エントリークラスからハイエンドまで、多くのミニPCを展開する「MINISFORUM」。同社より最近リリースされた製品が、第10世代のCore i5-10210Uを搭載する「U850」と、第8世代のCore i5-8259Uを搭載する「U820」。いづれも、4コア8スレッドのCPUにPCIe SSDを標準装備するハイエンド寄りの製品となり、2.5インチのSSDを2基増設可能であることも特徴です。
出荷は4月となりますが、MINISFORUMさんより、レビュー用に「U820」をサンプル提供いただきましたので、外観と使用感などを記載します。全般的には、快速なレスポンスに、ワンタッチで開くことのできる天板によりメンテナンスしやすく、CPUファンの音量も静かで、おすすめできるミニPCに仕上がっています。
公式サイト情報
MINISFORUM U820 / U850(日本語サイト)
スペックと特徴
スペックと特徴については「MINISFORUM U820/U850、Core i5 8259U/i5 10210Uを搭載、 2.5インチ SSDを2基増設可能なミニPCがリリース」でも記載していますので、あわせて参照ください。
以下は公式サイトで販売のスペックとなり、メモリ・SSDの容量は、今後 Amazonで販売される場合には異なる仕様となることがあります。
CPU | Core i5-8259U (U820) / Core i5-10210U (U850) |
GPU | Intel Iris Plus Graphics 655 (U820)、 Intel UHD Graphics (U850) |
メモリ | 16GB (8GB x 2、デュアルチャンネル) |
ストレージ | M.2 2280 256GB / 512GB PCle SSD、2.5インチ SSD / HDDを2基 増設可能 |
WiFi | 11a/ac/b/g/n |
Bluetooth | 5.1 |
ポート類 | HDMI、Display Port、USB Type-C (映像出力対応)、有線LAN、USB 3.1 × 4、USB Type-C(データ専用) |
サイズ | 127 × 127 × 53.1mm |
OS | Windows 10 Pro |
その他 | 内部へは天板のワンタッチでアクセス可能 |
▼第10世代のCore i5-10210Uを搭載する「U850」、第8世代のCore i5-8259Uを搭載する「U820」と、CPUの世代が異なります。MINISFORUM公式アナウンスでの以下の画像では、Geekbench 5のCPUベンチマークのスコアは、シングルコアはCore i5-10210Uがやや優位であるものの、マルチコアはCore i5-8259Uが僅差とは言えないほどに勝っています。
上表にて、特徴となる箇所に黄色網掛していますが、「U820」の実機の使用感の一部も含めて、あらためてポイントを整理すると以下となります。
- CPUは、4コア8スレッドのCore i5-10210U(U850)、もしくは第8世代のCore i5-8259U(U820)を搭載。
- メモリは16GB、SSDはSATAより高速なPCIe SSDを標準装備。
- 天板はワンタッチで開き、2基の2.5インチ SSD / HDDを簡単に増設可能。
- CPUファンの音量は静か。
- Windows 10 Proを搭載。
実機のシステム情報
続いて、Windows 10の設定画面、以下で紹介のフリーソフト「HWiNFO」から抽出の実機のシステム情報です。「HWiNFO」はメモリやドライブの製造元の表示のほか、CPU温度も計測できる優れたソフトです。
▼Windows 10 「設定」のシステム情報。スペック通りのCore i5-8259U、メモリ 16GB。OSはWindows 10 Proのバージョン 2004
▼「HWiNFO」のサマリー画面。GPUは「Intel Iris Plus Graphics 655」、メモリは右下のとおり 8GB x 2のデュアルチャンネル。
▼デュアルチャンネルのメモリは、Kingston製の8GB x 2、1333.3 MHz (DDR4-2666 / PC4-21300)
▼PCIe接続のSSDもKingston製。モデル名は 「KINGSTON OM8PDP3256B-A01」とあります。
