One-Netbookからリリースされた、7インチのUMPC「A1」。RS-232ポートと、ディスプレイが時計回りに180°回転することを大きな特徴とし、他の多くのUMPCと同様に CPUにCore m3-8100Yを搭載しています。この「A1」をOne-Netbookさんよりお借りしましたので、外観と使用感などを記載します。
なお、お借りした製品はプロトタイプであり、CPUは製品版のCore m3-8100Yではなく Core i7-7Y75を搭載し、英語キーボードとなりますが(Amazonでは日本語キーボード版を販売)、外観やポート類は製品版と変わりません。
全般的には、7インチのディスプレイは明るく鮮やか、CPUは製品版より下位であるものの、普段使いではサクサクと動作します。キーボードのタイピングは7インチの小さなサイズであるために割り切りが必要ですが、これまで操作した他の3台の7インチ UMPCと比較すると良好。
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One-Netbook A1のスペック
スペックと特徴については以下の記事にて掲載していますが、A1のスペックは下表となります。
One-Netbook A1、7型UMPCのスペックと実機写真で見る特徴
CPU | Core m3-8100Y(評価機はCore i7-7Y75) |
メモリ | 8GB DDR |
ストレージ | 256GB / 512GB PCIe SSD |
ディスプレイ | 7インチ、IPS、タッチパネル、解像度 1920 x 1200 |
WiFi | 2.4G / 5G Dual WiFi |
Bluetooth | 4.2 |
ポート類 | USB 3.0 x 2、USB Type-C、Micro HDMI、RS-232 シリアルポート、有線LAN |
バッテリー容量 | 6000mAh / 3.8V |
サイズ(本体) | 173 x 136 × 19 mm、550kg |
その他 | バックライト付きキーボード、トラックポイント、指紋認証 |
基本スペックは、One-Netbook OneMix 2S / OneMix 1S+などの7インチ UMPCと同様に、Core m3-8100Y、PCIe SSDを搭載していますが、以下の特徴があります。
- エンジニアリング向けPCと謳う本製品は、「RS-232 シリアルポート」を搭載。
- RS-232は旧規格であるものの、産業用としては現在でも制御機器や計測機器では標準的なインターフェースとして使用されることも多く、バーコードスキャナーやカードリーダー、モデムや旧規格のプリンターなどの接続事例があるようです
- ディスプレイは、左から時計回りに180°回転することが可能。
実機から抽出のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報です。冒頭で記載のとおり、製品版のCPUはCore m3-8100Yですが、評価機のCPUはCore i7-7Y75です。
▼Windows 10の「デバイスの仕様」と「Windowsの仕様」。
▼フリーソフト「HWiNFO(HWiNFO、Win 10のデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフトの概要)」から抽出のシステム情報。小さくしていますので、クリックして拡大ください。
▼ハード情報の一部を抜粋。「HWiNFO」ではメーカーやSSDの製造元を確認できることが多いのですが、本機では確認できず。後述のベンチマークスコアのとおり、PCIe SSDのスコアは控えめですが、水色部分のとおり、PCIe 1xとなっているのが要因。
付属品、外観
One-NetbookのUMPCの外観上の特徴の一つが、その質感の高さ。One-Netbookに限らず、他社のUMPCも金属製で質感の高い製品が多いのですが、本製品においてもアルミ製のボディであり質感の高さに加え、細部の造りも丁寧。
付属品
プロトタイプであるためか、外箱の写真は掲載していませんが、評価機の付属品は、ストラップ、スタイラスペン(製品版では別売りのオプション扱い)、ACアダプターのケーブル。
▼USB Type-Cのケーブルは柔軟素材で取り回しが楽なもの。
▼ケーブル、ストラップ、スタイラスペンの先端部分を拡大。ACアダプターも含め、質感は高いです。
サイド、ポート類
▼右サイドはヘッドホンジャックのみ。
▲ディスプレイの水平 180°の回転機構とRS-232 シリアルポート / 有線LANなどのポートの確保のため、右側のヒンジ部分に特徴があります。通常の7インチ UMPCと比較すると、このヒンジから右の部分の長さの分ほど大きくなりますが、個人的には好きなスタイルです。
