Amazonでも販売している「MINISFORUM」のミニPC。ミニPC専門ブランドとして、エントリークラスからハイエンドまで多くのランナップがありますが、Indiegogoサイトにて 10月14日からクラウドファンディングを開始の製品が、インテル 第10世代のCore i3-1005G1を搭載する「X35G」。NVMe対応のPCIe SSDを標準装備するほか、Optaneメモリ対応であることも特徴の一つ。
この「X35G」を、MINISFORUMさんよりレビュー用にサンプル提供いただきましたので、外観、ベンチマークスコア、使用感などを記載します。
製品を受領する前まではそのスペックに注目していましたが、アルミ製の外観もかなりの質感の高さ。手元には10台以上のミニPCが転がっていますが、デザインと色合いも含めた質感の高さはダントツです。なお、クラウドファンディングでの価格は349ドルからとあり、Core i3-1005G1 / メモリ 16GB / PCIe SSD 搭載機としてはコスパ度も抜群です。
MINISFORUM X35Gのスペック
ミニPCとしてはハイエンド寄りのCore i3-1005G1を搭載することを特徴の一つとする「X35G」。メモリは16GB オンボード、NVMe 対応のPCIe SSDにも対応していますが、そのスペックは以下となります。
CPU | Core i3 1005G1、2コア4スレッド、最大 3.4 GHz |
GPU | Intel UHD Graphics |
メモリ | 16GB DDR4 3200MHz 16GB |
ストレージ | M.2 2280 NVME SSD (PCIe 3.0 4X)、M.2 2280 SATA SSD および 2.5インチ SATA SSDを増設可能 |
WiFi | WIFI6 AX200 |
Bluetooth | 5.1 |
ポート類 | USB 3.1 × 2 ,USB 2.0 × 2 ,USB-C(フル機能)、有線LAN x 2、HDMI、Display Port |
サイズ | 136.5 × 121.5 × 40.5mm 、500g |
OS | Windows 10 Pro |
なお、MINISFORUMのプレゼン情報に記載のGeekbench 5 CPUベンチマークのスコアは、下表のとおり概ね Core i7-8565Uと同水準。後段の実機ベンチマークのスコアでも同様の結果となっています。
▼なお、MINISFORUM 公式サイトに以下の画面がありますが、赤の矢印をクリックすると詳細スペックやベンチマーク情報を確認できます(PDF Readerが必要です)。
実機のシステム情報
続いて上記スペックの裏付けとなる、実機から抽出のシステム情報です。他のPCレビューと同じく、Windows 10の設定画面とフリーソフト「HWiNFO(HWiNFO、Win 10のデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフトの概要)」から抽出しています。
▼Windows 10 設定画面のデバイスとWindowsの仕様。Core i3 1005G1、メモリ 16GB、Windows 10 Proとあります。
▼左上のCPUにCore i3-0805G1とありますが、上記スペックどおりにCore i3-1005G1です。
▲右下に、メモリ 16GBは(8GB x 2の)デュアルチャンネル、OSはWindows 10 Proと記載。
▼「HWiNFO」では、SSDやメモリの製造元・型番まで確認できることが多いのですが、X35Gでは確認できず。
付属品
MINISFORUMのミニPCに共通する事項(以下のRyzen 3 3300Uのレビュー記事を参照)として、丁寧な梱包にケーブル・VESAマウントのブラケットなど付属品が漏れなく付属していることがありますが、X35Gの場合も同様です。
▼立派な外箱は、おそらくは上の記事に掲載のUM300と共通。先日レビューした大柄でハイスペックのH31Gは別として、標準サイズのミニPCの外箱は共有化されているようです。
▼こちらもUM300と同様に、ミニPCとしては珍しく本体が丁寧に保護材に収納されています。
▼VESAマウントのブラケットに、コンパクトなUS仕様(日本仕様)のACアダプター 。
▼HDMIケーブル、Display Portケーブルに2.5インチ HDD / SSDの接続ケーブル。
▼2.5インチの接続ケーブルは、以下の画像のとおりにHDD / SSDと接続できます(当然ですが)。
外観
天板と側板が分離せずに繋がっていること、角に丸みがあること、シックな色合いであることの恩恵もあり、デザイン・質感の高さが際立ちます。冒頭に記載のとおり、手元にある10台以上のミニPCのなかでも、その質感の高さはダントツです。この質感の高さと、シックな色合い、そして後述の静音性とレスポンスのよさは、オフィスでもマッチします。
▼ポート類は左から、マイク、電源ボタン、USB Type-C、USB 3.0 × 2、リセットボタン。なお、マイクもしっかりと機能することを確認済です。
