CHUWIより新たに販売となった「CoreBox i5」。CPUに第5世代のCore i5-5257U、メモリ 8GB、SSD 256GBを搭載するミニPCです。以前に同じボディを採用するGT Boxが販売されていましたが、CPUをCore i3-5005Uからスペックアップしています。このCoreBoxをBanggoodさんよりレビュー用にサンプル提供いただきましたので、手元にあるGT Boxとの比較も含めて実機レビューします。
全般的には、従来機 GT BoxのCPUから僅かなスペックアップと思いきや、意外とレスポンスの相違を体感でき、CPUファンやヒートシンクも豪華な仕様となっています。
なお、Banggoodさんより特別に提供いただいたクーポン(文末参照)を適用しての価格は、3万円未満となる255.99ドル。従来機種のGT Boxも同水準の価格であったため、実質的には値下げと言えそうです。
スペックと実機のシステム情報
当記事ではCoreBoxとしていますが、正式名称はCoreBox i5。他の中国ブランドの競合製品としては、Core i3-5005Uを搭載する「Jumper EZBox i3」がありますが、そのネーミングに対抗し、Core i5-5257Uを搭載することを強調しているように思います。
スペックを示す上の画像の左上に「Ultra-compact Metal Case」とありますが、ミニPCとしては大柄であることに留意する必要があります。これは、以前に販売されていた上位機のHigameが外付のGPUを組み込んでおり、この冷却対応のためにもボディは大柄だったのですが、おそらくはコスト削減のために、Higameと同ボディを使用していることによります。
また、従来機のGT Boxは「Metal Case」に相応しいスチール製のボディだったのですが、CoreBoxでは同じサイズと形状のボディながらもプラスチックを多用(一部にスチール)したものに変更となっています。ボディの素材でコストカットしつつ、CPUとヒートシンクを豪華にして、価格のバランスをとっているようです。
▼実機レビューで明確になった事項、新たに判明した事項に黄色網掛けしています。
CPU | Core i5-5257U |
GPU | Intel Iris Graphics 6100 |
メモリ | 8GB DDR3 |
ストレージ | 256G SATA SSD、2.5インチ SSDを増設可能 |
WiFi | 11a/ac/b/g/n |
Bluetooth | 4.2 |
ポート類 | USB-A × 4、HDMI × 2、有線LAN |
サイズ | 173 x 158 x 73mm、805g |
OS | Windows 10 Home |
その他 | ボディの一部は金属製、銅製のヒートパイプ |
ミニPCに多く搭載されるCPUとしては Gemini Lake (Celeron) N4100、次いで Core i3-5005Uとなりますが、冒頭にも記載のとおり、本製品はワンランクアップのCore i5-5257Uを搭載していることが大きな特徴。
▼Windows 10の設定画面のバージョン情報より。もちろん、スペックどおりにCPUはCore i5-5257U、メモリ 8GBとあります。
▲BMAX B2 Plus / B4 Proなど、BMAXや他のミニPCでは Windows 10 Proを搭載することも多いのですが、CoreBoxはWindows 10 Home。
▼フリーソフト「HWiNFO」で抽出のシステム情報。当ソフトは各種デバイス情報やCPU温度も管理できる優れもの(HWiNFO、Win 10のデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフトの概要)。
▼同じく「HWiNFO」から抽出のデバイス情報。SSDは、CHUWIで搭載例の多いNETACブランドの製品(画像左の中ほどを参照)。NETACは日本国内では馴染みのないブランドですが、海外通販では多く流通し、国内通販ではNVMe対応のSSDが販売されています。以下はNETAC NVMe SSDの使用例です。
外観と機能
プラスチックを多用している外観ですが、その塗装などから一見して金属製と勘違いしたほどに、質感高めに仕上がっています。ただし、ポート類は背面に集中しているのですが、USB機器を頻繁に脱着する私としては、前面にUSBポートが欲しかったところです。
▼CHUWIの製品に共通する配色の外箱。