▼こちらはGeekbench 5のシステム情報。CPUはもちろんスペックどおりの「Coffee Lake 4コア8スレッド Core i5-8259U」
開封、付属品
続いて開封と付属品の情報です。
▼外箱はMISFORUMの他の製品と共通と思っていたのですが、2つめの写真のX35Gの外箱とデザインが多少異なります。
▼内箱のクッションも厚く、ほどよく保護されています。
▼さらには、しっかりと梱包されています。
▼Display ケーブル、分割式・日本仕様ののACアダプター。ACアダプターの本体への接続は、意外にもUSB Type-Cです。なお、写真を取り漏れていましたが、HDMIケーブルも付属しています。
▼VESAのブラケット(ネジ入り)、2.5インチ SSD / HDD取付用のネジ、日本語表記もある説明書。通常のPCと同じであり、また、天板のワンプッシュで内部にアクセスできるため、説明書の読み込みは不要でしょう。
▼ACアダプターは本体と比較しても、大きくありません。このスペック帯のPCのアダプターとしては標準的、あるいはやや小さなサイズです。
外観
続いて概観について記載します。MINISFORUMのミニPCの特徴の一つとして、外枠・内部ともに、しっかりと作りこまれていることがあります。デザインとしてはオーソドックスな本製品ですが、随所に丁寧さを感じます。また、プラスチック製のボディを想像していたのですが、サイドの外枠はスチール製です。
▼天板下の赤の絵柄をプッシュすることにより、天板をワンタッチで開けることができます。これにより、内部へのアクセス、2.5インチ SSD / HDDの増設などを簡単に行うことができます。
▼シルバーの部分はスチール製です。ポート類は左から、USB Type-C(映像出力対応)、USB 3.0 x 2、ヘッドホンジャック、電源、リセットホール。MINISFORUMのミニPCは、リセットホールが付いている製品も多く、まさかのフリーズの場合にも安心です。
▲▼左のマイクが機能することは、以下の設定画面により確認済です。「マイクのテスト」により、バーが機敏に反応します。
▼右サイドのシルバーの部分には何もありません。
▼左サイドには多くの通風孔があります。
▼背面のポート類は、左から USB 3.0 x 2、Display Port、HDMI、有線LAN x 2、電源用のUSB Type-C
▼ポート類を拡大。もちろん、各部の作りは精巧なもの。大きな通風孔が確認できます。
▼背面より。CPUファンを確認したかったのですが、拡大しても通風孔からは見えず。
▼私の好きな角度より。
▼電源オンにより、ブルーのLEDが点灯します。
他のミニPCとの比較
手元に多くのミニPCが転がっていますが、うち3台をサイズなどの確認用に並べて撮影しました。比較対象としたミニPCは以下の3台です。
▼AMD Ryzenを搭載する「MINSFORUM UM300」との比較。ボディは色違いでサイズは同じように思えたのですが、U820が僅かに大きく、UM300のプラスチック製ボディに対して、U820はサイドのシルバーの部分がスチール製。配色の違いもありますが、質感としてはU820がより高いです。
▲天板のワンタッチで天板が開き、内部にアクセスできることはU820 / UM300に共通ですが、2.5インチのSSD / HDDの取付場所が異なります。U820は内部であるのに対し、UM300は天板裏に取り付けます。U820 / U850はメモリを16GB装備しているため、さらなる増設は不要と思いますが、SSD / HDD ブラケットを取り外すと、メモリスロットにアクセスできます。
▼奥行・高さはU820がやや大きい。
▼こちらは Core i3-1005G1を搭載し、デザインに優れた「MINISFORUM X35G」との比較。CPUベンチマークのシングルコアのスコアはほぼ同じとなる X35GとU820ですが、X35Gは高さが低いために内部のメンテナンス・2.5インチ SSD / M.2 SSDの増設がやや行いづらく、マザーボードを取り出す必要があります。
▼こちらは、私が現在 在宅勤務でメイン利用している 、Core i3-8145Uを搭載する「BMAX B4 Pro」。一回り小さなボディで、U820と同様に静音仕様です。レスポンスとしては、U820がよりキビキビとしています。