▼ヒンジ側を拡大。エッジの処理やディスプレイとキーボードの設置面など、工作精度が高いことがわかります。
▼左サイドは、電源のUSB Type-CとSDカードスロット。
▼ポート部分を拡大。左下にストラップホールがあり、付属のストラップを取付可能です。
各種ポート
▼ポート部分を斜め後方より。ドッキングステーションを標準装備しているような趣き。一般的なUMPCと異なるスタイルのため、新鮮さも感じます。
▼左から、RS-232 シリアルポート、Micro HDMI、USB 3.0 x 2、有線LAN。
▲スペース的にはやむを得ないのですが、Micro HDMIではなく、Mini HDMIだとさらによかったように思います。Micro HDMI to HDMI変換コネクタを利用した場合、先端部分に負荷がかかり、簡単に折れてしまいます。利用する場合には変換コネクタではなく、通常のケーブルがよいです。
▲こちらは100均で購入のMicro HDMI to HDMI変換コネクタが、折れてしまった事例。100均の製品に限らず、簡単に折れてしまいます。
▼写真の左側に3連のインジケーターがありますが、小さく淡い光であり、電源オン時などのやや確認しづらい。
▲▼ポート部分を拡大。Miro HDMIとUSBポートの間隔が狭いため、USBポートに接続する機器によっては同時使用できないケースがあります。
▼USB ポート 2つ、有線LAN、電源ケーブルを接続した様子。USBメモリの横にMicro HDMI ポートがありますが、Micro HDMIケーブルと右隣のUSBポートを使用する際には、横幅のあるUSBメモリを挿入すると干渉してしまうため注意が必要。
▲こちらの写真で塗装も上質であることを感じ取ることができると思います。
ディスプレイ
ディスプレイの使用感は後述しますので、ここでは外観をメインとしたコメントです。
▼グレアパネルのため、正面から見た場合の映り込みがあります。ディスプレイのベゼル幅は左右が約10mm、上は約7mm、下は約4mm。左右は通常よりやや狭い程度ですが、上下は狭いもの。
▼明るさ、発色、視野角ともに良好なディスプレイ。
▲▼ディスプレイを180°回転した様子。通常のYogaスタイルでこの状態にすると、キーボードが底面となってしまうのですが、キーボードが通常の上向きであることはメリットです(下の写真右は、ドンキ NANOTE)。
▼このように左側に時計回りで回転します(右側にはロック機能があり回転せず)。
▼どのような状況で使用しようか、との余計な心配もありますが、このようなスタイルでも利用できます。
▼グレアパネルに天井が映り込み、多少汚く見えていますが、この角度から見ても、IPSパネルの視野角と発色はかなり良好。
▼ディスプレイを回転すると、このようなスタイルにも。
▼ディスプレイを最大限開いた状況。
天板と底板
もちろん、天板・底板ともにアルミ製。写真では実機よりも明るくなっていますが、艶消しとは言わないまでも、艶をおとしたシックなブラック。塗装の品質も高いです。
▲写真右のパンチングの下にスピーカーがあります。
キーボード
キーボードの使用感は後段に記載していますので、ここでは外観の記載にとどめています。プロトタイプである評価機は英語キーボードですが、Amazonで販売の製品版は日本語キーボード。日本語キーボードの場合、主要キーのキーピッチは15mm、キーストロークは1.5mm、キーキャプは13mmとあります。英語キーボードのキーボード・キーキャプの実測も同じでした(キーストロークは未計測)。
▼キーボード全体。中央上に電源ボタン兼指紋認証があります。
▲下の中央がトラックポイント、その左右がクリックボタン。他のトラックポイント付きのUMPCも同様ですが、このトラックポイントの使いやすさは秀逸。動きは滑らかで、通勤電車などの狭いスペースで重宝します。
▼斜め上から。下の写真のブラックが実機に近いもの。
▲誤タイピングを招きやすい要素の一つとして、右上のDeleteとBack Spaceキーの配置が通常と逆なことがありあます。ここは、以下のChange Keyなどのフリーソフトにより、キーの割り当てを変更すると便利です。私はドンキ NANOTEで割り当てを変更しています。
▲▼キーの質感もかなり高く、キーボードのみでもそれなりの価格となるだろうと思います。
▼左側には特に変則的なキー配置や極端にサイズの異なるキーはありません。ただし、やはりキーボードのサイズの影響で、Aキーをタイプしたつもりが、Capsをタイプしていることもしばしばあります。
▼右側は最下段のキーが小さいのですが、これは他のUMPCと同様に、使用頻度の少ないものが小さくなっています。
▲UMPCで使い勝手をよくしているのが、トラックポイント。数台所有するThinkPadのトラックポイントよりも動きは滑らかなように感じます。
