今回レビューする製品は、CPUにインテル 第12世代のCore i9-12900HKを搭載し、メモリ 32GB、PCIe 4.0 SSDを標準装備のミニPC「MINISFORUM UN1290」です。
一般的なミニPCよりも やや大きな筐体で、ヒートシンクなども含めて冷却対応に余裕があります。第12世代と旧世代のCore i9ですが、Core i9でもあり、第13世代のCore i5や、冷却対応の弱い第13世代のCore i9のミニPCよりも、ベンチマークスコアは高い傾向です。
普段使いでの体感レスポンスは、上位機と全く遜色なくキビキビと動作し、コスパ面では上位機を購入しなくとも、Core i9-12900HKのミニPCで十分です。
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MINISFORUM UN1290のスペック
CPUには 旧世代ながらも インテル 第12世代 モバイル向けのハイエンドとなる Core i9-12900HKを搭載していることが大きなポイント。また、標準モデルは、DDR4 メモリ 32GB / PCIe 4.0 SSD 1TBを搭載の、ハイエンドな構成です。
CPU | 第12世代 Core i9-12900HK、14コア 20スレッド、最大 5.0GHz |
GPU | Intel Iris Xe |
メモリ | DDR4-3200 32GB(16GB x 2) |
ストレージ | M.2 2280 PCIe 4.0 SSD 1TB、2.5インチ SATA SSD / HDDを増設可能 |
WiFi | WiFi6対応 |
Bluetooth | 5.2 |
ポート類 | USB-C DP/PD 対応、USB A 3.2 x Gen 2 x 2、USB-A 2.0 x 2、HDMI、DisplyPort、有線LAN |
サイズ | 129.6 x 127.8 x 54.3mm |
OS | Windows 11 Home |
▼装備するポート類は、USB4ではなく フル機能のUSB-Cが一つのみと、このクラスとしては控えめです。なお、映像出力は、HDMI、DisplayPort、USB-Cの3系統です。
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を掲載します。
▼Windows 11「設定」の「デバイスの仕様」と「Windowsの仕様」。もちろん、Amazon サイトの製品情報通りの、Core i9-12900HK、メモリ 32GB。Windowsは Proではなく Homeです。
以降のシステム情報は、以下の記事にて紹介のフリーソフト「HWiNFO」から抽出しています。メモリやSSDの型番(ノートPCの場合には液晶の型番も)、CPU温度などを確認できる優れたソフトです。
HWiNFOの使い方、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフト。投稿数 約4万件のフォーラムも充実
フリーソフト「HWiNFO」利用による Windows PC バッテリー劣化度の表示事例
▼システム情報のサマリー画面。クリックで拡大できます。
▼上の概要からCPUの情報を拡大。CPUのCore i9-12900HKは、Pコア 6コア/12スレッド、Eコア 8コア / 8スレッド、合計 14コア / 20スレッド、TDP 45W
▼DDR4のメモリは 16GB x 2のデュアルチャンネル
▼GPUは Intel Iris Xe Graphiics
▼メモリはShenzhen WODPOSIT Technologyの型番「WPBH32D408SWM-16G」。16GB x 2の構成です。「WODPOSIT Technology」は、日本国内では聞き慣れないブランドかと思いますが、MINISFORUMやGEEKOMなどのミニPCでの採用事例があります。
▼2280サイズ、PCIe 4.0 SSDは KINGSTONの型番「OM8PGP41024Q-A0」。国内通販では検索できませんでしたが、後述の読み書きは このクラスのミニPCとしては 一般的な速度です。
外観
続いて、開封、付属品、外観について記載します。ミニPCとしては やや大きめ(エントリークラスのミニPCとの比較です)の129.6 x 127.8 x 54.3mm、樹脂製の筐体です。樹脂製ながらも、エントリークラスのミニPCのような安っぽさはなく、肉厚の外枠、内部の冷却機構などにより重厚感があります。
開封、付属品
これまでにレビューした「MINISFORUM」のミニPCでは、カラーの外箱が多いのですが、本製品はシンプルな外箱です。
▼十分な厚みのある緩衝材で保護されています。
▼説明書類の一式。
AmazonなどのミニPCのレビューでは、日本語キーボードの印字とタイプした文字が異なるなどの、キーボードに関するコメントが散見されます。これに対し、同社のミニPCでは、Windows 11 デフォルトの英語キーボードから日本語キーボードへの切替手順を明記した書類が付属しています。
説明書は、日本語も含めた多言語表記となり、メモリ・M.2 SSDの換装方法、2.5インチ SSD / HDDの増設手順も掲載されています。
▼説明書類以外の付属品は、Vesa ブラケット、2.5インチ SSD / HDD増設用のケーブルとネジ、2分割の電源アダプター、HDMIケーブル。
