており、ハブ経由での給電・HDMIからの映像出力にも対応しています。
Alder Lake N100搭載、7.3cm角の超小型ミニPCのスペック。小さくとも フル機能のUSB-Cを装備
CPU | Alder Lake N100、4コア4スレッド |
GPU | Intel UHD Graphics |
メモリ | 12GB LPDDR5 4800MHz、オンボード |
ストレージ | 256GB あるいは 512GB M.2 SSD、2242サイズのSSD スロットは PCIe SATA 双方に対応 |
WiFi | 11 a/b/g/n/ac |
Bluetooth | 4.2 |
ポート類 | 電源兼用 フル機能 USB-C、USB-A 3.2 x 2、USB-A 2.0 x 2、HDMI、有線LAN x 2 |
サイズ | 73 x 73 x 43mm、約200g |
OS | Windows 11 Pro |
▼Alder Lake-Nを搭載する、他社の超小型ミニPCのレビューはこちら。以下のミニPCの横幅 87.8mmに対して、本製品は73mmと一回りコンパクト。
T-Bao T8 Plus 実機レビュー、N100搭載 87.8mm角の超小型ミニPC。デザインよく静音性にも優れた おすすめ製品
Blackview MP80 実機レビュー、N95 / LPDDR5 16GB RAMを搭載し快適に動作。デザインも秀逸な超小型ミニPC
▼Alder Lake N100を搭載するミニPCにて、電源をUSB-Cとする製品は多くないのですが、本製品はUSB-Cであるうえに、Alt モードにも対応しています。これにより、モニターがPDに対応している場合、ケーブル1本での接続により、PCへの給電とモニターへの映像出力を行うことができます。
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を掲載します。
▼Windows 11「設定」の「デバイスの仕様」と「Windowsの仕様」。もちろん、製品情報どおりに、CPUはAlder Lake N100、メモリ 12GB、OSは Windows 11 Pro
▼256GBのSSDは、約120GBのOS領域とそれ以外で パーティションが区切られています。
上のリンク先の「T8 Plus」も同様にパーティションが区切られていますが、モデル名がT始まりの製品は同一製造元、パーティションの設定は同じように思います(手元にある、他の2製品も同じです)。
HWiNFOの使い方、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフト。投稿数 約4万件のフォーラムも充実
▲▼上の記事にて紹介のフリーソフト「HWiNFO」から抽出の、システムの概要です。クリックで拡大できます。
▼CPUは Alder Lake-N N100、4コア 4スレッド、TDP 6W
▼オンボードのメモリは、LPDDR5のデュアルチャンネルの表記です。ただし、Alder Lake-N N100はデュアルチャンネルに対応していないため、実際にはシングルチャンネルです。
▼GPUは統合型のIntel UHD Graphics、白枠に SATA SSDの情報もあります。SSDのブランドは「ShiJi」ですが、中国ブランドのPCへの搭載事例が複数あります。
外観
繰り返しの掲載ですが、Alder Lake-Nを搭載する超小型 ミニPCの他製品は、以下の記事においてレビューしています。
これらのミニPCと比較すると、一回り小さな 7.3 x 7.3 x 4.3cmの筐体です。重心が下にあるためか、軽量ながらも各種ケーブルを接続しても本体が浮く現象は抑制されています。
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▼コンパクトな筐体から小さな外箱は想像できましたが、外箱のサイズは 111 x 111 x 96mmと、想像以上に小さなもの。
▼おそらく汎用の外箱かと思います。内部の緩衝材の厚みは十分すぎるほど。
▼付属品は左上から、HDMI ケーブル、USB-C ハブ、AC アダプターとUSB-C ケーブル、VESA マウント、説明書。説明書は日本語表記なしですが、基本操作の説明ですので参照不要でしょう。
▼付属のAC アダプターはコンパクトなもの。10インチクラスのタブレットに付属のアダプターと 同程度のサイズです。
▼▼35WのAC アダプターのプラグは折り畳み式です。なお、私は付属のAC アダプターは使用せず(新品の状態を保つため)、以下の記事にてレビューの65W GaN アダプターを使用しています。同種の65Wのアダプターを合計3個 試してみましたが、いづれも動作しています。
▼他のミニPCと同様に、本体は傷つき防止よビニールで梱包されています。
▼前面は 電源ボタン、USA-A 3.2 x 2個。上のシルバーの部分は、冷却用の放熱板ではなく、デザイン上のものです。
▼背面は、フル機能のUSB-C(電源兼用)、イヤホンジャック、リセットホール、有線LAN x 2、HDMI。最近のPCでは使用することもないとは思いますが、まさかのフリーズのための CMOS リセットがあるのは よいことです。
▲使用時には、上の2つの通風孔から内部の熱が排出されます。ベンチマークで負荷をかけた場合、熱くはないものの、熱風が排出されます。
なお、拡大写真では ポート類の切り抜き端の面取りに粗さもありますが、拡大しない限り目につくことはありません。
