今回レビューする製品は、CPUにAMD Ryzen 7 5700Uを搭載するミニPC「NiPoGi E3B」です。メモリ 16GBにSSD 512GBを搭載し、フル機能のUSB Type-C ポートも装備しています。
通販の製品情報にないメリットとして、内部にスチールの冷却板を装備し、エントリークラスのミニPCの筐体と異なり、剛性も確保しています。
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NiPoGi E3B、Ryzen 7 5700U モデル、Amazon
NiPoGi E3Bのスペック
スペックは下表となりますが、16GBのメモリは、8GB x 2の16GBではなく、16GB 1枚のシングルチャンネル(空きスロットあり)、標準装備のSSDはPCIeではなくSATAです。ただし、SATA / PCIe 3.0 SSDの双方に対応する空きスロットを備えています。
なお、「NiPoGi E3B」には、AMD Ryzen 7 5700Uを搭載するモデルのほか、Ryzen 5 7430Uを搭載するモデルがありますが、今回レビューするのは前者です。
CPU | AMD Ryzen 7 5700U、Zen 2、8コア 16スレッド、最大 4.3GHz |
GPU | AMD Radeon Vega |
メモリ | 16GB DDR4-3200、2スロット、最大 64GB |
ストレージ | 512GB SATA SSD、M.2 SATA あるいはPCIe 3.0 SSDを増設可能(空きスロットあり) |
WiFi | WiFi6 対応 |
Bluetooth | 5.2 |
ポート類 | USB Type-C 映像出力対応、USB-A 3.2 x 6、HDMI、DP、RJ45 イーサネット、3.5mm オーディオジャック |
サイズ | 12.8 x 12.8 x 4.13cm |
OS | Windows 11 Pro |
▼映像出力は、HDMI / DP / USB Type-C ポートの3系統、USB-A 3.2 ポートを6個装備していることもメリットとなります。
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を掲載します。
▼Windows 11「設定」の「デバイスの仕様」と「Windowsの仕様」より。製品仕様どおりに、CPUは AMD Ryzen 7 5700U、メモリは16GB、OSは Windows 11 Pro。後の段落にて記載していますが、Windows 11 Proは OEM ライセンスです。
HWiNFOの使い方、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフト。投稿数 約4万件のフォーラムも充実
フリーソフト「HWiNFO」利用による Windows PC バッテリー劣化度の表示事例
▲▼上の記事にて紹介のフリーソフト「HWiNFO」から抽出のシステムの概要です。クリックにより拡大できます。
▼上の画像のうち、CPUの項目を拡大。AMD Ryzen 7 5700Uは、Zen 2 アーキテクチャ、8コア 16スレッド、7nm プロセス、TDP 15W
▼メモリは 8GB x 2の16GBと思いきや、DDR4 16GBの1枚、シングルチャンネルでの動作です。なお、空きスロットがあり、32GB x 2の最大 64GBまで換装することができます。
▼統合型GPUは、AMD Radeon Vega。ゲーム向きではありませんので、後の段落のベンチマークでは、ゲーム関連のベンチは、軽いドラクエベンチマークでの計測にとどめています。
▲「ディスクドライブ」にSATAとあるとおり、標準装備のSSDは PCIe SSDではなく、SATA SSD。ただし、PCIe 3.0とSATAの双方に対応した空きスロットを備えており、起動ドライブをPCIe 3.0に換装、あるいは増設することができます。なお、起動ドライブの換装に際し、以下のフリーソフトでのOS クローンが可能です。
Macrium Reflect Free Trials、無料トライアル版でのWindows OSクローンの手順。難なくOS クローン完了
▼DDR4 SO-DIMMの KINSOTIN 16GB3200MHZとあるものの、型番までは確認できず。なお、「KINGSTONE」ではなく「KINSOTIN」です。後の段落で記載のメモリの現物を確認するまで、大手ブランドの「KINGSTONE」と勘違いしていました。