内部の構成
上述のとおり、ワンタッチで開く天板により、内部のメモリスロット、2.5インチ SATAポートへのアクセスも簡単です。
▼天板を開いた様子。メモリは16GB搭載しているため、一般的にはさらなる増設の必要はありませんが、2.5インチ SSD / HDDを2基増設できます。
▼2.5インチ SSD / HDDを2基収める、スチール製のブラケットがあります。
▼中央上のネジを外すとブラケットを取り外せます。
▼MINISFORUMのミニPCに共通する長所として、内部のさりげない部分もよく考慮されていることがあります。2.5インチのコネクターはゴムで保護され、しっかりと固定されています。
▼メモリは2スロットの8GB x 2、デュアルチェンネルです。
2.5インチ SSD / HDDを2基増設
2.5インチ SSD / HDDを2基増設できることが大きな特徴の本製品ですので、実際に、SSDとHDDを1基づつ取り付けて動作状況を確認してみました。もちろん、双方ともに動作しますが、取付完了までに要する時間は10分もかからず。ワンタッチで開く天板の仕様が、時間短縮に大きく貢献します。
▼中央上のネジを外して、ブラケットを取り出します。下半分の写真を未掲載ですが、下側はツメで固定されています。
▼ブラケットを取り出しました。樹脂製のブラケットとするミニPCも多いのですが、本製品はスチール製。取付用のネジも付属しています。
▼驚きなのが、アダプターの保護にゴムのキャップが付属していること。ミニPCは手元に10台以上ありますが、この丁寧な仕様は初めてです。他社のミニPCの場合、SATAケーブルが別売りの事例もありますが、MINISFORUMの場合、他製品も含めてケーブルが付属しています。
▼ゴムのキャップを外しました。
▼SSDとHDDを取り付けた状況。
▲▼ちなみに、SSDは多くの方が聞きなれない「WINTEN」の製品ですが、安価ながらもベンチマークスコアは立派です。
▼ブラケットにピッタリ収まっていますが、二段重ねのために排熱が心配です。内部の空流スペースも小さくなりますし。
▼今回は仮付のため、サイドのネジ止めは行っていませんが、本体に収めて取付完了。
▼Windows 10のデバイスマネージャーで確認してみると、もちろん 増設したSSDとHDDも含めて、3つのストレージともに認識しています。
Core i5-8259Uのベンチマークスコア
本製品に搭載の「Coffee Lake 4コア8スレッド Core i5-8259U」のベンチマークは多く出回っていませんが、シングルコアでは 概ね Core i7-8565UやCore i3 1005G1と同水準。マルチコアやGPU系のベンチマークでは、これらのCPUのスコアより高くなります。
▼比較対象としたミニPCは以下。Core i3 1005G1を搭載の「MINISFORUM X35G」、Core i7-8565Uを搭載のNVISENのミニPC。
Geekbench 5
Geekbench 5のCPUベンチマークのスコアです。
▼上から順に、Core i5-8259Uを搭載の本製品、Core i3 1005G1を搭載の「MINISFORUM X35G」、Core i7-8565Uを搭載の「NVISEN Y MU01」。体感レスポンスに影響するシングルコアでは Core i3 1005G1が一歩リードですが、マルチコアでは Core i5-8259Uが大きく優位。Core i7-8565Uをも大きく上回っています。
▼参考までに、Geekbench 5の本製品のシステム情報を貼り付けました。
CINEBENCH R23
モバイル向けのCPUを搭載するミニPCのCINEBENCHのベンチマークでは、計測の都度 そのランキングに落胆するのですが、シングルコアではよい位置のランクとなっています(比較対象のCPUが古いことも要因です)。
ドラクエベンチマーク
GPU関連の軽めのドラクエベンチマークのスコアは、標準画質で「12292、すごく快適」。Geekbench 5と同様に、メディア系は特に強いようです。また、U820のメモリが 8GB x 2のデュアルチャンネルであることも、高スコアに貢献しています(以下の記事に記載のとおり、統合型チップの場合、デュアルチャンネル化でドラクエベンチマークのスコアはアップします)。