▼左サイドに ポート類他はありません。
▼右サイドは USB-A 2.0 x 2個
▼四隅のプラスネジを外すと 底板を簡単に開くことができます。SSD スロットにはこちらからアクセスします。
▼左は付属のUSB-C ハブです。ポート類は左から、USB-A、USB-C、HDMI。こちらのUSB-C ポートにAC アダプターを接続し、給電することもできます。
▼あらためての全体像です。上の白い部分、シルバーの部分も含めて樹脂の筐体です。
超小型のミニPCは、MINISFORUMの上位の製品も含めて 5製品目ですが、本製品は価格の割には質感も高く、後述の内部の作りもしっかりしています。
Beelink Mini S12 実機レビュー、Alder Lake N95 / PCIe SSD搭載でキビキビ動作、Jasper Lake 搭載PCよりも高コスパ
▲▼参考までに、上の記事にて実機レビューの Alder Lake-N N95を搭載する「Beelink Mini S12」を並べてみました。S12もミニPCとしてはコンパクトな部類ですが、同じミニPC カテゴリーとは言えないほどに サイズが異なります。
▲▼コンパクトなスピーカーとの組み合わせ事例として、以下のダイソーの安価なスピーカーを並べてみました。このスピーカーとポータブルモニターとの組み合わせもありです。
330円のダイソー ミニスピーカー、スピーカーレスの27インチモニターで使用してみた。超安価なスピーカーとしては音質は想像以上
内部の構成、SSDの換装
本製品の標準装備のSSDは、2242サイズ SATA M.2 SSDですが、PCIe SSDにも対応しています。そこで、底板を開き、PCIe SSDに換装してみました。
OSをインストールしていない PCIe SSDのため、Windows 11の起動までは確認していませんが、BIOSにて認識していることを確認しました。
▼底板の四隅にあるプラスネジを外すと、底板を簡単に開くことができ、SSD スロットにアクセスできます。
▼樹脂製の底板を外しました。
▼放熱のためにも、おそらくはアルミ製のプレートで覆われています。
▲このクラスのミニPCとしては、外枠は想像以上にしっかりしたもので 厚みがあります。また、程よい剛性も確保しており、内側のフレームは金属製とも思えます。
▼2242サイズのSATA M.2 SSDを外しました。
▲写真の中央(基盤上)に「PCIE / SATA SSD」と明記されており、双方に対応していることがわかります。
▼PCIe SSDを取り付けました。
▲▼取り付けたPCIe SSDは、TranscendのGen3×4 M Key TS512GMTE400S、512GBです。OSを未インストールのため、BIOSでの確認のみですが、以下の写真のとおり認識しています。
ベンチマーク
実機で計測のベンチマークスコアを掲載します。比較対象は、以下の記事にて実機レビューの インテル 第8世代 Core i5-8350Uを搭載する「Let’s note CF-SV7」です。
これまでのN100を搭載するミニPCのレビューから、N100は Core i5-8350Uと同水準のベンチスコア・体感レスポンスとなることを承知のうえで、あらためて比較しています。
Let’s note CF-SV7 実機レビュー、中古 1万円台でCore i5-8350U、Thunderbolt 3搭載でお買い得感あり
Geekbench 5
Geekbench 5のスコアは「シングルコア 989、マルチコア 2863」と、一般的なN100のスコアです。2つめの画像は、Core i5-8350Uを搭載する「Let’s note CF-SV7」のスコアですが、N100のスコアは、シングルコアは優位な一方、マルチコアは劣位です。
Core i5-8350Uは、2018年あたりに発売のハイエンド寄りのノートPCに多く搭載のCPUですが、N100はこの世代のベンチマークスコア・体感レスポンスと同水準となり、省電力CPUとしては かなり優秀です。これにより、また コスパの高さから 多くのミニPCで搭載され、人気となっています。
▼以下の記事にて、これまで実機レビューしたPCのGeekbench 5のスコアを一覧化しています。シングルコアが同程度となる、Core i5-8350U以外としては Core i3-10110Uがあります。
PC 実機で計測、Geekbench CPU ベンチマークスコアの一覧、サクサクと動作するスコアの指標
Geekbench 6
Geekbench 6のスコアは「シングルコア 1204、マルチコア 3108」。シングルコア、マルチコアともに、Core i5-8350Uよりも高いスコアです。
なお、Geekbench 5と6では、評価項目とスコア判定の基準となるPCのスペックが異なり、Geekbench 6のスコアは5よりも高くなります。
CINEBENCH R23
CINEBENCH R23のスコアは「シングルコア 908、マルチコア 2672」。シングルコアはCore i5-8350Uと同水準ですが、マルチコアはやや低いスコアです。
▼以下の記事にて、これまで実機レビューしたPCのCINEBENCH R23のスコアを一覧化しています。シングルコアが同程度となる、Core i5-8350U以外のCPUとしては Core i5-1030NG7があります。
CINEBENCH R23、ミニPC・ノートPC 30製品で計測のスコア一覧。キビキビ動作のスコアの指標