▼SSDは 2280サイズのM.2 SATA SSDですが、こちらも型番までは確認できず。
Windows 11、ライセンスのチェック
Windows 11のライセンスについて、Amazonのユーザーレビューでは ボリュームライセンスとの情報もありましたが、コマンドプロンプトにて確認したところ、2つめの画像のとおり「OEM ライセンス」であり安心。
▼コマンドプロンプトにて「slmgr/dli」を入力し、ライセンスの種類を確認。2つめの画像のとおり、OEM ライセンスです。
外観のチェック
外観と付属品について記載します。樹脂製の筐体となりますが、Alder Lake N100 / Twin Lake N150などのエントリークラスのミニPCのような安っぽさはなく、重厚感のある しっかりとした筐体です。この「重厚感のある」要因として、後の段落に記載していますが、内部に冷却も兼ねた、上質なスチール板が組み込まれています。
▼外箱はブランドのロゴはなく、汎用的なもの。
▲▼緩衝材の段ボールで保護されています。過剰な梱包ではなく、シンプルな構成です。
▼他の多くのミニPCと同様に、傷つき防止のためにビニールで包装されています。
▲▼天板とイーサネットポートには、「Windows 11のセットアップ時には、セットアップが早く完了するよう、WiFi あるいはLANに接続しないように」との注意を促すシールがあります。別の意味もありそうですが、深追いはやめておきます。
▼こちらがLAN ポートの注意書きのシールです。
▼シールを剥がし、一週間ほど使用後の撮影です。天板の形状(ごく僅かな凹凸あり)から 埃は付着しやすいように感じます。
▼天板のロゴは主張せずに好感のもてるもの。
▼前面は左から、電源ボタン(電源オンで白のLEDが点灯します)、3.5mm ヘッドホンジャック、USB-A 3.2 x 2、映像出力に対応する フル機能のUSB Type-C
▼背面は左から、USB-A 3.2 x 4、RJ45 イーサネット、DisplayPort、HDMI、DC ポート
▼左右の両サイドは同じ構成ですが、上の通風孔から高さのあるヒートシンクを確認できます。内部の熱は、こちらの通風孔から排出されます。
▼背面の中央に円形の通風孔があります。背面側にファンがあるものと思いきや ファンはなく、スチールの冷却版の熱を逃がす仕様です。
▲四隅のゴム足を外すとネジが露出します。内部にアクセスする際には、4つのネジを外します。
▼サイズ感がわかるよう、マウスを並べて撮影しました。サイズは12.8 x 12.8 x 4.13cmと、ミニPCとしては一般的なサイズです。
▼付属品は左から、VESA ブラケット、簡易的なユーザーマニュアル、HDMI ケーブル、やや大きめの電源アダプター。
内部の構成、メモリとSSDの増設
内部にアクセスし、メモリを1スロットの16GBから 2スロットの32GBに増設、SSDの空きポートにPCIe 3.0 x 4 SSDを増設しましたので、そのプロセスをレポートします。
内部の構成としては、冷却用のスチール板も含めて、このクラスとしては しっかりとした丁寧な作りであり 好印象です。
▲▼底板の四隅にあるゴム足を外すと、以下の写真のようにネジが露出しますので、これらを外します。なお、ネジはやや硬く装着されています。
▼内部には上質なスチール版が備わっていますが、ネジを外すとオープンにでき、内部にアクセスできます。
▼スチール版を外しました。スチール版は厚みがあり、塗装も含めて上質なもの。2280サイズのM.2 SSD / メモリにあわせたデザインとなっており、冷却版も兼ねています。実際に、底板を外した状態で電源オン、スチール版を触ってみると熱を帯びていますので、程よく冷却できているようです。
▼左にメモリの空きスロット、中央にPCIe SSDの空きスロットがあります。基板上に「PCIE + SATA」とあり、PCIe SSDとSATA SSDの両用です。
▼メモリスロット周りを拡大。標準装備のメモリのブランドは、前述のとおり「KINGSTON」ではなく「KINSOTIN」です。
▼SSD スロット周りを拡大。SSDの裏側に CMOS 電池があります。
▼ちなみに、WiFi / Bluetooth モジュールは、標準装備のSATA SSDの裏にあります。
▼ポン付けのために工程の写真は割愛しましたが、16GBのDDR4 メモリと PCIe 3.0 SSDの増設後。
