今回 実機レビューする製品は、CPUにAMD Zen 3 アーキテクチャのRyzen 5 7430Uを搭載するミニPC「ACEMAGIC K1」です。セットモデルとしては、メモリ 16GB / SSD 512GB、メモリ 32GB / SSD 512GBの2つがありますが、後者のレビューとなります。
AMD Zen 3のCPUとしてはエントリークラスのCPUとなりますが、普段使いでは上位機と同様にサクサクと動作し、かつ静音性にも優れています。
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ACEMAGIC K1のスペック
スペックは下表となります。メモリ 16GBとメモリ32GBのモデルが販売されていますが、レビューする製品は後者です。標準装備のM.2 SSDはPCIe SSDではなく、SATA SSDであることに留意ください。
NiPoGi E3B 5700U ミニPC 実機レビュー、Ryzen 7 5700U、フル機能のUSB-Cを装備。メモリ、SSDの増設も確認してみた
CPU | AMD Ryzen 5 7430U、Zen 3、6コア 12スレッド、最大 4.3GHz |
GPU | AMD Radeon Graphics |
メモリ | 32GB DDR4-2666(16GB x 2)、2スロット、最大 64GB |
ストレージ | M.2 2280サイズ 512GB SATA SSD |
WiFi | WiFi6 対応 |
Bluetooth | 5.2 |
ポート類 | USB Type-C 映像出力対応、USB-A 3.2 Gen 2 x 2、USB-A 3.2 Gen 1 x 4、HDMI、DP、1GB RJ45 イーサネット、3.5mm オーディオジャック |
サイズ | 128.2 x 128.2 x 41mm |
OS | Windows 11 Pro |
▼前面に映像出力に対応のUSB Type-C ポートを備えています。USB-Aは合計 6ポートと多いことも特徴の一つです。なお、RJ45 有線LANポートは2.5Gではなく 1Gbpsです。
▼DDR4 メモリ、2280 サイズのM.2 SSDともに 2スロット。天板側に装備されています。なお、2つのM.2 SSD スロットともに、PCIe 3.0 SSDに対応しています。
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を掲載します。
▼Windows 11「設定」の「デバイスの仕様」と「Windowsの仕様」です。もちろん、スペック表どおりの AMD Ryzen 5 7430U、メモリ 32GB、OSはWindows 11 Proです。
以降の情報は、以下の記事にて紹介のフリーソフト「HWiNFO」から抽出しています。
HWiNFOの使い方、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフト。投稿数 約4万件のフォーラムも充実
▼システム概要の全体です。クリックで拡大できます。
▼上の画像からCPUの情報を拡大。AMD Ryzen 5 7430Uは、Zen 3 アーキテクチャ、7nm プロセス、TDP 15W、6コア 12スレッドです。
▼メモリ 32GBモデルのレビューですが、DDR4 16GB x 2のデュアルチャンネルでの動作です。
▼統合型のGPUは、AMD Radeon Vega。ゲーム向けのGPUではありませんが、インテル 同クラスのCPUに搭載の統合型GPUよりも高性能であり、普段使いとしては十分です。
▼メモリは「KINGSOTIN」のDDR4 16GB x 2。「KINGSOTIN」は、エントリー寄りのミニPCでの採用事例の多いブランドです。
▼2280 サイズのM.2 SSDは、PCIe接続ではなく、SATAです。ただし、PCIe 3.0のM.2 SSDに換装可能です。
Windows 11、ライセンスのチェック
Windows 11のライセンスを確認したところ、ボリュームライセンスではなく、OEM DM ライセンスであり安心。
▼コマンドプロンプトを起動し、最後に「slmgr/dli」と入力(コピペ)し、ライセンスの種類を確認します。
▼以下の画像のとおり、OEM DM Channelのライセンスであり安心。
外観のチェック
続いて、付属品と外観について記載します。樹脂製の筐体であるものの質感はわるくなく、少なくとも Alder Lake N100やTwin Lake N150のミニPCよりも ズッシリとした重み・重厚感があります。
▼マウスと並べて撮影しましたが、コンパクトな外箱です。
▼緩衝材は段ボールの簡易的なものですが、保護としては十分です。
▼他の多くのミニPCと同様に、傷つき防止のためにビニールで梱包されています。
▲ビニールの中央に注意書きとして「開封後の初期設定を早めるために、初期設定時にはWiFiや有線LANとの接続は避けましょう」とあります。
▼付属品は、VESA マウント・VESA マウント用ネジ、HDMI ケーブル、やや大きな分割式のAC アダプターです。
