前世代のCeron Gemini Lakeと比較すると、大幅なパフォーマンスアップとなる Jasper Lake (Celeron) N5095 / N5100 / N5105。ミニPCの場合には最安 2万円台で購入できるコスパに優れたCPUとなりますが、N5095 / N5100 / N5105クラスのベンチマークスコアと体感レスポンス、同CPUを搭載しているPC事例を過去記事などから抽出して整理しました。
Jasper Lake N5095 / N5100 / N5105の仕様の相違
最初にIntel サイトから抽出の(N5095の場合はこちら)、N5095 / N5100 / N5105の仕様の相違について記載します。
N5095はミニPC、N5100はノートPCに掲載されることが多いCPUですが、「システムの種類」に Desktop / Mobileとあり、TDP(Thermal Design Power の略、熱設計電力)が大きく異なり、N5100においては 6Wと最大発熱量は低く抑えら、ノートPC向けであることがわかります。
一方、N5100は ベース周波数も抑えられていますが、Mobile向けのN5105は ベース周波数やTDPなどが N5095とN5100の中間、あるいはややN5095寄りの仕様となっています。
体感レスポンスとしては大きな相違はないため、ミニPC向けには N5095、ノートPC向けには N5100、N5105は双方ともにOKとの認識程度でよいと思います。
ベンチマークスコアと体感レスポンス
(上の画像は、Jasper Lake N5100を搭載する「CHUWI MiniBook X(CHUWI MiniBook X、公式ストアで販売開始。Win 11搭載・ファンレスなど新たに判明した事項)」)
Jasper Lake N5095 / N5100 / N5105は 概ね同水準のベンチマークスコアとなりますが、以下の記事で実機レビューのN5095を搭載するミニPCのベンチマークスコアと体感レスポンスを記載します。
ベンチマークスコア
ベンチマークスコアは概ね インテル 第5世代(2015〜2016年に発売されたPCに多く搭載)のCore i5-5200U相当となり、前世代のGemini Lake N4100と比べると パフォーマンスは大幅に向上しています。
▼Geekbench 5のCPU ベンチマークスコアは「シングルコア 651、マルチコア 2002」
▼ドラクエベンチマークは「普通、4167」。前世代のCeleronの主流となる Gemini Lake N4100では、この半分未満のスコアとなります。
▼CINEBENCH R23は「シングルコア 548、マルチコア 2104」。CINEBENCHのランキング比較で低い位置となることは、Celeronのみならず、モバイル向けのCore i シリーズではやむを得ないところ。
Geekbench 5の比較
私が複数のPCのベンチマークスコアを比較し、体感レスポンスを確認するうえで、指標の一つとしているのがGeekbench 5のシングルコアのスコアです。参考までに、実測したものをメインに参考指標として記載します。
▲▼上位のCPUも含めたスコアは上の記事に掲載していますが、ここでは N5095に近いスコア、前世代のCeleron / Atomのスコアを掲載しています。
CPU | コード名 | コア/スレッド | Single Core | Multi Core | レビュー記事 |
Core m3-8100Y | Kaby Lake | 2/4 | 793 | 1659 | CHUWI MiniBook |
Core i7-4750HQ | Crystal Well | 4/8 | 791 | 3134 | MacBook Pro 2013 |
Core i5-6300U | Skylake | 2/4 | 740 | 1563 | Let’s note SZ5 |
Core i5-5300U | Broadwell | 2/4 | 681 | 1424 | ThinkPad T550 |
Core i5-5200U | Broadwell | 2/4 | 660 | 1285 | NEC VK22TG |
Jasper Lake N5095 | Jasper Lake | 4/4 | 654 | 1981 | Beelink Mini S |
Jasper Lake N5095 | Jasper Lake | 4/4 | 651 | 2002 | TRIGKEY Green G2 |
Core i7-3615QM | Ivy Bridge | 4/8 | 643 | 2608 | Mac mini 2012 |
Jasper Lake N5105 | Jasper Lake | 4/4 | 639 | 2608 | Beelink U59 Pro |
Core i5 2540M | Sandy Bridge | 2/4 | 606 | 1883 | ThinkPad T420s |
Core m3-6Y30 | Skylake | 2/4 | 560 | 1251 | MacBook 12 2016 |
Core i3-550 | Clarkdale | 2/4 | 522 | 1172 | iMac Mid 2010 |
Gemini Lake N4020 | Gemini Lake | 4/4 | 440 | 835 | ASUS E210MA |
Celeron 3867U | Kaby Lake | 2/2 | 429 | 778 | XIDU Tour Pro |
Pentium Silver N5000 | Gemini Lake | 4/4 | 424 | 1452 | 8型 UMPC |
Core i3-3227U | Ivy Bridge | 2/4 | 395 | 897 | ThinkPad E130 |