▼当然ながらも メモリは増設後の32GBと認識しています。
▼増設したSSDは macOSをインストールしたものであり、ベンチマークを計測できませんが、「ディスクの管理」にて認識されています。
▼こちらは増設したメモリとは異なりますが、適合するメモリの販売事例です。
ベンチマークスコア
ADM Ryzen 7 5700Uを搭載する本製品にて計測のベンチマークスコアを記載します。本製品の主なターゲットは、Alder Lake N100のミニPCよりも ワンランク上の製品を求める方との想定から、比較対象は 以下のN100を搭載するミニPCです。
GEEKOM AIR12 Lite 実機レビュー、Alder Lake N100 搭載のミニPC、スチール製フレームなどの作りの良さは上位機並み
また、本製品のメモリを16GBから32GBに増設しましたが、増設前後のベンチマークスコアも比較しています。シングルチャンネルからデュアルチャンネルとなったことにより、マルチコアのスコアがアップしています。
全般的なところでは、Alder Lake N100と比較して、CPU シングルコアのスコアは 2~3割増し、マルチコアのスコアは2倍強です。
Geekbench 5
Geekbench 5のスコアは「シングルコア 1,104、マルチコア 5,370」。2つめの画像のスコアは、メモリ増設後(16GBから32GB)ですが、前述のとおり、シングルチャンネルからデュアルチャンネルとなったことにより、マルチコアのスコアがアップしています。
▼こちらは 前述のAlder Lake N100を搭載するミニPC(実機レビュー記事はこちら)のスコアです。Ryzen 7 5700Uのスコアは、シングルコアは約17%増し、マルチコアは約2倍のスコアです。
▼こちらの記事にて、これまで実機レビューした主だったPCで計測の Geekbench 5のスコアを一覧化しています。Ryzen 7 5700Uのシングルコアスコアが近いところでは、Core i3-1005G1、Zen 3 アーキテクチャのRyzen 5 5600U、Core i5-9500Fなどです。
PC 実機で計測、Geekbench CPU ベンチマークスコアの一覧、サクサクと動作するスコアの指標
Geekbench 6
Geekbench 6のスコアは「シングルコア 1557、マルチコア 5183」。Geekbench 5と同様に、2つめの画像のメモリ 32GBでは マルチコアのスコアがアップしています。
CINEBENCH R23
CINEBENCH R23のスコアは「シングルコア 1205、マルチコア 8117」。2つめの画像のメモリ増設後も同水準のスコアです。以前に別のPCで確認済ですが、メモリのシングルチャンネル / デュアルチャンネルの相違は、CINEBENCH R23のスコアには影響を与えません。
▼こちらは Alder Lake N100 ミニPCでのスコアですが、Ryzen 7 5700Uのシングルコアのスコアは 約33%増し、マルチコアのスコアは 約274%増しです。
▼こちらの記事にて、これまで実機レビューした 主だったPCで計測の CINEBENCH R23のスコアを一覧化しています。Ryzen 7 5700Uのマルチコアスコアが近いところでは、Core i5-1340Pです。
CINEBENCH R23、ミニPCやノートPC 35製品で計測のスコア一覧。キビキビ動作のスコアの指標
PCMARK 10
PCMARK 10の総合スコアは 4,348。オフィスソフトでの快適さの指標は、Productivityのスコア 4500ですが、本製品のスコアは 7290と大きく上回っています。
ドラクエベンチマーク
ゲーム関連のベンチマークのうち、統合型グラフィックスでの「3DMARK」の計測は負荷がかかるため(計測しましたが、カクカクした動きです)、軽めの「ドラクエベンチマーク」での計測(メモリ増設後)です。
結果としては「とても快適、スコア 8512」。2つめのAlder Lake N100とは大きな差があります。
CrystalDiskMark
CrystalDiskMarkで計測の、SATA SSD 512GBの読み書き速度です。Read 552 MB/s、Write 462MB/sと、SATAとしては一般的な速度。
