今回レビューする製品は、Ryzen 9 6900HXを搭載するミニPC「MINISFORUM UM690L Slim」です。メモリはLPDDR5 32GB オンボード、SSDはPCIe 4.0 500GB、USB4ポートを搭載し、ハインエンド寄りのミドルレンジの製品です。
CPU ベンチマークスコアは、デスクトップ向けのRyzen 7 5700Xと同水準となり、在宅勤務などの普段使いでは 上位機と遜色なく動作するうえに、ファン音量もほとんど気にならず、作業に集中することができます。
レビューする製品はこちら
MINISFORUM UM690L Slimのスペック
スペックは下表となります。MINISFORUM 公式ストアでは、「UM690 Slim」が販売中ですが、末尾「L」となる本製品はAmazonでの販売です。型番からしても派生モデルですが、Amazonの販売情報で確認できないサイズにおいては、公式ストアの「UM690 Slim」のものを引用しています。
CPU | AMD Ryzen 9 6900HX、Zen 3+ アーキテクチャ、8コア 16スレッド、最大 4.9GHz |
GPU | AMD Radeon 680M |
メモリ | LPDDR5 6400 32GB オンボード |
ストレージ | M.2 2280 PCIe 4.0 SSD 500GB、M.2 PCIe 4.0 SSDを増設可能 |
WiFi | WiFi 6E対応 |
Bluetooth | 5.3 |
ポート類 | HDMI、DisplayPort、USB4、USB A 3.2 x 2、USB A 2.0 x 2、有線LAN |
サイズ | 126.8 × 130 × 50mm |
OS | Windows 11 Pro |
▼USB4ポートは背面に配置されています。映像出力は、HDMI / DisplayPort / USB4の3系統。同社のハイエンド機に搭載事例の多いOCulink ポートは未搭載です。
▼先日、以下の記事にて、Ryzen 5 7640HSを搭載する「UM760 Slim」を実機レビューしましたが、同筐体を採用しています。
MINISFORUM UM760 Slim 実機レビュー、Ryzen 5 7640HSを搭載し5万円台、上位機と同水準で動作のミニPC
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を掲載します。
▼CPUは、Zen 3+ アーキテクチャのAMD Ryzen 9 6900HX、メモリは32GB オンボード。
OSはWindows 11 Pro。MINSFORUMのミニPCでは、一時期 OSがWindows 11 ProからHomeへシフトしたことがありましたが、最近(2025年5月現在)では Proに戻っているようです。
HWiNFOの使い方、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフト。投稿数 約4万件のフォーラムも充実
フリーソフト「HWiNFO」利用による Windows PC バッテリー劣化度の表示事例
▲▼上の記事にて掲載のフリーソフト「HWiNFO」から抽出のシステムの概要です。クリックにて拡大できます。当アプリは、システム情報の抽出のみならず、CPU温度やファン回転数、ノートPCにおいては バッテリーの劣化度も確認可能な便利なアプリです。
▼Zen 3+ アーキテクチャ AMD Ryzen 9 6900HXは、6nm プロセス、TDP 45W、8コア 16スレッド、L3 キャッシュ 16MB
▼メモリは LPDDR5 32GB オンボード、クアッドチャンネルでの動作です。
▼GPUは統合型のAMD Radeon 680M
▲▼500GB PCIe 4.0 SSDは、Crucialの型番「CT500P3PSSD8」、一般的なモデル名としては Crucial P3 Plusです。後のベンチマークスコアの段落で記載していますが、Readと比較し Writeの速度がやや控えめです。
▼オンボードとなりますが、LPDDR5 32GBのメモリ情報です。Micronのチップを搭載しています。