▲ボディはアルミ製です。
▼裏面のポート類は、USB 2.0 x 2、有線LAN x 2、HDMI、Display Port、盗難防止ロックに電源。
▼左サイドは大きな開口部にカードスロットとイヤホンジャック
▼右サイドは通風孔のみです。後段の内部の構成で明らかですが、この通風孔にヒートシンク・ファンが繋がっており、こちらから熱を排出するしくみ。
▼天板のロゴも凝っています。MINISFORUMのロゴはプリント印字のようですが、ロゴはプレート型のものが組み込まれています。
▲角の丸みがよくわかりますが、その丸みと色合いから、以下のMac miniのような雰囲気も醸し出しています。ちなみに、サイズはX35Gの136.5 × 121.5 × 40.5mmに対して、Mac miniは197 x 197 x 36mm。X35Gがよりコンパクト。
▼背面は艶消し黒のアルミ製。丸みを帯びた分離式の底板など、こちらのデザインも抜かりはありません。
他のミニPCとの比較
X35Gのサイズは「136.5 × 121.5 × 40.5mm」。ミニPCとしては縦・横は一般的ですが、高さはやや低いもの。サイズ感やデザインを以下のミニPCと比較してみました。リンク先は、それぞれの製品の実機レビュー記事です。
MINISFORUM UM300
MINISFORUM UM300 実機レビュー、Ryzen 3 3300U搭載でベンチマークはCore i3-8145U以上、静音仕様のミニPC
NVISEN Y-MU01
実機レビュー、Core i7-8565U搭載のミニPCベアボーン「NVISEN (EGLOBAL) Y-MU01」。PCIe SSD取付によりさらに快速に
BMAX B4 Pro
BMAX B4 Pro 実機レビュー、Core i3-8145UにPCIe SSD、Win 10 Proの快適仕様。4万円未満でメイン利用可能なミニPC)
MINISFORUM H31G
MINISFORUM H31G 実機レビュー、Core i5 9500F,Geforce GTX1050 Ti搭載の驚愕ミニPCは、ボディの造りと冷却も万全)
▼MINISFORUM UM300との比較。
AMD Ryzen 3 3300Uを搭載するUM300は、ワンタッチで開く天板などの利便性を高めたミニPCとなり、一般的にRyzenの場合にはその発熱が懸念されるのですが、かなりの静音仕様です。体感レスポンス派と本製品と同水準、あるいは僅かに劣る程度。
▼NVISEN Y-MU01との比較。
Y-MU01のボディはスチール製で重厚感があるのですが、おそらくは汎用のケースを用いたものであるのに対し、X35Gは専用設計のもの。
▼BMAX B4 Proとの比較。
B4 ProはミニPCとしては標準的な形状であり、こちらとの比較が最も適切。スチール製のB4 Proの質感も高いのですが、デザインとしてはロゴも含めてX35Gがいいですね。
▼UM300の奥行はX35Gよりも長いものの、横幅はほぼ同じ。
▼下のMINISFORUM H31Gは、CPUにデスクトップ向けのCore i5 9500F、GPUにGeforce GTX1050 Tiを搭載し、ミニPCのスペックとしては別格。冷却対応のためにファンを2つ装備し、ボディも大きくなっています。
内部の構成
ミニPCに限らず、デジギア全般的にネジがあると外してみたくなる私ですが、底板を外して内部の状況を確認してみました。
▼中ほどにある4つのゴム足を外すとネジが露出しますので、これを外します。
▼MINISFORUMのミニPCは、他の製品もさりげない気配りがあるのですが、一般的なミニPCではゴム足は両面テープで固定されているのに対し、ゴム足の突起により固定されています。両面テープのように、一度取り外すと粘着が弱まり外れるような心配もありません。
▼底板はプラスチック製。底板の裏面の写真は未掲載ですが何もなく、2.5インチ HDD / SSDの取付スペースはありません。
▲グレイの外枠は1枚もののアルミ製。
▼パーツ保護のためか、黒のパンチング加工された板で覆われています。これは4隅の奥まったところにあるネジで固定されています。
▲想像よりも小さなCPUファン。一般的に、小さなファンの場合には高回転で風流を確保するために、その音量が大きくなりがちですが、X35GのCPUファンは極めて静か。ファンの上のパーツにはコードが繋がっていますが、WiFi / Bluetoothチップから接続されたアンテナです。
▼マザーボードが露わになりました。CPUファンからシルバーのフィンを経由して外部へ排熱するしくみ。
▲ファンの右側にあるのは、WiFi / Bluetooth カード。上述のとおり、アンテナは右の黒の板に繋がっていますが、ケーブルが抜けやすいので注意(元に戻しましたが、抜けてしまいました)。
ファンの下にある黒の2つのチップは、オンボードのメモリ(8GB x 2)。ユーザーでの換装・増設はできません。
▼前方斜めより。ファンの下に銅板があることが確認できます。