▼室内の電灯をオフにし、バックライトを点灯。
MiniBook、NANOTEとの比較
所有するUMPC、「CHUWI MiniBook (8インチ)」と「ドンキ NANOTE(7インチ)」を並べて撮影しました。ディスプレイとキーボードのサイズ比較などのご参考まで。
▼「CHUWI MiniBook」との比較。7インチ vs 8インチのディスプレイサイズの相違もありますが、それ以上にキーボードの主要キーのサイズが異なります。MiniBookでは10インチほどではありませんが、ある程度の高速タイピングも可能です。このため、私の認識では、UMPCでもタイピングを重視する場合には8インチ以上。
▲キーボード・全体の質感としては、A1がやや優位か(MiniBookの質感もよいですが、オーソドックスなUMPCの形状であり、デザインも含めた雰囲気ではA1が優位)。
▼ドンキ NANOTEとの比較。(価格差があるため、比較してはいけないのですが)写真では表現できていませんが、2万円のNANOTEとは全く別物の質感。NANOTEも価格の割にはわるくはないのですが、エッジなどの処理の丁寧さはかなり異なります。NANOTEのCPUはAtom Z8350と非力なため、体感レスポンスも大きな差があります。
▼引用したMiniBookとNANOTEの実機レビュー記事も多数投稿していますが、全体のレビュー記事はこちら。
ベンチマークスコア
繰り返しの記載ですが、製品版のCPUがCore m3-8100Yであるのに対して、お借りしたのはプロトタイプのCore i7-7Y75。Core m3-8100Yがやや上位となりますが、参考情報としてのベンチマークスコアです。
▼Geekbench 5のCPUベンチマークスコア。上はプロトタイプのA1、下はCore m3-8100Yを搭載するCHUWI MiniBook。製品版は Core m3-8100Yを搭載するため、MiniBookと同水準のスコアでしょう。
▼CrystalDsikMarkによるSSDベンチマークスコア。リードは約860、ライトは約765とスコアは控えめ。発熱を考慮すると、このあたりが妥当かもしれませんが、1000は超えて欲しかったところです。この控えめのスコアは「システム情報」に記載のとおり、PCIe SSDの接続がPCIe 1xであることによるもの。
▼ドラクエベンチマーク 標準画質のスコアは「4097 普通」。CINEBENCH R20ではスコアが伸びないため、その他のGPU系も含めてベンチマークは割愛しています。
体感レスポンス
製品版のCore m3-8100Y、評価機のCore i7-7Y75ともに、負荷の大きいゲームや動画編集などを除く普段使いではサクサクと動作します。具体的には以下のとおり。
- Web ブラウジングでは、第8世代以降のCore iシリーズと比較すると、僅かにキビキビ感に欠けるものの、十分に快適。エントリークラスのApollo Lake / Gemini Lakeと比較すると、サイトの画像表示やタブの切替などが速いことを感じ取れます。
- 今回は7インチの小さなディスプレイでもあり、オフィスソフトを試していませんが、このクラスではオフィスソフトは快適に動作します。大きなディスプレイに接続し、ミニPC的な使用・在宅勤務での使用も問題ありません。
- Windows 10の更新前後のシステムプログラムで負荷がかかっている場合など、エントリークラスのCPUよりも、レスポンスの悪化は抑制されます。
- PCIe SSDのスコアは控えめですが、それでもSATA SSDよりも高速なため、大容量アプリのインストールなどでの快適さを感じ取ることができます。
ディスプレイ、回転機構の使用感
8.4インチのOneMix 3シリーズのレビューコメントを参照すると、「明るさが不足」などの否定的なコメントも散見されますが、本製品の場合には十分に明るく鮮やかで綺麗なディスプレイです。7インチのディスプレイでは、GPD Pocket 初代、OneMix 2S、格安なドンキ NANOTEでさえ、明るく発色がよいことから、7インチではディスプレイの品質のバラつきが少ないとも思えます。
本製品のディスプレイの具体事項は以下です。
- IPSパネルの視野角は十分。上の外観の画像でも感じ取れるかと思います。
- 発色としては、寒色・暖色にも寄らず中間的なもの。
- ドンキ NANOTEと比較するのも無理がありますが、NANOTEがやや淡いのに対して、本製品はコントラストも十分。
- タッチパネルは7インチのため、ブラウザのブックマークなどの小さなテキストを誤タッチすることもありますが、スクロールなどの追随は良好。
- 所有するMiniBook、NANOTEと比較すると、グレアパネルへの映り込みはやや大きいような感覚もあります。
キーボードのタイピング感