Windows 11、ライセンスのチェック
MINISFORUMのミニPCにおけるライセンスは、ボリュームライセンスではないことが確実ですが、念のために確認してみました。
▼コマンドプロンプトを開き、「slmgr/dli」を入力(コピペ)、エンターキーを押下することにより確認します。結果、OEM(DSP)ライセンスであり安心。
外観と付属品のチェック
外観と付属品について記載します。
▼同社のエントリーからミドルレンジクラスのミニPCに多い、質素な作りの外箱です。豪華な外箱でコストをかけるよりも、このような質素な外箱で十分かと思います。
▲▼上は前述の「UM760 Slim」の内部ですが、保護用の緩衝材も変更となっています。
▲▼これまで実機レビューした同社のミニPCは、ビニールで梱包されていましたが 紙の梱包です。ビニールの梱包では やや剥がしにくい(元に戻しにくい)こともあり、紙の梱包がより良いとも思います。
▼付属品は左上から、電源コード、HDMI ケーブル、電源、予備のゴム足、VESA ブラケット、保証書・簡易的なマニュアルです。電源コードのプラグ側は やや太いケーブルです。
▼電源とケーブルを拡大。
▼前面は左から、電源ボタン、USB-A 3.2 x 2ポート、3.5mm オーディオジャック、CMOS クリア。この数年、私はCMOS クリアを行ったことがないのですが、同機能を備えていると安心です。
▼両サイドには大きな通風孔があります。
▼背面のポート類は左から、電源、2.5G 有線LAN、HDMI、USB4、DisplayPort、USB-A 2.0 x 2。上半分に大きなヒートシンクがありますが、内部の熱はこちらから排出されます。
後の段落に記載していますが、負荷をかけた場合にも、ファンの音量は大きくなく、熱風の排出もそれほど多くないです。
▼底板に、SSDとメモリ冷却用のブラケットとファンが備わっています。大きな通風孔があり、冷却対応も十分に考慮されています。
なお、内部(SSDスロット)へのアクセスは、四隅のねじを外して底板を開けることにより行います。
▼全体像です。樹脂製の筐体ですが、N100 / N150を搭載するミニPCのような安っぽさはなく、艶消しブラックの塗装も含めて上質です。
▼背面からの構成も含めて、オーソドックスなミニPCのたたずまいであり、シックな塗装も含めて、オフィスの設置においても違和感などはありません。
▼欲を言えば、前面にUSB-Cポートが備わっていると 尚よかったように思います。
内部構成のチェック、SSDの増設手順
PCIe 4.0 SSDの空きスロットを備えていますので、内部構成のチェックも兼ねて SSDを増設してみました。
▼底板の四隅のゴム足を取り外すと(両面テープで装着されています)、ネジが露出します。
▼ゴム足を取り外しました。やや強力な両面テープで取り付けられており、左のゴム足のように 一部が底板に残ることもあるので注意が必要です。
▼長いネジで装着されています。
▼底板裏にファンが取り付けられており、ファンのケーブルは基盤に接続されているため、底板を勢いよく取り外すことのないよう、注意が必要です。
なお、2280サイズのM.2 SSDは、冷却パッドと冷却パッドが取り付けられている 金属の冷却板を通じて冷やす仕様です。
▼本体側を拡大。中央やや左のヒートシンクは、オンボードのメモリなどの冷却用と思われます。
▼底板のシリコンパッド、ファン周りを拡大。底板、本体の外枠ともに樹脂製です。
▲▼「システム情報」の段落で記載のとおり、標準装備の500GB SSDは CrucialのP3 Plusです。
▼手元にたまたま 標準装備と同じ Crucial P3 Plus SSDが転がっていたため、これを増設しました。
▼当然ながらも、増設したSSDは「ディスクの管理」にて、しっかりと認識しています。
▼増設したSSDの情報です。
▼増設したSSDの CrystalDiskMarkでの読み書き速度です。後の段落の「ベンチマークスコア」で記載していますが、標準装備・増設したSSDともに、CrucialのP3 Plus 500GBですが、読み書き速度が多少異なります(増設したSSDが速い)。
ベンチマークスコア