このクラスのミニPCではSATA SSDを搭載する製品は多くないのですが、普段使いでは、読み書き 3000 MB/s 前後のPCIe 3.0 SSDと比較し、体感できるほどのレスポンスの相違を感じません。
体感レスポンス
私は Windows PCとして、最近は以下の16コア 32スレッドのAMD Ryzen 7945HXを搭載するPCを使用しており、当該PC および Alder Lake N100 ミニPCとの感覚的な相違を記載します。
MINISFORUM BD795i SE 実機レビュー、16コア32スレッド Ryzen 9 7945HXを内蔵のマザーボード。CINEBENCH R23 マルチコアは驚愕の約33,000
- この1週間ほど、本製品をメインに使用しましたが、ブログ記事の編集、画像編集、Web サイトのブラウジングなどのライトユースでは、上記のRyzen 9 7945HXのPC あるいはMacでメイン利用のM4 Mac miniと、大きなレスポンスの相違はありません。稀に「キビキビ感に欠けるかも」と感じる程度です。
- 全般的に、上記用途では キビキビと動作し、必要にして十分です。
- また、CPUのファン音もほとんど聞こえず、作業に集中することができます。
- Alder Lake N100 / N97 / N95のPCとの比較では、本製品では多少の余裕があるかも、と感じる程度。上記用途では ほぼ同じレスポンスです。
- SATA SSDを搭載していますが、普段使いでは PCIe 4.0 SSD(読み書き 3,000MB/s前後)との相違を感じません。
USB Type-C ポートのチェック
モニターへの映像出力のみですが、フル機能のUSB Type-Cの機能を確認しました。上の写真・以下の画像のとおり、安定して 4K モニターに映像出力できています。
CPU 温度、ファン音量のチェック
ベンチマークで負荷をかけ、CPU 使用率を100%とした際のCPU 温度、ファン音量ともに良好です。なお、記事の編集、Webサイトのブラウジングなどの普段使い時には、ほぼ無音の静音性を保持しています。
▼CINEBENCH R23のマルチコア ベンチマーク測定時のCPU 温度です。最大 81℃と私にとっては許容範囲です。
▼同じくCINEBENCH R23のマルチコア ベンチマーク測定時の、iPhone アプリ「デジベル X」で計測のファン音量です。平均 36dBとそれほど喧しくはなく、これまで多くのミニPC・ノートPCを実機レビューしてきたなかで、静音性は上位です。
まとめ
旧世代(Zen 2 アーキテクチャ)のAMD Ryzen 7 5700Uを搭載するミニPC「NiPoGi E3B」の実機レビュー記事でした。
2025年4月27日現在のAmazon 価格は、2種類のクーポン利用により 36,448円、2,200ポイントの還元も含めると 実質 34,248円での販売です。主に、Alder Lake N100 / N97 / N95、Twin Lake N150のミニPCでは不安を感じる方向けとなるかと思いますが、この意味では以下のメリットがあり、おすすめできる製品です。
また、「関連記事」に同CPUを搭載する他のミニPCの実機レビュー記事を掲載していますが、内部の作り・静音性ともに 本製品が優れています。
- AMD Ryzen 7 5700UのCPU ベンチマークスコアは、N100比較にて シングルコアのスコアは2~3割増し、マルチコアのスコアは 2倍強。
- ライトユースでの体感レスポンスは、上位機とそん色なく サクサクと動作します。
- 樹脂製の筐体ですが、内部のスチール製冷却板も含めて しっかりとしています。N100 ミニPCの筐体のような 安っぽさはありません。
- フル機能のUSB Type-C ポートを装備し、映像出力も可能です。なお、前面に装備していますが、モニター接続の取り回しを考慮すると、背面への装備がよりよいのでは、とも思えます(逆の見解もあるかと思います)。
- CPU ファンの音量は、普段使い時にはほぼ無音、負荷をかけた際にも許容範囲の音量です。
- マイナスポイントらしき事項は(個々人で判断は異なると思います)、標準装備のSSDがPCIeではなく SATAであること、メモリは8GB x 2のデュアルチャンネルではなく 16GB x 1のシングルチャンネルであること。ただし、PCIe SSD / メモリともに空きスロットを備えています。
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