▼電源アダプターは、同社の他のハイエンドミニPCと共通となる 120W出力のもの。120Wとしては 比較的 コンパクトにまとまっています。
▼本体は他のミニPCと同様に、傷つき防止のビニールで梱包されています。
外観
樹脂製の筐体ですが、アルミ調のシルバー塗装、厚みのある外枠、全体の重厚感から、エントリークラスのミニPCのような安っぽさは微塵も感じません。全般的に、MINISFORUMのミニPCは、他社の同スペック帯の製品よりもワンランク上の質感であることが多く、本製品も同傾向です。また、天板中央のロゴも小さく、好感を持っています。
▲背面の2つの通風口から、外枠に厚みがあることがわかります。
▼前面は左から、CMOS クリア、電源ボタン、3.5mm コンボジャック、USB-A 3.2 Gen2 x 2個。この数年のPCでは ほぼ使用することもありませんが、同社のミニPCでは、万一のフリーズに備えて CMOS クリアを装備している製品が多いです。
▼背面は左から、DC 19Vの電源、USB-C 3.2 Gen 2(DP、データ、PDのフル機能)、HDMI、2.5G 有線LAN、DisplayPort、USB-A 2.0 x 2個。
このクラスのミニPCでは、HDMI x 2個、USB-C ポート x 2個を備えていることが多いのですが、ポート類はやや少なめです。本製品は、同CPUを搭載する同社の「NAB9(実機レビュー記事はこちら)」より低価格であり、価格優先として、ポート類をカットしているように思います。
▲厚みのある通風口から、厚みのあるヒートシンクを搭載していることがわかります。なお、映像出力は、HDMI、DisplayPort、USB-Cの3系統です。
▼左右両サイドは同じ構成ですが、底板も含めて多くの通風口があり、これらから外気を取り込み、上の写真の通風口から排出します。
▲▼底板にも多くの通風口があります。また、下の写真から 大きなスペースがあることがわかります。
▼電源オンにて、電源ボタンはブルーに点灯します。写真では照明の関係上、やや淡くなっていますが、実物は鮮やかなブルーです。
▲▼上の記事にて実機レビューの、同じく Core i9-12900HKを搭載するミニPC「MINISFORUM NAB9」を並べてみました。サイズはほぼ同じ、「NAB9」は天板がワンタッチで開き、メモリ・M.2 SSDポートなどに即アクセスできる利便性があります。一方、価格は「UN1290」がやや安価です。
ベンチマークスコア
実機で計測のベンチマークスコアを記載します。比較対象は、以下の記事にて実機レビューの、Core i5-13500Hを搭載する同社のミニPC「MINISFORUM NPB5」です。
Geekbench 5
上の画像のパフォーマンスモードでは「シングルコア 1883、マルチコア 7629」、下の画像のバランスモードでは「シングルコア 1691、マルチコア 9885」。何度か計測しましたが、マルチコアのスコアは、バランスモードでのスコアが高くなっています。
▼こちらは前述のCore i5-13500Hのスコアですが、普段使いでの体感レスポンスに直結するシングルコアのスコアは、Core i9-12900HKの本製品が高いスコアです。
なお、以下の記事にて、実機で計測した Geekbench 5のスコアを一覧化しています。このなか、Core i9-12900HKは Apple M1より高いスコアです。
PC 実機で計測、Geekbench CPU ベンチマークスコアの一覧、サクサクと動作するスコアの指標
Geekbench 6
Geekbench 6のスコアは「シングルコア 2530、マルチコア 9021」。Geekbench 5と6では、評価項目とスコア判定のベースとなるPCのスペックが異なり、Geekbench 6のスコアは5よりも高くなります。
CINEBENCH R23
「CINEBENCH R23」のスコアは「シングルコア 1899、マルチコア 10085」。2つめの画像は、Core i5-13500Hのスコアですが、Geekbenchと同様に、シングルコアはCore i5-13500Hより高い一方、マルチコアは大きな差をつけ Core i5-13500Hが優位です。
▼実機で計測の、CINEBENCH R23のスコア一覧はこちら。
CINEBENCH R23、ミニPC・ノートPC 30製品で計測のスコア一覧。キビキビ動作のスコアの指標
3DMARK
「3DMARK Time Spy」のスコアは 1815となり、2つめの画像のCore i5-13500Hと同水準です。AMD Ryzenの場合、同価格帯あるいはワンランク下のスペックの場合にも、2000台のスコアとなるのですが、インテル 第13世代以前の統合グラフィックスでのスコアは控えめです。
PCMARK 10
オフィスワークのスコアの指標となる「PC Mark」の総合スコアは 5,845、それぞれのスコアは以下です。公式サイトによると、オフィスワーク向けのシステム推奨の目安は「Productivity = 4,500以上」、写真、動画、その他のデジタルコンテンツ編集向けのシステム推奨の目安は「Digital Content Creation = 3,450以上」とあり、当然ながらも大きく上回っています。
- Essentials、10.324
