モバイル向けCPUのJasper Lake (Celeron)の後継的な位置づけでありながら、第8世代 モバイル向けのCore i3 / Core i5と同水準のパフォーマンスとなる「Alder Lake-N N95 / N100」。ミニPCでは 2万円前後で販売の製品も多く、コスパに優れています。
これまで(2024年8月現在)、Alder Lake-N N95 / N100を搭載するPCを7台レビューしたところで、あらためて Alder Lake-N N95 / N100を、過去にレビューした旧世代のCoreシリーズとのベンチマークスコアの比較を掲載します。
実機レビューした N95 / N100のPC
これまで、Alder Lake-N N95 / N100を搭載するミニPCを7台レビューしました(2024年8月現在、ほかに N305のPCもレビューしています)。ベンチマークやレスポンスは後述していますが、ここではそれぞれの製品の特徴について記載します。
共通する特徴としては、いづれも省電力なCPUを採用していることもあり、静音仕様であること。負荷をかけた場合にも、ファン音はほとんど聞こえないほどに静音です。
Beelink EQ12、N100搭載 ミニPC
2023年5月2日時点では、Alider Lake-N N95 / N100を搭載するミニPCのなかで、イチオシの製品がこちらの「Beelink EQ12」。Beelinkは、現在のようにミニPCが人気となる以前から、AliExpressなどの海外通販でミニPCを展開している老舗的なブランド。
作り込みもしっかりしており、安価な製品でも Crucialのメモリなど、大手ブランドのパーツを使用し、製品紹介にCPU温度やファン音量(dB)を表示することが多いです。
なお、他のN95 / N100のミニPCは、DDR4のメモリを搭載する製品が多いなか(後述の「S12」と「AU01」はDDR4 メモリを搭載)、「EQ12」はDDR5 メモリを搭載しています。
▼「EQ12」にHDDを増設。CPUファンとブラケットファンと2つのファンを装備していますが静音です。
▼実機レビュー記事と価格情報はこちら。
Beelink S12、N95搭載 ミニPC
デザインは「EQ12」と似ていますが、サイズは僅かにコンパクトな「S12」。Alder Lake-N N95を搭載し、メモリはDDR4。「EQ12」は内部にシステムファン付きのブラケットがあり、メモリとM.2 SSDを換装しにくいのですが、「S12」は底板を開けて簡単に換装できるメリットがあります。
「EQ12」が上位のミニPCですが、価格とメモリとM.2 SSDの換装のしやすさで選ぶなら「S12」もありです。
▼「S12」にHDDを増設。「EQ12」「S12」ともに、大手ブランド Crucialのメモリを搭載し、SSDはM.2 PCIeです。
▼実機レビュー記事と価格情報はこちら。N100を搭載の「S12 Pro」も販売されています。
▼こちらは、おそらくは「S12 Pro」と同型の「TRIGKEY G4」。
T-bao T8 Plus ミニPC
上の写真は、iPhone 12 Pro Maxの上にN100搭載のミニPC「T-bao T8 Plus」を置いたもの。87.8 x 87.8 x 47mm / 203.7gと超小型で軽量のボディに、LPDDR5 8GB あるいは16GBのメモリを搭載し、ベンチマークスコアと体感レスポンス、静音性は、他のN100 ミニPCと同じです。ストレージは 2242 サイズのM.2 SATA 256GB あるいは 512GB SSDですが、より高速なPCIe SSDに換装することができます。
さらには、以下の写真にように、HDMI ポートを3つも搭載しています(USB-Aポートも3つ搭載)。これほどに超小型で、ポート類も充実していますので、電源がUSB-Cなら理想なのですが。
▼実機レビュー記事と価格情報はこちら。メモリ 16GB / SSD 512GBモデルのBanggood 価格は、12/31まで有効なクーポン「BGJP2ae2」の利用により 189.99ドル。Amazonでは他ブランドから同型モデルが販売されています。
NVISEN AU01、N95搭載 ミニPC
Alder Lake-N N95を搭載する「NVIESN AU01」。上記のBeelinkの2製品が 2280サイズのM.2 PCIe SSDを搭載するのに対して、「AU01」は ベンチスコアのやや劣る 2242サイズのM.2 SATA SSDを搭載しています。
ただし、Beelinkの製品が 2.5インチ SATA SSD / HDDを増設可能なのに対して、「AU01」は 2280サイズのM.2 PCIe SSDを増設できるメリットがあります。販売数の少ない 2242サイズのM.2 SSDを標準装備のため、これを他のPCに転用し、別途購入のPCIe SSDを起動ドライブ化する手段もあります。
▼中央にあるのが、標準装備 2242サイズのM.2 SATA SSD、その下は増設した PCIe SSD。
▼実機レビュー記事と販売情報はこちら。
SkyBarium T-BOX Pro ミニPC
2024年8月に追加のミニPCです。上記の「T-bao T8 Plus」よりもさらに小型、73 x 73 x 43mmのN100を搭載する「SkyBarium T-BOX Pro」。大きな特徴は、フル機能・Alt モードに対応のUSB Type-C ポートを装備していること。
通常サイズのN95 / N100 ミニPCにおいても、フル機能のUSB Type-C ポートを装備する製品は貴重な存在ですが、本製品は、モニターがPDに対応している場合、ケーブル 1本の接続にて PCへの給電とモニターへの映像出力が可能です。さらに、上の写真のUSB Type-C ハブが付属し、ハブ経由で給電することもできます。
▼標準装備のSSDは SATAですが、PCIe SSDに換装することもできます。なお、超小型サイズでもあり、メモリは12GBのオンボードです。
▼実機レビュー記事と販売情報はこちら。
CHUWI GemiBook XPro、N100搭載 14型ノート
こちらはレビューした製品ではありませんが、Alder Lake-N N100搭載で 3万円ちょっとの14インチノート「CHUWI GemiBook XPro」。同スペックのミニPCと価格差が大きくなく、DDR5 メモリを搭載していることも大きなポイント。