7インチのUMPCとして、手元にある「ドンキ NANOTE」、一週間程度の使用経験のある「GPD Pocket 初代」、「OneMix 2S」も同様ですが、やはり7インチの小さなサイズでの快適タイピングには無理があります。
ただし、8インチのiPad Mini用のキーボード(例えば、ロジクール製)、8インチのCHUWI MiniBookのように高速タイピングは困難であるものの、上記3製品と比較すると、タイピングしやすいもの。
一般的な7インチのUMPCのキーンボードの使用感も含め、具体的には以下です。
- 本製品のキーボードのストロークは浅いものの、適度な押し込み感と戻り感があり、キー自体の打鍵感はよい。
- ところが、やはりキーピッチと、一部のキーのサイズの大きさ・配置に無理があり、当記事の編集など、大量の文字入力では誤タイプの頻度が高い。
- キーピッチとの関連で、7インチではタイピングが窮屈・キーの間隔が狭いため、高速タイピングができないことはやむを得ず、割り切りが必要。
- ただし、当初のOneMixと比較するとキーの配置やサイズに小さな改良を加えているのか(手元に初代 OneMix / OneMix 2Sがないために想像ですが)、キーの割り当て変更や、慣れにより、タイピングはある程度は快適になります。
- 短文でのメールやSNS関連では、キーボードが購入を控えるほどの大きな課題とはならないとの認識。OneMix 2Sやドンキ NANOTEでは、記事の編集では使用するのをためらうのですが、A1では慣れでカバーできそうな期待が持てます(8インチクラスと比較すると、効率がおちるとの前提ですが)。
▼UMPC、英語キーボードのキー割り当ての変更事例。日本語キーボードにおいても流用できます。
ファン音量、発熱
前述の7インチのUMPC「OneMix 2S (Core m3-8100Yを搭載)」も同様だったと記憶(現在は手元にありません)していますが、ファンの音量はやや大きなもの。具体的には以下です。
- 作業を行っていない(画面オン)場合には静か。
- 画像編集などの軽めの作業でもファンは激しく回転し、やや大きい音量に(使用を止めたくなるほどではありません)。
- ベンチマークで負荷をかけるとさらに激しく回転し、高めの音で多少耳障りになります。
- 上記はシステムのバックグラウンド処理などで負荷がかかっていた状況ではないのですが、朝の静かな通勤電車では周囲に気を遣ういそうな音量です。
また、画像編集程度の軽度の負荷の場合にも、キーボードの左上に熱を帯びることも気がかり。「ほんのり」と「熱い」と感じる中間程度の熱です。
▼ベンチマークで負荷をかけた際のCPU温度は最大 84℃。本製品では 普段、それほど負荷をかけることはないと思われ、許容範囲のCPU温度。ただし、前述のとおり、CPU温度の割にはキーボード左上に熱を帯びることが気がかり。
その他
その他、スピーカー、ディスプレイの回転機構などについて、まとめて記載します。
- スピーカーの音質は標準的。底板からの出力ですが、中程度の音量では(大音量では試さず)、こもりや音の割れもありません。
- 私はかつて、OneMix 2Sを購入したものの、短時間の使用でバッテリーの充電不良となり返品したのですが、評価機のA1においては、そのような現象はもちろんありません。
- ディスプレイの回転機構は、スムーズで片手での回転も可能ですが、本体も同時に動くこともあり、両手での回転が無難。
- また、ディスプレイに角度をつけた場合の回転時に、ディスプレイ下がヒンジ部に接触することがあり、注意が必要。
- Windows 10の指紋認証は他の製品でも精度が高いのですが、本製品もほぼ一発で認識します。
まとめ
RS-232ポートとディスプレイが時計回りに180°回転することを大きな特徴とする「One-Netbook A1」。実機の外観・使用感のポイントをあらためて記載すると以下となります。エンジニア向けを謳う製品ですが、動画視聴スタイルとした場合にも、キーボード面がテーブルなどに接しないなど、一般的なUMPCとしても実用的で、そのスタイルの新鮮さもあります。
- アルミ製のボディと精緻な造り、上質な塗装で、その質感の高さはかなりのもの。
- 評価機はプロトタイプであり、CPUは製品版のCore m3-8100Yより僅かに下位のCore i7-7Y75ですが、普段使いではサクサクと動作。ただし、PCIe SSDのベンチマークスコアは控えめ。
- 7インチのディスプレイは明るく鮮やかで申し分なし。ディスプレイの回転機構も滑らか。
- 小さなキーボードのため、快適な大量タイピング・高速タイピングには難ありですが、私が操作した他の7インチ UMPCよりもタイピングは良好。
- 負荷がかかるとCPUファンの音量は大きめで、キーボード面の左上に熱を帯びることが気がかり。