実機で計測のベンチマークスコアを掲載します。比較対象は、以下の AMD Ryzen 5 7640HSを搭載する同社の「UM760 Slim」、Ryzen 7 5700Xの自作PCです。
後者を比較対象としたのは、パンチマークスコアと普段使いの体感レスポンスが ほぼ同じであるためです。
MINISFORUM UM760 Slim 実機レビュー、Ryzen 5 7640HSを搭載し5万円台、上位機と同水準で動作のミニPC
Ryzen 7 5700Xの自作PC、CPUファン・グラボ・SSDなど、私が使用のパーツ類とベンチスコア
Geekbench 5
Geekbench 5のスコアは「シングルコア 1,573、マルチコア 9,358」。2つめは Ryzen 5 7640HSを搭載の「MINISFORUM UM760 Slim」、3つめはRyzen 7 5700Xの自作PCスコアです(以降の他のベンチソフトのスコアも同じ並び)。
Ryzen 9 6900HXは Ryzen 7 5700Xと同水準ですが、普段使いの体感レスポンスに直結するシングルコアのスコアは、Ryzen 5 7640HSと大きな差があります。
▼以下の記事にて、これまでに実機レビューしたPCで計測の、Geekbench 5のスコアを一覧化しています。このなか、シングルコアのスコアは、インテル CPUでは Core i5-1235Uや Core i7-11390H、Core Ultra 5 125Uと同水準です。
PC 実機で計測、Geekbench CPU ベンチマークスコアの一覧、サクサクと動作するスコアの指標
Geekbench 6
Geekbench 6のスコアは「シングルコア 2,065、マルチコア 9,779」。こちらも 3つめの Ryzen 7 5700Xと同水準のスコアです。
CINEBENCH R23
CINEBENCH R23のスコアは「シングルコア 1,577、マルチコア 13,440」。こちらも Geekbench 5 / 6と同様に、Ryzen 7 5700Xと同水準のスコアです。
Ryzen 7 5700Xはデスクトップ向けであり、自作PCなどではグラボを搭載できるメリットはありますが、(Ryzen 7 5700Xのファンの構成によりますが)静音性では本製品が優れています。
PCMARK 10
PCMARK 10の総合スコアは 6,095となり、2つめのRyzen 5 7640HSと同水準です。Productivityはオフィスソフトをメインとした指標となりますが、公式サイトでのオフィスソフト使用の指標 4,500に対して 本製品は7,697。指標を大きく上回っており、オフィスソフトなどのライトユースでは、上位機とそん色なく 快適に動作します。
ドラクエベンチマーク
統合型GPUのAMD Radeon 680Mはゲーム向けではないため、軽めのゲーム用ベンチソフト「ドラクエベンチマーク」のみの計測です。FHDの標準画質での結果は「とても快適、スコア 8,947」。
CrystalDiskMark
Crucialの型番「CT500P3PSSD8(P3 Plus)」、500GB PCIe 4.0 SSDの読み書き速度です。CrystalDiskMarkによる 瞬間最大速度的なスコアですが、Readと比較すると Writeが控えめなスコアです(何度か計測しましたが、同水準のスコアでした)。ただし、普段使いでの体感に影響を与えるものではありません。
▼こちらのスコアは増設した「Crucial P3 Plus」のスコア。たまたま、同じモデル名のSSDが手元にあり増設しまさたが、特にWriteのスコアが異なります。
同SSDはロットにより、搭載するチップ、QLC / TLCのNANDの種類が異なるとの情報もあり、この影響によるものと思います。
体感レスポンス
実機を約10日間使用しての体感レスポンスを記載します。ベンチマークスコアの段落で記載のとおり、概ね Ryzen 7 5700Xと同水準のベンチマークスコアとなり、体感レスポンスも同じ、あるいは本製品が僅かによいように感じます。
- 記事の編集、Web サイトのブラウジング、オフィスソフトなどの普段使いでは、M4 Mac miniや 上位のWindows PCと遜色ないレスポンスです。