Gemini Lake N4100 | Gemini Lake | 4/4 | 386 | 1006 | CHUWI Hi10 X |
Apollo Lake N3450 | Apollo Lake | 4/4 | 297 | 1061 | BMAX B2 |
Atom Z8350 | Cherry Trail | 4/4 | 174 | 544 | ドンキ NANOTE 初代 |
▲普段使いで体感レスポンスに影響するのはシングルコアのスコアですが、Jasper Lake N5095のスコアは、インテル 第5世代のCore i5-5200Uに近く、4コア 8スレッドで Mac mini 2012モデルに搭載の Core i7-3615QMよりも よいスコアです。体感レスポンスも同様で、これらの同感覚となります。
一方、前世代のモバイル向け Celeronとなる Gemini Lake N4100は、インテル 第3世代のCore i3と同水準のスコアです。
体感レスポンス
先に掲載の「TRIGKEY Green G2」のレビュー先記事のコメントへの追記ですが、Jasper Lake N5095の体感レスポンスを記載します。N5100とN5105も同水準のレスポンスです。
全般的には、前述のとおり、現在でもコストを下げるために 中国ブランドのミニPCやノートPCでも搭載されることのある、インテル 第5世代 Core i5-5200U相当の体感レスポンスです(2015年あたりに発売のノートPCに多く搭載されたCPU)。
- Gemini Lake N4100クラスと比較すると、画像編集などのライトユースにおいても、引っ掛かりが少ないなどのレスポンスの相違を体感できる。
- Web サイトのブラウジングや動画視聴、記事編集・画像編集、それほどデータ量の多くない Excelなどでは遅さを感じることはありません。
- 前世代のGemini Lakeとの比較において、最も顕著に体感できるのは Windowsの更新前後。バックグラウンドのシステムプログラムにより N4100クラスでは CPU使用率が100%となる時間が長く、レスポンスがかなり悪化しますが、N5095ではある程度軽減されます。
- N5100クラスのPCに搭載のストレージは、高速なPCIe接続ではなくSATA接続のSSDとなりますが、Windows 10の起動や 大容量アプリのインストールでは、CPUパワーの恩恵か Gemini Lake クラスよりも速く感じます。
- 概ねこのクラスのPCでは、発熱が少なく ファン音量が小さいために、ほどよいレスポンスで作業に集中できることは大きなメリット。
N5095 / N5100 / N5105を搭載するPC 15選
(上の画像は、Jasper Lake N5095を搭載のミニPC「MINISFORUM JB95(MINISFORUM JB95、Jasper Lake N5095搭載 ミニPCのスペックと特徴。3系統の映像出力に対応)」)
Jasper Lake N5095 / N5100 / N5105を搭載する製品は、ミニPC・ノートPCともにかなり多く、従来はGemini Lakeを搭載していたPCの同モデルをアップグレードした事例も多くあります。
PC13選 一覧
以下は、私が好印象を持っている13製品をピックアップしていますが、いづれも新興中国ブランドの製品となり、ノートPCの場合は英語キーボードのみの設定です。なお、「販売例」のリンク先は Amazonなどの販売ページですが、Banggoodはクーポンにより安く購入できるため、クーポン情報を掲載の当サイト内の記事内へのリンクです。
モデル名 | 種類 | CPU | 記事 | 販売例 |
Beelink U59 Pro | ミニPC | N5105 | レビュー | Amazon |
Beelink Mini S | ミニPC | N5095 | レビュー | Amazon |
TRIGKEY Green G2 | ミニPC | N5095 | レビュー | Banggood |
MINISFORUM JB95 | ミニPC | N5095 | 製品紹介 | MINSFORUM 公式 |
Beelink U59 | ミニPC | N5095 | 製品紹介 | Amazon |
BMAX B3 Plus | ミニPC | N5095 | 製品紹介 | AliExpress |
CHUWI Hi10 Go | 10型 2 in 1 | N5100 | 製品紹介 | Amazon |
CHUWI MiniBook X | 10型ノート | N5100 | 製品紹介 | CHUWI 公式サイト |
CHUWI GemiBook Pro | 14型ノート | N5100 | 製品紹介 | Amazon |
CHUWI LarkBook X | 14型ノート | N5100 | 製品紹介 | Amazon |
ALLDOCUBE GTBook | 14型ノート | N5100 | 製品紹介 | Amazon |
BMAX Y11 Plus | 11.6型ノート | N5100 | 製品紹介 | Banggood |
DERE MBook M10 | 15.6型ノート | N5100 | 製品紹介 | AliExpress |
ZX01 | 超小型ミニPC | N5105 | 製品紹介 | AliExpress |
GMKTEC NucBox 5 | 超小型ミニPC | N5105 | 製品紹介 | Amazon |
以下は、上表の製品のうち一部をピックアップしました。
Beelink Mini S
CPUには N5095を搭載し、他のミニPCよりも一回りコンパクトであることが大きな特徴となる「Beelink Mini S」。2.5インチ HDD/SSDを増設できることは、他のミニPCと同じですが、メモリスロットが一つのみとなり、メモリを増やす場合には、標準装備のメモリを換装する必要があります。