▲2.5インチ SATAポートを確認しようと(上の写真で見える面にはなし)、マザーボードを固定するネジを外してみたのですが、はめ込みの精度・建付けがよいためか、ポート類が外枠に引っ掛かり、簡単には外れそうにありません。今後、ゆっくりと試してみて別記事にて記載します。
▼こちらはプレゼン情報に掲載の画像ですが、上の写真の背面にSATA M.2 SSDの空きポートがあり、画像下の青の矢印の部分が、2.5インチ SATAケーブルの接続先です。2.5インチ SSD / HDDは天板の裏に取り付けるしくみ。マザーボードを完全に取り外す必要がありますが、40.5mmの高さによく収めたものだと感心します。
ベンチマークスコア
3DMarkとPCMark 10が、Steam サイトとSteam アプリの関係でインストールできず(ダウンロード中にフリーズ)、Geekbench 5、CINEBENCH R20、ドラクエベンチマーク、CrystalDiskMarkのみの計測です。
なお、今回はOptaneメモリを試さず、また、TDP Unlockも可能、メモリの周波数を抑えているようであり、今後 これらを開放したうえで再計測してみます。この場合、ベンチマークスコアは向上するはず。
▼Geekbench 5のCPUベンチマークスコア。下は比較対象のCore i7-8565U(上で紹介のNVISEN Y-MU01に搭載)。概ね、第8世代モバイル向けのハイエンド Core i7-8565U水準と言えるでしょう。
▼CINEBENCH R20のスコア。
ミドルレンジクラスのCPUの場合には、結果を見てガッカリすることが多いために計測しないのですが、Single Coreのスコアはランキング上位に食い込んでいます(ただし、グラフの比較対象機がやや古い)。
▼ゲーム系のベンチマークでも軽めのドラクエベンチマークのスコアは「9911 とても快適」。下のCore i7-8565Uよりもやや優位です。
▼ベンチマーク計測時のCPU温度は、最大 85℃。低くはないですが、ベンチマーク時ほどに負荷をかけることは多くないはずのため、大きな課題ではありません。
▼CrystalDiskMark v7でのPCIe SSDのスコア。
2枚目の画像はMINISFORUM H31Gのスコアですが、同水準となっています。Amazonなどで販売のPCIe SSDはRead / Writeともに3000越えとなる製品もあるなか控えめなスコアですが、体感的に大きく相違を感じるものではなく、また、その発熱への懸念からあえて抑えているように思います。
体感レスポンス
ベンチマークを計測のうえ、また、いつもどおりに、記事の編集や、画像編集、動画視聴、オフィスソフトなどで、1週間ほど使用してみましたが、体感的にはベンチマークが同水準のCore i7-8565Uと同水準。私はゲームは行わないのですが、軽めのゲームなら十分に動作することでしょう。
- PCIe SSDにより、Windows 10の起動や終了は速く、ベンチマークは他のPCIe SSDよりも控えめですが、体感的には差を感じません。
- 他の第8世代のCPU搭載機と同じコメントになってしまいますが、上記のライトユースではかなり快適。Webサイトの画像表示やタブの切替も、切り替えた瞬間に即表示されるイメージ。もはや、Gemini LakeなどのエントリーPCには戻れません。
- 大量データのExcelやAccessもサクサクと動作します。PCIe SSDやデュアルチャンネルのメモリの恩恵もありますが、会社の第4世代 デスクトップ用のCore i7よりも快適に動作。
ファンの音量、発熱
X35Gは静音であることも特徴の一つ。通常時、ベンチマークで負荷をかけた場合にも、CPUファンの音量はほとんど気にならず、かなり静かなものです。
- Windows 10の起動時には、通常時よりも大きめの音量(大きめといっても静かです)となることもあり。
- 起動後のWebサイトの参照などの通常利用では、低い音が微かに聞こえる程度で、全くと言ってよいほどに気にならず。
- ベンチマークで負荷をかけた際にも、通常時よりもやや大きくなる程度で、この場合にも静かなものです。
- ベンチマーク時のボディは、ほんのりと温もりを感じる程度。同水準のミニPCでは、上述のBMAX B4 Proも静かですが、ボディの熱はX35Gがより抑えられています。これは、BMAX B4 Proのボディがスチール製であるのに対し、X35Gはアルミ製であることも影響していると思います。
まとめ
第10世代のCore i3-1005G1、メモリ 16GB、PCIe SSDを標準装備し、シックな色合いで質感の高いボディ、ファンの音量も全く気にならない静音性と、多くのミニPCを操作してきたなかで、ミドル~ハイエンド寄りのミニPCとしてはベストな製品と言えそうです。クラウドファンディングの価格も349ドルと、かなりのコスパの高さです。クラウドファンディングを経て、通常の販売価格は400ドル前後と予想しますが、人気製品となりそうな予感です。
コメント