▼上から順に、Core i5-8259Uを搭載の本製品、Core i3 1005G1を搭載の「MINISFORUM X35G」、Core i7-8565Uを搭載の「NVISEN Y MU01」。
CrystalDiskMark
一般的に、ミニPCにデフォルトで搭載のPCIe SSDの場合、その発熱・排熱のリスクを考慮してか、あるいはコストカットのためか、Amazonなどで販売の高速を謳うSSDよりもスコアは控えめの傾向があります。本製品に搭載のKingston製のRead側のスコアは良好です。
▼こちらは「MINISFORUM X35G」に装備のPCIe SSD。このスコアと比較すると、Read側のスコアは優れています。
体感レスポンス
ゲームや動画編集を行わない私としては、このクラスの体感レスポンスは概ね同じようなコメントとなるのですが、数日間、メイン利用したなかでの体感レスポンスを記載します。
- 第8世代以降のCore i、PCIe SSDを搭載する他のPCと同様に、Windows 10やソフトの起動や終了は快速。また、大容量ソフトのインストールに要する時間も短く、ストレスなし。
- Webサイトのブラウジングやオフィスソフトの操作などのライトユースでは、キビキビと動作し快適。この程度の操作では、現在 メインで利用している M1 MacBook Airと遜色ないレスポンスです。
- 2コア4スレッドのCore i3-8145Uとの比較では、画像編集やWebサイトの切替など、よりキビキビと動作することを体感できます。
- 私にとって、レスポンスと同様に重要な要素は、CPUファンが静音であること。いくらレスポンスがよくても、CPUファンがやかましい場合には使用をやめたくなります。この意味では、後段で記載のとおり、レスポンスと静音を両立しており、普段使いや在宅勤務でも安心して使用できます。
ファンの音量、発熱
CPUファンを確認するためにはマザーボードを取り出す必要があり、対応できていないのですが、上の画像のとおり立派なCPUファンとヒートシンクが備わっています。この恩恵により、CPUファンの音量は、かなり静かと言ってよい水準。具体的には以下となります。
- Windows 10の更新時・起動時にはファンが高回転するものの、手元にあるミニPCの「CHUWI CoreBox、LarkBox」の通常時よりも静か。耳障りな音ではなく、深夜でも問題ありません。
- 室温 23℃の室内での Webサイトのブラウジングや画像編集などの通常利用時には、多くの場合はほとんど聞こえないほどの小さなファン音量。多少の負荷をかけるとファン音がするものの、手元にあるノートPC「ThinkPad X280」と同程度の静かなもの。
- ベンチマーク測定時には、やや大きなファン音となるものの、測定後には元の音量に短時間で戻るため、課題ではありません。
- ボディの熱においては、高負荷時に天板に温もりを感じる程度。ただし、2.5インチ SSD / HDDを2基搭載した場合には、内部のスペースが狭くなるため、多少の熱のこもりはあるように思います。
▼ベンチマーク測定時の、CPUの最大温度は86℃。許容範囲です。
▼iPhone アプリ「騒音測定器」で簡易的に計測したファン音量。室温 23度、記事編集の負荷の少ない時に計測したものですが、概ね30dbちょっとで推移しています(最大67dbは、私が物音をたてた場合の騒音です)。簡単に計測できるため、お使いのPCと比べてみてください。
まとめ
MINISFORUMのミニPCのこれまでのレビュー(UM300、X35G、H31G)では、レビューの都度 その作りのよさや静音性に感心するのですが、この「U820」も同様です。Core i5-8259U、メモリ 16GB、PCIe SSDによる快適さはもちろんのこと、ワンタッチで開く天板の恩恵により、メンテナンスのしやすさは抜群です。
公式サイト情報 公式サイトでの予約販売情報はこちら。4月27日時点のPCIe SSD 256GB版の価格は 58,980円。
MINISFORUM U820 / U850(日本語サイト)
▼2021年4月27日 追記。Amazonでも販売となりました。公式サイトよりもやや割高です。
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