ただし、従来のGemiBookのディスプレイのアスペクト比が 16 : 10の縦長であったのに対して、XProは 16 : 9の通常のワイドディスプレイであることが惜しい。
N95 / N100、旧世代 Core i3 / i5とのベンチスコア比較
下表は これまで実機レビューしたPCのGeekbench 5のスコアを、一覧化したものです。より多くの製品のスコアは「PC 実機で計測、Geekbench CPU ベンチマークスコアの一覧、サクサクと動作するスコアの指標」の記事に記載していますが、上位のCPU、AMD Ryzen、Core-mシリーズを除き、再編集しています。また、参考までに、Jasper Lake / Gemini Lakeのスコアも掲載しています。
CPU | コード名 | コア/スレッド | Single Core | Multi Core | レビュー記事 |
Core i3-1005G1 | Ice Lake | 2/4 | 1129 | 2594 | CHUWI CoreBox Pro |
Core i7-8565U | Kaby Lake | 4/8 | 1056 | 2765 | NVISEN ミニPC |
Core i5-8259U | Kaby Lake | 4/8 | 1004 | 3862 | MINISFORUM U820 |
Alder Lake-N N100 | Alder Lake | 4/4 | 998 | 2904 | Beelink EQ12 |
Core i5- 8279U | Cofee Lake | 4/8 | 946 | 3156 | Beelink SEi 8 |
Core i5-7300U | Kaby Lake | 2/4 | 938 | 1783 | LIFEBOOK U937/R |
Core i3-8145U | Whiskey Lake | 2/4 | 926 | 1843 | BMAX B4 Pro |
Alder Lake-N N95 | Alder Lake | 4/4 | 921 | 2272 | Beelink Mini S12 |
Alder Lake-N N95 | Alder Lake | 4/4 | 909 | 2313 | NVISEN AU01 |
Core i5-5675R | Broadwell | 4/4 | 916 | 3113 | iMac 21.5 4K Late 2015 |
Core i3-8130U | Kaby Lake | 2/4 | 864 | 1710 | ThinkPad X280 |
Core i5-6300U | Skylake | 2/4 | 740 | 1563 | Let’s note SZ5 |
Core i5-5300U | Broadwell | 2/4 | 681 | 1424 | ThinkPad T550 |
Jasper Lake N5095 | Jasper Lake | 4/4 | 651 | 2002 | TRIGKEY Green G2 |
Jasper Lake N5105 | Jasper Lake | 4/4 | 639 | 1883 | Beelink U59 Pro |
Core i3-6100U | Skylake | 2/4 | 566 | 1218 | ThinkPad L560 |
Gemini Lake N4020 | Gemini Lake | 4/4 | 440 | 835 | ASUS E210MA |
Gemini Lake N4100 | Gemini Lake | 4/4 | 386 | 1006 | CHUWI Hi10 X |
Apollo Lake N3450 | Apollo Lake | 4/4 | 297 | 1061 | BMAX B2 |
Atom Z8350 | Cherry Trail | 4/4 | 174 | 544 | ドンキ NANOTE 初代 |
なお、Geekbenchのシングルコアのスコアは、概ね体感レスポンスとリンクしていますが、PCにて実測のGeekbench 5のスコアから、Alder Lake-N N95 / N100の実力は以下と言えます。
- Alder Lake-N N100の実力は、第8世代 モバイル向けのCore i5(Core i5- 8279U / Core i5-8259U)と同水準。
- Alder Lake-N N95の実力は、第8世代 モバイル向けのCore i3(Core i3-8145U)と同水準。
- 双方ともに、データ量の比較的多い ExcelやAccessにおいてもサクサクと動作する水準です。
N95 / N100は Jasper Lake (Celeron) N5095 / N5100 / N5105の後継との位置づけですが、Jasper Lakeが 第5世代のCore i5相当の実力であったのに対して、3世代分もジャンプアップしています。
Jasper Lakeにおいても 前世代のGemini Lakeから大きく向上していますが、Alder Lake-Nはそれを大きく上回るパフォーマンスアップです。
N100 / N95の実力は、前述のとおり、第8世代 モバイル向けのCore i3 / i5と同水準ですが、これらは 2018年から2019年にかけて、ミドルレンジからハイエンド寄りのノートPCに搭載されていたCPUです。第8世代 モバイル向けのCore i3 / i5を搭載のノートPCやミニPCでは、負荷をかけた際に静かとは言えないほどのファン音のする製品もありますが、N100 / N95を搭載するPCは低価格なうえに、省電力であることにより 静音であることも大きなメリット。
▼私がイチオシの「Beelink EQ12」。DDR5 メモリとPCIe SSDを搭載しています。価格重視なら、DDR4 メモリを搭載の「Beelink S12」「TRIGKEY G4(Amazonはこちら)」もよい製品です。
▼超小型ならこちらの「SkyBarium T-BOX Pro」がおすすめ。超小型でありつつも、Alt モードのUSB Type-C ポートを搭載し、USB Type-C ハブも付属しています。
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