▼やや肉厚の内箱に、しっかりした保護材が詰め込まれています。
▼付属品はEUタイプの2分割式のACアダプター、説明書・保証書類、2.5インチ SATAケーブルと取付用のネジ。大きなボディでもあり、VESAマウントを介してのモニターなどへの取付は不可です。
▲▼上のアダプターの画像は潰れているために拡大。EUタイプのアダプターですが、日本仕様の変換アダプターは量販店でも安価で販売しているために問題なし。
▲ミニPCの2.5インチ SSDの接続ケーブルは付属していない事例もあり、また、国内外通販では販売していない特殊なものが多いのですが、CoreBoxでは付属しており安心。
▼電源ボタン(右上にあり)のみの前面パネル。今回の実機レビュー、あるいは従来機種のGT Boxでも感じることは、前面にもUSBポートがなく不便。かなりのスペースがある前面パネルのため、USBポートが2つあるとよいのですが。
▲電源オン時にはブルーのLEDが点灯。個体差かもしれませんが、電源ボタンは一発で反応しないこともあり、その場合は二度押しあるいは長押しで対応。
▼左右の通風孔のある面も含めて、サイドは全てプラスチック製。GT Boxでは一部に金属(スチール)を使用するサイドでしたが、変更となっています。
▼背面は、有線LAN、HDMI x 2、USB 2.0 x 2、USB 3.0 x 2とポート類が集中。USBポート間の距離が狭く、やや硬いためにUSBケーブルの抜き差しを行いづらい。
▼底板は4個のネジで固定されています。これを緩めると(ネジは完全に外れず、緩めるのみ)内部にアクセスでき、2.5インチ SSDを増設できます。ちなみに、底板の素材もプラスチック製。従来機のGT Boxはスチール製でした。
▲ファンの形状をした通風孔が2つありますが、ファンは一つのみです。
内部の構成
底板を外してみて驚いたのが、CPUファンとヒートシンクがデスクトップ並みであること。ミニPCの場合、汎用的なヒートシンクに小さなファンを取り付けたものが多いのですが、デスクトップのリテール品のCPUに付属しているような豪華な仕様です。
▼右下のネジにはシールを貼っていますが、4個のネジを緩めて内部にアクセスします。
▼まず目に付くのはCPUファン。左は、256GBのSATA M.2 SSD。
▼Core i5-5257Uには不釣り合いと思えるほどの、立派なヒートシンクとCPUファン。
▲銅製のヒートパイプも備わっています。Amazonの製品紹介では「ファン二つ」とあるのですが、この面から見る限りは、また、使用中のファン音では、ファンは一つのみで間違いなし。
▼こちらはCore i3-5005Uを搭載する従来機のGT BoxのCPUファンとヒートシンク。100ドル程度のミニPCに搭載されているような、小さく汎用的なもの。CoreBoxと比較するとフル回転時の音量は大きい。
▲▼底板の裏に2.5インチ SSD / HDDのホルダーがあります。早速、付属のSATAケーブルとネジを利用し、2.5インチ SSDを増設してみました。
GT Boxとの外観の比較
既に何度も記載していますが、今回のレビューにあたり、私の興味の一つは従来機のGT Boxとの比較。あらためて、外観を比較してみると、デザインやポート類の配置は同じであるものの、配色や素材が異なります(しつこいようですが、GT Boxのスチールに対して、CoreBoxはプラスチック)。
▼イメージ画像では配色の相違を感じなかったのですが、CHUWIの傾向を踏まえたグレイのCoreBoxに対して、GTBoxはグリーンが混ざったような色合いです。
▼上はGT Box、下がCoreBoxですが、ポート類の配置は全く同じです。
▼こちらはスペック的には優位な BMAX B4 Proとのサイズを比較。
▲体積にして倍以上の差があります。B4 ProはミニPCとしては標準的なサイズですが、CoreBoxはかなり大きい一方、デザインとしてはCoreBoxがよりPCライクに見えます。
▼GT BoxとB4 Proのレビュー記事はこちら。
ベンチマークスコアと体感レスポンス
第5世代のCPUを搭載するPCとして、私はCore i3-5005Uを搭載するPCを2台所有しています(前述のCHUWI GT Box とJumper EZBook X4 Pro)。CoreBoxのCore i5-5257Uは、Core i3-5005Uと型番が近いことから体感レスポンスは同程度と想像していたのですが、ライトユースの短時間の操作でも多少の相違を感じます。
ベンチマークスコア