ドラクエベンチマーク
ドラクエベンチマーク、解像度 FHDでのスコアは「やや重い、2491」。軽めのゲーミングベンチのドラクエベンチマークですが、Alder Lake-Nは ゲーミング関連のベンチスコアは低くなります。
PCMARK 10
PCMark 10のスコアは 3172。「一般的なオフィス作業や簡単なメディアコンテンツ制作向け」の Productivityの指標はスコア 4500ですが、本製品では 5202となり、クリアしています。実際に、データ量や関数多めのExcelやAccessの作業では、極端にデータ量が多いケースを除き、遅さを感じることなく動作します。
CrystalDiskMark
2242サイズのSATA M.2 SSDの速度は「Read 540MB/s、Write 486MB/s」。SATA SSDとしては、一般的な速度です。PCIe SSDではありませんが、Alder Lake-Nの場合、その仕様からPCIe SSDはそれほど速度は出ず、また、Windowsの起動・終了などに遅さを感じません。このクラスのPCでは、SATA SSDで十分です。
体感レスポンス
久しぶりに、N100のミニPCを約1週間使用しましたが、キビキビと動作します。ゲーミング向けのPCではありませんが、Web サイトのブラウジング、動画視聴、ブログ記事の編集、写真の編集、在宅勤務でのExcelやAccessなどでは 上位機でなくとも十分です。
- 標準装備のSSDは、高速なPCIeではなくSATAですが、Windowsの起動や終了など、遅さを感じることはありません。
- 上記の用途において、AMD Ryzen 7 7840HSや Core i7-1360Pなどの上位機と比較した場合、システム更新のプログラムがバックグラウンドで動作している場合など、多少キビキビ感に欠けると感じる程度。
- ベンチマークが同水準となる インテル 第8世代のCore i5-8350Uなどと比較した場合、レスポンスは概ね同水準ですが、省電力のN100はファン音量が小さいために、作業により集中することができます。
USB-C PDの検証
USB-C ポートは、PD / DP、Alt モードに対応していますので、以下の65W PD対応のモニターにて、USB-C ケーブル 1本の接続でのPCへの給電・モニターへの映像出力を確認してみました。結果として、数時間の連続使用においても 安定して使用できています。なお、65W PD対応のモニターは、もう一台使用していますが、こちらへの接続も問題なく動作しています。
▼以下の27インチ 4K 解像度、65W PD対応の「PHILIPS 27E1N5900E」にて確認しました。
▼実際には 2.5Kにて使用していますが、4K@60Hzにて映像出力できています。
付属のUSB ハブでの給電
付属のUSB ハブを使用し、ハブのUSB-C ポートでの給電・ハブのHDMI ポートからの映像出力を確認してみました。結果、双方ともに使用できています。ただし、前述の27インチ 4K 解像度のモニターへの4K 出力はできず(本体のHDMI ポート経由では 4K出力が可能)、FHDどまりです。
CPU温度、ファン音量
省電力のAlder Lake-Nを搭載するミニPCは、他製品においても静音であることが特徴の一つとなり、本製品も同様です。負荷をかけた際にも、ファン音量は ほとんど気にならず、作業に集中することができます。
なお、CPU 温度においては、ベンチマーク計測時に 一回のみ サーマルスロットリングが発動したことがあり、高負荷時には やや高めとなることがあります。ただし、普段使いにおいては、CPU温度がそれほど上昇することもなく 許容範囲内です。
また、普段使い時には、筐体全体は温もり程度の熱を帯び、底板は天板やサイドより熱くなります。ただし、これは「内部の構成」で記載のとおり、底板側にはアルミ製の冷却板があり、これを通じて熱を分散しているとも言えます。
▼ベンチマークで負荷をかけた場合、CPUの最大温度が 90℃近くになることも。ただし、ゲーミング向けではない本製品において、これほど負荷をかけることは稀であり、普段使いでは50℃台であるために、気にするほどではありません。
▼iPhone アプリ「デジベル X」で計測の、CINEBENCH R23にて負荷をかけた際のCPUファンの音量です。40dB未満であり、ほとんど気になることのない音量です。ちなみに、45dBあたりでは、多少やかましくなります。
まとめ
Alder Lake N100 あるいはN95を搭載するミニPCは複数レビューしていますが、他製品と同様に普段使いではキビキビと動作します。N100を搭載する超小型のミニPCは他社からも販売されていますが、本製品は以下のメリットがあり、おすすめできる製品です。
- Alt モードのUSB-Cを装備し、モニターがPDに対応している場合、ケーブル1本での接続により、PCへの給電とモニターへの映像出力が可能。
- PCへの給電にも対応の、USB-C ハブが付属。
- 他社製品よりも一回りコンパクトな筐体。
- 冷却板や外枠の厚みなど、しっかりとした作り。
- 文中に他製品との比較を記載していませんが、M.2 SSD スロットへのアクセスも容易。
▼2024年8月2日現在、SSD 512GBモデルは 23,984円、256GBモデルは 22,320円での販売です。
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