▼艶消しブラック、樹脂製の筐体です。油脂は付着しにくく、付着した場合も目立つことはありません。
▼同社およびサブブランドのNiPoGiの製品では、以下の写真のとおり、LAN ポートに黄色のシールが貼られており、前述のビニールの梱包の注意書きと同様に、「開封後の初期設定を早めるために、初期設定時にはWiFiや有線LANとの接続は避けましょう」とあります。
▼前面のポート類は左から、映像出力に対応のUSB Type-C、USB-A 3.2 x 2ポート、3.5mm ヘッドホンジャック、電源ボタン。電源ボタンは電源オンで白く点灯します。
▼背面ポートは左から、HDMI、DisplayPort、1Gbps RJ-45 有線LAN、USB-A 3.2 Gen 1 x 4ポート。USB ポートは前面も含めて 合計7ポートと多いことも特徴となります。
▲▼左右両サイドは同形状の通風孔のみ。双方から内部の熱が排出されます。PCに負荷をかけた場合、それなりの風量で熱が排出されます。
▲▼上の画像のとおり、底板側にCPUファンとヒートシンクが装備されており、底板にはファンに合わせた通風孔があります。底板側から冷気を取り込み、サイドに排出する仕様です。
▼あらためての全体像です。樹脂製の筐体ですが、前述のとおり、N100やN150のミニPCと比較すると重みがあります。
▼USB Type-C ポートから外部モニターへ接続し、使用中の様子です。電源オンで電源ボタンは白く点灯します。
内部の構成、SSDの増設
外枠を開けて内部の構成を確認し、M.2 SSDの空きスロットに、PCIe 3.0 SSDを増設してみました。メモリ・SSDスロットともに天板側にあり、底板を開いて即アクセスとはなりませんが、それほど時間をかけずにアクセスすることができます。
▼底板にあるゴム足を外したうえで、ゴム足裏にある4本のプラスネジを外します。
▼プロセスの写真は未掲載ですが、被さっている外枠を外すと メモリ・SSDスロットにアクセスできます。
▼メモリ・SSD スロットを拡大。メモリは16GB x 2の32GB、2280サイズのM.2 SSDはSATAの512GBです。中央が2280サイズのM.2 SSDの空きスロット。PCIe 3.0 / SATAの双方に対応しています。
▲前述のフリーソフト「HWiNFO」では、SATA SSDのブランドを検出できませんでしたが、「Rayson」ブランドとあります。
▼PCIe 3.0 x 4のM.2 SSDを増設しました。スクショの掲載は割愛しましたが、もちろん Windows 11にて認識しています。
ベンチマークスコア
実機で計測のベンチマークスコアを掲載します。ゲーム向けの製品ではないため、測定したソフトは、Geekbench 5/6、CINEBENCH R23、PCMARK 10、ドラクエベンチマーク、CrystalDiskMarkにとどめています。
なお、比較対象は以下の記事にて実機レビューの、AMD Ryzen 7 5700Uを搭載するミニPCです。Ryzen 7 5700UとRyzen 5 7430Uを搭載するミニPCは、同価格帯で販売されていることが多いですが、全般的に、Ryzen 5 7430Uは、Ryzen 7 5700Uよりも やや高いスコアです。

Geekbench 5
Geekbench 5のスコアは「シングルコア 1414、マルチコア 6491」。2つめの画像は Ryzen 7 5700Uのスコアですが、普段使いの体感レスポンスに直結するシングルコアのスコアは、それなりの差があります。ちなみに、Alder Lake N100 / Twin Lake N150のスコアは 1,000弱です。
▼以下の記事にて、これまでに実機で計測した Geekbench 5のスコアを一覧化しています。このなか、普段使いでの体感レスポンスに直結するシングルコアのスコアは、インテル CPUではCore i7-1165G7、AMDでは Ryzen 7 6800Uと同水準です。
PC 実機で計測、Geekbench CPU ベンチマークスコアの一覧、サクサクと動作するスコアの指標
Geekbench 6
Geekbench 6のスコアは「シングルコア 1768、マルチコア 6715」。2つめのRyzen 7 5700Uよりも高いスコアですが、Geekbench 5と比較すると、差は大きくありません。
なお、Geekbench 5と6では、スコアの評価項目とスコア判定のベースとなるPCのスペックが異なるため、Geekbench 6は5よりも高いスコアとなります。
CINEBENCH R23
CINEBENCH R23のスコアは「シングルコア 1233、マルチコア 6508」。シングルコアはRyzen 7 5700Uと同水準、マルチコアはRyzen 7 5700Uが高いスコアと、Geekbenchと異なる傾向です。何度か計測しましたが、同水準のスコアでした。
▼以下の記事にて、これまでに実機で計測した CINEBENCH R23のスコアを一覧化しています。このなか、普段使いでの体感レスポンスに直結するシングルコアのスコアは、インテル CPUではCore i7-1165G7より やや低いスコアです。