▼Geekbench 5のCPUベンチマーク。
上から順に、Core i3-5005UのCHUWI GT Box、Core i5-5257UのCHUWI Core Box、Core i3-8145UのBMAX B4 Proのスコア。
▼体感レスポンスに直結するシングルコアのスコアでは、Core i5-5257UはCore i3-5005Uの倍ほどのスコア。もちろん、体感レスポンスではベンチマークスコアほどの優位性はないのですが、Core i5-5267Uがよりキビキビと動作することを感じ取れます。
▼ドラクエベンチマークは、4029の普通。
▼NETACブランドのSATA M.2 SSDの、CrystalDiskMark v7のスコアは標準的。
▼ミニPCとしては大きなCPUファンに銅製のヒートパイプを備えていることから、ベンチマークで負荷をかけた際のCPU温度は最大 61℃と、かなり良好です。後日、改めて確認すると、最大 80℃半ばとなることが何度もありました。これをベースにすると標準的なCPU温度です。
体感レスポンス
第5世代のCore i5ともなれば、在宅勤務でのオフィスソフトなどでも十分にサクサクと動作。今回は試しませんでしたが、ExcelやAccessの大量データの処理も、よほど複雑な算式やクエリを多用しない限りは十分でしょう。
手元に転がっている、Gemini Lake N4100、Core i3-5005U、Core i3-8145U、その他 第8世代のCPUを搭載するPCとの体感レスポンスの相違などは以下です。
- エントリークラスのミニPCやノートPCに多く搭載される Gemini Lake N4100と比較すると、Webサイトの画像編集などの軽い作業でも軽快さを感じます。Google Chromeでは、画像の表示がワンテンポ速いような感覚。
- Core i3-5005Uと比較すると、その差は大きく体感できるものではありませんが、Windowsの設定画面やタスクマネージャーの表示などの基本動作においても、よりキビキビと動作していることがわかります。
- やはり第8世代のCore i3 / i5 / i8とPCIe SSDの組み合わせと比較すると、レスポンスの相違を感じます。Core i5-5257UでもWindows 10の起動や終了、ソフトの起動や処理などは快適なのですが、上記の組み合わせではより一層 機敏に動作します。
- ただし、上記の第8世代のCore iシリーズとの相違はPCIe SSDの恩恵も大きく、SSDの接続方法を統一した場合、ライトユースでは大きな相違を感じることも少ないはずです。
ファン音量、その他の使用感
私としてはCPUファンの音量は、PCを選ぶ際の大きなポイント。高スペックのPCの場合でも、ファンが轟音である場合には使用を中断したくなります。
CPUのファン音量や、レスポンス以外のその他の使用感のポイントは以下です。
- 中ほどのBMAX B4 Proとの比較写真で明らかですが、購入を検討する場合には、ミニPCとしては大きいことを前提とする必要があります。
- ただし、内部に大きな空間があり、冷却効果、風流にはボディサイズが貢献。
- 軽めの作業の場合にも、CPUファンが高回転となる頻度は高いのですが、
それほど音量は大きくなく許容範囲。負荷の少ない場合には、ほぼ無音となる時間も多いです。 - 前述のとおり、機能性では前面にUSBポートが欲しかった。今回の実機レビューや、以下のGT Boxと同様に、CoreBoxにもmacOSを導入し遊んでいるのですが、USB機器の脱着を頻繁に行う状況では、背面のみのUSBポートでは煩わしくなります。
▼CPUファンの音量については以下の記事を参照。当初は「静か」と感じていたものの、それなりの音量です。
▼別記事にて記載しますが、CoreBoxでもHackintoshによるmacOSが稼働、Windows 10とデュアルブート化しています。
まとめ
従来機のGT BoxからスペックアップしたCoreBox (正式名称はCoreBox i5)。Core i3-5005UからCore i5-5257Uへと型番としてはワンランクアップですが、意外と体感レスポンスの優位性も感じます。この価格帯のミニPCとしては、Core i3-5005Uを搭載する製品も多いのですが、同一価格帯でワンランク上のスペックとなり、2.5インチ SSDも増設可能でケーブルも付属していることから、購入後に即 SSDを増設、メインPCとして使用することもできます。