- Productivity、7,820
- Digital Content Creation、6,715
▼こちらは、冷却対応にやや課題のある Core i9-13900Hを搭載するミニPC(レビュー記事はこちら)のスコアですが、ほぼ同水準のスコアです。
ドラクエベンチマーク
「ドラクエベンチマーク」のスコアは「とても快適、9.024」
CrystalDiskMark
KINGSTONの型番「OM8PGP41024Q-A0」のPCIe 4.0 SSDの読み書きは、Write 4807MB/s、Write 3901MB/sと、このクラスのミニPCでは一般的な速度です。ミニPCにおいては、発熱対応・コストの関係からも、この近辺の読み書き速度のSSDとなり、7,000MB/sクラスのSSDを搭載することは まずありません。
USB-Cでの映像出力
USB4ではありませんが、フル機能のUSB-Cを搭載していますので、以下の27インチ 4K モニターに映像出力のうえ 使用してみました。結果、4K@60Hzにて映像出力、安定動作しています。
なお、機能的にはAlt モードにも対応しているはずですが、TDP 45WのCPUでもあり 検証しておりません。
▲▼以下の4K 27インチモニターへのUSB-Cからの出力において、4K@60Hzにて安定動作することを確認済です。
体感レスポンス
このクラスのPCの体感レスポンスは、毎回同じコメントとなりますが、普段使いでは実にキビキビと動作します。同水準のCPUを搭載する 大手ブランドのノートPCと比較した場合、本製品では ブランド独自のシステム監視ソフトなどがインストールされていないこともあり、より速く感じます。
- PCIe 4.0 SSDは一般的な読み書き速度ですが、Windows 11の起動・終了、大容量ソフトのインストールともに、即完了します。
- 私の用途である、記事・画像編集、Web サイトのブラウジング、動画視聴、ExcelやAccessなどの在宅勤務においては、遅さを全く感じることなく、かなりキビキビと動作します。
- 上記において、やや上位となる Ryzen 9 7940HSのミニPCとの比較でも 全く遜色なく動作します。
- システム監視ソフトがインストールされた、Core i7-1360Pを搭載のノートPCよりも、若干 サクサクと動作するイメージです。
- 個人的に弄り端末として使用することの多い、Core i5-8350Uあたりと比較すると、本製品を使用して即 キビキビと動作していることを体感できます。
CPU 温度、ファン音量
MINISFORUMのミニPCにおいては、ベンチマークの計測などで負荷をかけた場合にも、CPU温度がそれ程 上昇しない製品が多いのですが、本製品では若干高めです。ただし、瞬間的に サーマルスロットリングが発動することもある程度となり、課題となるほどではありません。
なお、ファン音量は、負荷をかけた場合も含めて抑えられており、普段使いでは ほとんど気にならない音量です。
HWiNFOの使い方、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフト。投稿数 約4万件のフォーラムも充実
▼上の記事で紹介のフリーソフト「HWiNFO」で計測のCPU温度です。CINEBENCH R23にて負荷をかけた際の温度ですが、瞬間的に90℃台となり、サーマルスロットリングが発動することがありました。
ただし、「瞬間的に」であり、また、Web サイトのブラウジングなどでは 40℃台で推移し良好です。
▼ iPhone アプリ「デジベル X」にて計測の、CINEBENCH R23で負荷をかけた際のファン音量。45dBとそれほど大きな音量ではありません。また、ベンチ計測が終了すると、ファン音量は即下がります。
まとめ
インテル 第12世代 Core i9-12900HKを搭載するミニPC「MINISFORUM UN1290」のレビューでした。同CPUを搭載するミニPCは、「MINISFORUM NAB9」、他社のノートPCを含めて3製品目となります。
インテル 第13世代のCore i9-13900Hを搭載する他社のミニPCの事例では、冷却対応とファン音量に課題がありますが、本製品においては その課題もなく、ベンチマークソフトによっては、Core i5-13500Hを上回り、Core i9-13900Hと同水準となるものもあります。この意味では、普段使いの使用感も かなりキビキビと動作し、上位機でなく本製品の優位性もあります。
国内通販においては、メモリ 32GB / SSD 1TBのセットモデルが 7万円台半ばで販売されており(2024年7月20日)、コスパに優れた おすすめ製品の一つです。
なお、留意事項としては、USB4を未搭載、代替として フル機能のUSB-Cを搭載する程度です。また、内部の構成、2.5インチ HDD / SSDの増設については、後日の追記、あるいは別記事にて掲載します。
▼2024年7月20日現在のAmazon 価格は、メモリ32GB / SSD 1TB モデルが 75,984円、メモリ 32GB / SSD 512GB モデルが 67,650円です。以下は SSD 1TB モデルですが、SSD 512GB モデルのAmazonはこちら。
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