CINEBENCH R23、ミニPCやノートPC 35製品で計測のスコア一覧。キビキビ動作のスコアの指標
PCMARK 10
PCMARK 10の総合スコアは 4,647。オフィスソフトでの快適さの指標は、Productivityのスコア 4500ですが、本製品のスコアは 8,323と大きく上回っています。
2つめの画像のRyzen 7 5700Uのスコアが 7,290ですので、体感できるほどではありませんが、それなりのスコア差があります。
ドラクエベンチマーク
一般用途向けのGPUですので、ゲーム関連のベンチマークは、軽めのドラクエベンチマークのみの計測です。
標準品質、FHDでの計測結果は「とても快適、9671」。CPU ベンチマークが同水準のインテル 統合型GPUと比較すると高いスコアです。これまでに掲載の他のベンチマークスコアと同様に、2つめのRyzen 7 5700Uよりも やや高いスコアです。
CrystalDiskMark
CrystalDiskMarkでのSATA SSDの読み書き速度です。Read、Writeともに、SATA SSDとしては一般的なスコアです。PCIe 4.0 SSDと比較すると、Windows 11の起動後はそれほど相違を感じない一方で、Windows 11の起動は、数秒遅れる感覚です。
体感レスポンス
記事や画像の編集、Web サイトのブラウジング、FHD クラスの動画視聴、Excel などの在宅勤務における体感レスポンスを記載します。全般的にこれらのライトユースでは、上位機と大きな相違を感じることなく、サクサクと動作します。
- 上記の用途では、Alder Lake N100やTwin Lake N150のPCにおいても遅さを感じることなく動作しますが、Ryzen 5 7430Uの本製品では、大きな差ではないものの、無理なく よりスムーズに動作するイメージです。
- 上位のRyzen 9 8945HSなどと比較すると、多少 キビキビ感に欠けると感じることがあります。ただし、大きく体感できほどのレスポンスの相違ではありません。
- Windows 11の起動において、読み書き 7000MB/s前後のSSDよりも 数秒遅れますが、待たされ感もなく 十分に実用的です。
CPU温度、ファン音量のチェック
当初、他のミニPCよりもファン音量が大きかったのですが、Windows 11 更新前後のバックグラウンドプロセスで負荷がかかっているためでした。上記処理の終了後、ライトユースでは静音、負荷をかけた際には一般的なファン音量です。また、CPU温度はやや高めに推移することもありますが、こちらも許容範囲内です。
▼iPhone アプリ「デジベル X」にて計測の、CINEBENCH R23にてベンチマーク計測・負荷をかけた際のファン音量です。それほど大きくない音量であり、ベンチ測定後は即静音となります。
▼前述のフリーソフト「HWiNFO」で計測のCPU温度です。上の画像は通常使用時ですが 、最大でも74℃におさまっています。下の画像は「CINEBENCH R23」にて負荷をかけた際の温度ですが、最大温度は 84℃と、低くはないものの 許容範囲の温度です。
USB Type-Cのチェック
外部モニターへの映像出力のみの確認となりますが、前面に搭載のUSB Type-Cについて記載します。下の画像は、USB Type-C ポート経由にて、27インチ 4K モニターに接続時の「設定」画面ですが、当然ながらも4K 解像度での出力となり、安定動作しています。
まとめ
AMD Zen 3 アーキテクチャのRyzen 5 7430Uを搭載するミニPC「ACEMAGIC K1」の実機レビュー記事でした。このクラスのCPUとなると、普段使いでは上位のCPUを搭載するPCと遜色ないほどに、サクサクと動作します。
標準装備のM.2 SSDはPCIe SSDではなく SATA SSDとなりますが、PCIe 3.0 SSDとの比較では 大きく体感できるほどではなく、実用性を損なうものではありません。
製品のポイントをあらためて記載すると以下となり、普段使いでサクサク動作の低価格PCをお探しの方には候補となる製品です。
- 筐体は樹脂製となりますが、N100やN150のミニPCよりも ズッシリとした重厚感あり。
- Windows 11 Proは、OEM DM ライセンスであり安心。
- ブラウザ、動画視聴、在宅勤務などの普段使いでは、上位機と遜色なくサクサクと動作。
- USB Type-Cでの4K 外部モニターへの映像出力を確認済。
- メモリ、SSDともに2スロット、スロットへのアクセスも比較的 簡単です。
- CPUの温度はやや高めに推移することがあるものの、許容範囲の温度。
- 負荷をかけた際には ファン音量は大きくなるものの、こちらも許容範囲となり、通常使用時には静音。
- 標準装備のM.2 SSDはPCIe 接続ではなく SATA。ただし、一般的なPCIe 3.0 SSDと比較しても、大きく体感できるものではありません。
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