▼2.5インチ SSDを増設した状態。
▼実機レビュー記事はこちら。
Beelink U59 Pro
上で紹介の「Beelink Mini S」、後述の「Beelink U59」のCPUがN5095であることに対し、「Beelink U59 Pro」はN5105を搭載しています。ベンチマークスコア、体感レスポンスとも同水準のため、セール価格に応じた選択でよいと思います。なお、「Beelink Mini S」はメモリスロットが一つのみですが「Beelink U59 / U59 Pro」は二つ装備しています。
▼左は「Beelink U59 Pro」、右は「Beelink Mini S」。Mini Sは一回りコンパクトなサイズです。
▼実機レビュー記事はこちら
TRIGKEY Green G2
上の写真は実機レビューしているミニPCの「TRIGKEY Green G2」。「MINISFORUM JB95」、「Beelink U59 / U59 Pro」、「BMAX B3 Plus」ともに、メモリを増設できること、標準装備のM.2 SSDをより大容量なものに換装できること、2.5インチ HDD / SSDを増設できることはは同じ仕様です。
USB、HDMI ポートにも大きな相違はなく、各通販サイトでのセールの状況により、また、デザインの好みによる選択でよいと思います。
Jasper Lake N5095を搭載するミニPCの、2022年5月11日時点の国内通販での狙いめの価格は 3万円未満が目安です。昨今のように円安でない3月以前は、海外通販サイトでは 2万円ちょっとで購入できました。
▼Banggoodの価格情報。
メモリ 8GB / SSD 256GB版は、クーポン「BGJPMNTR67」の利用により 189.99ドル。メモリ 16GB / SSD 512GB版は、クーポン「BGJPMNTR68」の利用により 259.99ドル
ZX01、GMKTEC NucBox 5
上の画像は 7.2 x 7.2 x 4.5 cmの極小サイズの「NucBox 5」。「ZX01」も同型のPCです。メモリは8GBのオンボードとなり増設はできませんが、このサイズで USB 3.2 x 2、USB Type-C(PD Charge 対応)、HDMI x 2、有線LANとポート類も豊富。さらには、標準装備はSATAのSSDですが、より高速なPCIe SSDに換装することができます。
なお、Amazonのレビューを参照すると、USB ポートの配置が外枠とずれているとのコメントもあり注意が必要です(ご自身での修正が必要かも)。
▼製品の詳細記事はこちら
BMAX Y11 Plus
上の画像のとおり、ディスプレイ(タッチパネル)が360°回転する Yoga スタイルの11.6インチの2 in 1「BMAX Y11 Plus」。天板と底板はアルミ製となり、剛性をしっかりと保持していることも特徴とします。
以下の記事で、2018年に紹介の「Teclast F5」の派生モデル(OEM、Gemini Lake N4100からJasper Lake N5100にグレードアップ)の位置づけとなり、ベースモデルは古いものの、外観も今年販売といってもおかしくないでスタイルです。マイナスポイントとしては、フルサイズのUSB Aを装備せず、USB Type-C、Micro USB、Micoro HDMIであること。Micro USBであるためにマウスなどの接続に要注意(USB Type-C、あるいはBluetooth 接続のマウスを利用)です。
また、上段で記載のノートPCはいづれも英語キーボードですが、以下のフリーソフト「Alt IME」の利用により、スペースキー両隣のAlt キーのワンタッチにより「英数・かな」の切替が可能となります。
▼Banggoodの販売情報。5月11日現在ではクーポンの発行はありません。
▼製品の詳細記事はこちら
CHUWI GemiBook Pro
Jasper Lake N5100、メモリ 8GB、SSD 256GBを搭載の「CHUWI GemiBook」。当初はGemini Lake N4100を搭載していましたが、CPUをアップグレードしての販売です。
14インチのディスプレイは アスペクト比 3 : 2の縦長であることも特徴の一つ。Web サイトやExcelなどで縦の情報量が多くなり重宝します。
▼CHUWIのノートPCはシックなデザインで好感が持て、エントリーのHeroBook シリーズを除いては、天板と底板はアルミ製で質感高く仕上がっています。
▼Gemini Lake J4125を搭載する同モデルも併売しているため 注意が必要です。
▼製品の詳細記事はこちら
CHUWI MiniBook X
CHUWI 公式ストアでの販売価格は 7万円台半ばと、Jasper Lake N5100搭載としては割高ですが、その価格に見合う製品が「CHUWI MiniBook X」。
10.8インチにして 899gと程々に軽量であるうえに、上の画像 左上のとおりパンチホールを搭載することによりベゼル幅は狭く、メモリ 12GB、SSD 512GB、アルミ製のユニボディ、ファンレスの静音仕様、解像度 2560 ×1600と、他製品にはない特徴を備えています。
▼タッチパネルのディスプレイは 360°回転する Yoga スタイル
▼CHUWI 公式ストアの販売情報。日本倉庫からの発送です。
▼製品の詳細記事はこちら
まとめ
前世代のCeleronである Gemini Lakeより大幅にパフォーマンスアップとなった Jasper Lake。普段使いでは遅さを感じることなく動作するため、安価でレスポンスも犠牲にしたくないPCをお探しの場合には、おすすめのCPUです。なお、同一モデルのPCでも、Gemini LakeとJasper Lakeの製品を併売しているケースもあることに留意ください。