- 上位のPCと比較した場合、上記の用途では、稀にキビキビ感に欠けるかもと感じる程度。
- 例えば、16コア 32スレッドのRyzen 9 7945HXを搭載するPCと比較した場合、交互に使用しない限りは相違を感じない程度です。
- Ryzen 5 5700Xを搭載する自作PCとの比較では、普段使いの体感レスポンスは同程度ですが、静音なことによる作業効率は本製品が優れています。
- なお、本製品の統合型GPUはゲーム向けではないため、グラボを接続できることによるゲーミングでは Ryzen 5 5700Xが優位です。
- SSDのWrite側の速度は控えめですが、体感できるものはありません。控えめと言っても 約2000MB/sですので、一般的には十分です。
USB4のチェック
背面にUSB4ポートを装備している本製品ですので、映像出力について確認してみました。なお、通常は Thunderbolt 3/4対応のSSD ケースを利用し SSDの読み書きを確認、さらに、外付けGPUボックスに接続して動作確認を行うのですが、SSD ケース・GPUボックスともに 他で使用中のために割愛します。
▲▼以下の記事にて実機レビューの、27インチ 4K モニターへ USB4経由で接続しての確認です。当然ながらも 上の画像のとおり、4Kとして認識し、安定動作しています。
27インチ 4K モニター、PHILIPS 27E1N5900E 実機レビュー。明るさ、発色、USB-C PDなどのバランスよく、Macとのマッチングも良好
CPU温度、ファンの音量のチェック
負荷をかけた際のCPU温度とファンの音量について記載します。室温 23度前後での確認ですが、記事の編集、Web サイトのブラウジング、オフィスソフトなどの普段使い時には極めて静音。ファンの音量には 全くと言えるほどに気になりません。また、負荷をかけた際には、ファンの回転数は上がるものの、CPU温度・ファンの音量ともに許容範囲です。
▲▼こちらの記事にて掲載のフリーソフト「HWiNFO」で計測のCPU温度です。CINEBENCH R23にて CPU使用率を100%とした際のCPU 最大温度は86℃。瞬間的に 90℃に達することもありますが、許容範囲の温度です。
▼普段使い時には 50℃未満で推移し、よく冷えています。
▼上記のCPU 使用率 100%とした際のファン音量(iPhone アプリ「デジベル X」の利用)は、平均 38dB。一般的なノートPCにて負荷をかけた際と同水準の音量であり、また、負荷が下がると即 静音となるために 気になるものではありません。
まとめ
CPUにAMD Ryzen 9 6900HX、メモリ LPDDR5 32GB オンボード、PCIe 4.0 500GB SSD、USB4ポートを搭載するミニPC「MINISFORUM UM690L Slim」の実機レビュー記事でした。
あらためて特徴を記載すると以下となります。2025年5月25日現在のAmazon 価格は 61,993円。ゲーミング向け、AI 用途向けではありませんが、普段使いでは上位機と遜色なく動作する静音仕様。また、USB4による拡張性も備えており、在宅勤務などでは今後数年間、メインPCとして使用することができます。
- エントリークラスのPCと比較すると、剛性も確保した上質の筐体です。
- 背面にUSB4ポートを備え、外付けGPU ボックスの接続などの拡張性も兼ね備えています。ただし、OCulink ポートは未搭載です。
- PCIe 4.0 SSDの空きスロットを備えており、底板を開けることにより 簡単に増設可能です。
- ベンチマークスコア、普段使いの体感レスポンスともに、AMD Ryzen 7 5700Xと同水準。普段使いでは、私がメイン利用のM4 Mac miniや上位のWindows 11 PCと同様に サクサクと動作します。
- 通常利用においては、CPUファンとシステムファンの音量は気にならず、作業に集中することができます。
- なお、負荷をかけた際には、ファンの回転数・音量ともに上昇しますが、ノートPCの高負荷時と同水準の音量です」。
コメント